第17話 部屋まで
周りを見ると、他のほとんどの模擬戦がまだ終わっていないことに気が付いた。
水の球や植物魔法、他にも色々な魔法を使って戦っている。
どれも相手を傷つけないように注意を払っているようだが、いい勝負をしている。
確かメルキオールさんは、同じくらいの力の持ち主同士で戦わせていると言っていた。
僕たちの戦いが早く終わりすぎただけで、普通はこのくらいかかるのかもな。
遠くで戦っている人たちの戦いは見えないが、近くで戦っている人たちの戦いはよく見える。せっかくの特別授業だ。よく見て学んでおこう。
魔法のあんな使い方があるんだとか、こうやって使うといいんじゃないかな、とか考えていると、ふとキーラのことを思いだした。
キーラはどうなったんだろう。
近くにはいないようだけど、勝っていればいいな。
心の中でキーラのことを応援した。
再度周りを見渡すと、魔力切れの者が多く出ていて、続々と戦いが終わっていた。
僕の周りの戦闘は終わった。
先生から歩き回らないように言われたので、周りで行われていた模擬戦についてデリックと話していると、鐘の音が耳に直接鳴り響く。
全員終わったことを確認したんだろう。
魔力障壁はいつの間にか消え、僕たちの体がまた宙に浮き始めた。
僕たちはそのまま飛んで最初の場所に立たされた。
前には、疲れ切った様子でキーラが手を膝について立っている。
僕がキーラにどうしたのかと聞こうとしているときに、メルキオールさんの声が被った。
「全員の戦いが無事に終わった。
この特別授業では、主に君たちの状況把握能力と戦闘能力を計っていたのじゃ。
今回集計した記録で、5日後にまた開かれる特別授業の内容が変わる。
授業内容については3日後に伝令しようと思う。
みな学んだことが沢山あることだろう。これからも今日学んだことを生かし、一層魔法の向上に努めるように。
以上」
メルキオールさんが、杖を2度地面に打ち付け、姿を消した。
場に漂う解散ムードに、みんな各々に話始めた。
僕はすぐにキーラに問いかける。
「キーラ大丈夫?」
キーラは顔をこっちに向けた。
「……大丈夫。ちょっと疲れただけ……」キーラは、見たことのない悔しそうな表情をして、言葉をつづけた。「負けちゃったよー」
「え!?相手は誰?」
「学年主席のディルク。
最初はいい勝負をしてたと思ってたんだけど、全然本気を出してなかったみたい。
最後に私の魔力が少なくなってきたところでドーン!何がなんだか分からないまま終わっちゃった。
あの人化け物だよ。魔力がすっごい多いの。私の10倍はあるんじゃないかな」
僕は驚きで体を震わせた。
「じゅ、10倍!?
キーラの10倍って本当に化け物だね。
どんな訓練をしてきたんだろう……」
「いや、あれは訓練もあるけど、才能だよ。
魔法の種類も多くて、私の得意な風魔法がすぐにかき消されるんだよ。
私たちには届かない世界ってあんな感じなんだろうね」
僕はキーラにそこまで言わせるディルクの強さを全く予想できなかった。
「みんな戻っているようだし、私たちも戻ろっか。
フィンこの後授業入ってるんじゃなかったけ?」
キーラが首に手をあてながら、聞いてきた。
「あ、そうだ!
行かなきゃ!」
「そんな焦らなくても大丈夫だよ」キーラが軽く笑いながら言う。
「確かに時間はあるけど……」
「気になるなら急ごうか」
キーラが歩き始めたので、僕も後について行った。
キーラとは寮に続く階段の前で別れた。
僕は授業の準備をして、授業が行われる場所に向かった。
授業が終わり、部屋に戻る途中、渡り廊下でジーンのとぼとぼと歩く後ろ姿を見つけた。
僕は駆け足でジーンに追いつき、肩をたたいた。
ジーンは背中をビクッと震わせ、ゆっくりと首をまわしてこっちを見た。僕の顔をみるなり、こわばっていた顔がひどくホッとしたようになった。
「ジーン、どうかした?」僕は一瞬怯えた表情を見せたジーンに、優しい声で問いかけた。
「え……―――」ジーンは期待するかのような目を少し見せたが、すぐに言葉をつづけた。「―――ど、どうもしてないよ」
「なら、いいんだけど……。
なんか最近ジーン、落ち込んでるように見えるよ。いや、落ち込んでいるというか、悲しんでるというか、苦しんでる……というか。まぁ、そんなかんじ。
なんかあるなら相談してね。
言葉にしたほうがすっきりすると思うから」
ジーンは初めて会ったときも怯えていたが、今の怯えはその時の怯えとは違う気がした。
僕が転生する前に、高校の同じクラスのいじめを受けている子が、いじめをしているグループに話しかけられた時の表情。いうならばそんな顔だった。
「うん……」ジーンはより一層下を向いた。
僕は話題を変えようと、特別授業の話をすることにした。
「そういえば、模擬戦どうだった?勝てた?」歩きはじめ言った。
ジーンは僕の後を追うように歩き始め答えた。
「勝てなかったよ。
でも、なにかつかめたかも。
自分のいいところが分かった気がした」
「おー、よかったじゃん。
急に始まった戦いだったけど、得るものは沢山あったよね。
僕も決意が強くなった気がするよ」
ジーンは顔をあげた。
「フィンの目的って何なの?
あ、目的っていうか夢……とか。
一緒の部屋にいて思ったんだけど、フィンは一つの目的に向かって頑張っているように見えるんだ」
僕たちは男子寮塔に続くドアの前についた。僕はそこで足を止めた。
僕がそのままドアを開け、男子寮塔に入っていくと思っていたジーンは、どうしたのかと僕を見ながら立ち止まる。
「…………殺さなきゃいけないんだ」僕は消え入りそうな、ジーンには聞こえていないであろう声でボソッとこぼした。
「え?」僕の言ったことが聞こえなかったジーンは、なに?と首をかしげた。
「い、いや、なんでもないよ。
そんな、僕一つの目標に向かって頑張って見えるかな?
それならよかったよ」
ジーンは眉をひそめたが、僕はごまかすことにした。
同じ部屋で過ごしているわけだし、僕があるものを殺すためだけに魔法を学んでいるとジーンがしったら、今以上に怯えさせてしまうかもしれない。
「……うん。
頑張っているように見えるよ。
夜はいつもその日に受けた授業の復習をしているし、授業は沢山受けてるし。
すごいよ」
「そうかな?」
「うん。
3か月見てて思ったよ。
僕にはあんなに頑張れないなーって。
僕は一応上級貴族の生まれだけど、家じゃ厄介者で追い出されるようにこの学園に入らされたんだ。
だから、僕はあんなに頑張れない……。
でも、フィンを見てるとなんだかやる気と元気が少しだけ湧いてくるんだ。
僕ももっと頑張らなきゃなって」
目を見て恥ずかしいことを平気で言ってくるジーンに、僕は顔をそむけてしまった。
ものすごいうれしいけど、それと同時に申し訳なさと、恥ずかしさを感じる。
僕は両開きのドアを、素早く開けて中に入った。
ジーンもそれに急いでついてくる。
僕は振り返って言った。
「僕はそんなにすごい人じゃないよ。
ただ、目的がはっきりしてるだけ。
ジーンにも何か夢ができたら、僕みたいなこと簡単にできるよ」
「そうかな……?」
「そうだよ」
僕とジーンはそれ以上は話さず、部屋へ歩いた。
暗い話になってしまった。
書き溜めとかしてないので、結構投稿日はバラバラですが、ゆっくりと暖かく付き合ってください。
よろしくお願いします。




