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  作者: しんぎつ なない
学園編
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17/22

第16話 模擬戦

  ;;;;;;;



 「フィン、今日はいよいよ特別授業だねー」


 「うん、授業内容も一切公開されてないし、5日前から気になってたよ。

 寮に入ってから、3か月経って、初めて特別授業だし」


 「ねー。

 3か月って短いようで、長いからね」

 

 「うん、有意義な3か月だった」


 寮に入った日から、3か月たった。

 3か月、特別なことはなく、授業を受ける日々。

 魔力の操作や呪文を学んだりした。

 魔法を自由に使える場所で、試しもした。詠唱をして、杖を使う初めての魔法。試験で使った魔法を、威力は少し落としたが、何度も使えた。

 この3か月で唯一の心配事といえば、ジーンの様子が最近変なことだけだ。最初は変わった様子もなく授業を受けていたが、日に日に元気がなくなっていくジーンに、悩みはないかと聞いてみた。しかし答えたくないというので、それ以上は突っ込まないことにした。人には言いたくないことの1つや2つある。

 

 僕が3か月の思い出に浸っている間に、キーラは授業の会場にすたすたと歩いていく。

 キーラはついてこない僕に気づいたのか、後ろを向いて手招きをしてくる。

 

 「ごめん、いくいく」


 僕はキーラのところに、駆け足でいく。

 

 「いつもみたいに遅れちゃうよー」


 「ごめんって」


 「フィンが勉強頑張ってるのはわかるんだけどさ、もっと夜早く寝なよ。

 フィンと授業が同じの時、いっつもうとうとしてるし」


 「何度も聞いた」

 

 「何度言っても勉強ばっか。

 体も鍛えてるようだし、そろそろ倒れるよ」


 「それも何度も聞いたよ」


 「ふぅ、まぁ、いいか。

 ここで話してたら、遅刻しちゃうしね」


 キーラがまたすたすたと歩いていく。 

 僕はキーラに歩幅を合わせ、それについていった。。

 もうすっかり見慣れた、明るい学園内を、どんどん進く。

 最初は学園の豪華さにいちいち驚いていた僕だったが、バリエーションのない装飾に、最近は飽きを感じている。

 しばらく歩いていると、外が見えてきた。

 初めての特別授業は、外で行われるらしい。

 建物から外に出て、そのまままっすぐ歩いていく。

 広大な草木一つは得ていない土地に、同学年の生徒がたくさん並んでいる。

 前にはもう先生たちが立っていた。 

 

 「ギリギリだったね」キーラが、同意を求めるように言う。


 「そうだね、危なかった」


 「並ぼっか」


 僕とキーラは、列の一番後ろに並ぶ。

 ジーンが、僕より前に部屋を出ていたので、前のほうをちょこちょこと跳ねながら探した。

 ジーンを見つけたところで、特にすることもないのだが、どこにいるかだけが無意味に知りたくなった。


 「フィン、何してるの?

 メルキオール様が壇上に立ったよ」


 メルキオールというのは、学校について最初に説明してくれた人だ。

 この王国の、第一級魔導士をしながら、この学園の創設者としても活躍をしている。

 一言でいえば、すごい人。超有名人だ。

 この国の災厄の魔物を封印したとかいう実績を持っている。

 そんなにすごい人がこの学園の創設者だと聞いた時、結構驚いた。

 

 メルキオールが、壇上に立つと、さっきまで騒がしかったのが嘘のように静かになった。

 そして、その大きな杖を地面に軽く打ち付けると、ゆっくりと厳かに話し始めた。

 

 「ごほんっ、今日は君らにとって初めての特別授業となる。

 授業内容は、1対1の摸擬戦じゃ。

 相手に大けがを負わせない程度の魔法で戦ってもらう。

 もちろん剣は禁止じゃ。

 だが、ちと戦闘に向かない魔法に特化した者もおるようじゃし、戦う相手はこちらで勝手に決めさせてもらった。

 周りを見てみろ」


 列の周りに、青い魔力の大きい壁、半円の障壁のようなものが何個もできた。

 

 「この魔力障壁の中で戦ってもらう。

 この魔力障壁は、学園の守りにも使われている高密度の魔力の壁じゃ。

 この中で使った魔法が外に出ることはない。

 では―――」


 メルキオールが杖を地面に打ち付ける。


 「―――早速戦ってもらう」


 僕の周りで「おお」と驚きの声が上がる。

 僕たちの体が宙に浮き始めたのだ。

 3メートル上昇したところで、生徒はバラバラに飛ばされた。

 僕は右後ろのほうの魔力障壁まで飛ばされた。

 僕と同じ方向に飛ばされている人が、もう一人いる。

 多分その人が僕の戦う相手だろう。

 授業や廊下でたまに見たことがある顔だ。

 全く話したことがないので、性格も戦いのスタイルも分からない。

 魔力障壁の前に来ると、静かに着地した。

 一つ一つの魔力障壁に一人ずつ先生が立っているらしく、僕ともう一人が飛ばされた魔力障壁の前にも、先生がいた。

 ローブをきた先生が近づいてきた。


 「えー、フィン君とデリック君で間違いないね?」


 先生の質問に対し、僕ともう一人はうなずいた。

 

 「メルキオール様が言っていたように、相手を大怪我させてしまったりする魔法は禁止で戦ってもらいます。危ないと思ったらすぐに止めるので、その時は少し手荒になってしまうかもしれないけど、許してください。では、さっそくこの中に入って。みんなが入ったら始まるので」


 「わかりました」


 僕ともう一人は魔力障壁の中に入った。

 魔力障壁と触れるときに、粘着質の液体に触っているかのような感じがした。  

 

 それにしても、お決まりの早い展開だな。

 作戦とかほとんど考えてないぞ。

 もしかしたらこの授業は、急な戦いに対しての授業なのかもな。

 3か月たつが、まだまだ分からないことばっかりだ。


 みんなが魔力障壁の中に入ったのを確認したのか、拡声魔法によって大きくなったメルキオールの声が、土地いっぱいに聞こえた。

 

 「模擬戦を開始しようと思う。

 もう一度言うが、相手に重症を負わせる危険のある魔法は使用禁止じゃ。

 使う気配が少しでもしたら、力ずくにでも止めるように先生たちには言ってある。

 この戦いは君たちの将来にも関わってくるものなので、しっかりと望むように。

 では、鐘の音とともに開始じゃ」


 僕はそれを聞いて、杖を宙から出す。

 僕が杖を出すのを見て、向かい合っている相手は少し驚いた表情を見せた。

 相手の実力は未知数。 

 僕の魔力では、相手の魔力量を計ることはできない。

 でも、メルキオールさんから感じるような圧倒的力の圧力を感じることもない。

 まぁ、分かっていたことだが、メルキオールさんほどの魔力はないようだ。

 この相手にどうやって戦うか……。


 僕は頭をフル回転し、必死に作戦を考えた。

 ここで負けているようでは、あの村を襲った怪物にはいつまでたっても勝てない。そう思えた。

 

 シーンと静まり返った会場の中、直接耳に聞こえたかのように、鐘の音が聞こえた。

 僕は右に全力で走った。その瞬間、すぐ左に電光が走る。

 魔法使いは、接近戦を好まない。だから、1対1の戦いでは、離れたところからの素早い攻撃が求められる。それを見越して、僕は右に避けたのだ。

 普通だったら、詠唱のない攻撃は弱いことが多いので、避けずに魔法で対抗するか、魔法耐性の強い者は体で受け止める。

 だが、僕は魔力が圧倒的に少ないので避ける必要があった、ほかにも理由はあるが。

 僕は相手のところへ、魔法の詠唱をして、全速力で近づく。

 相手はそれを見て一瞬たじろいだが、すぐにさっきと同じ魔法を使ってきた。だが、それも予想通り。

 僕はその魔法を避けずにそのまま走った。攻撃を受けても少し痛みがあるだけだ。


 「なにっ!?」相手が叫ぶ。

 

 「フリック・インパクト」


 僕は相手のほうへ走りながら、さっき唱えた魔法とは違う魔法の詠唱をする。

 相手との距離1メートルと少し。

 僕は杖を相手に向けた。

 相手に杖がぶつかる直前、相手が後方に吹き飛んだ。そしてそのまま地面にたたきつけられる。

 大怪我は負わないはずだ。あって擦り傷程度。そのくらいの威力に調節した。

 

 「やめっ!」魔力障壁の外にいる先生から声がかかる。「この勝負、フィン君の勝ちです」


 相手がゆっくりと立ち上がり、こっちを見て、なにか納得したかのような顔を見せた。

 相手が近づいきて、僕に言った。


 「俺の負けだ。正直侮っていた。

 君からは魔力を感じない。だから油断していた。

 フィン、だったよな?」


 「うん」


 「フィン、一つ聞いていいか?

 俺の魔法を真正面からくらったのに、なぜ倒れなかった」


 「あぁ、あれはただのレジストだよ」


 「いや、だが……、君に潜在的な能力でのレジストは、無理だろ。

 だとしたら、魔法、”ライトニング・レジスト”を使うしかない。だが、君の魔力量では、レジストは一度使うのがギリギリだろう。どうして使おうと思った」


 「デリック君だよね」僕は聞いた。


 「あぁ、デリックでいい」


 「じゃあ、デリック。デリックは最初もあの、電気系麻痺魔法を使ってきたよね。

 だから次も、君が無詠唱で魔法をとっさに使うとしたら、それを使うと思ったんだ。

 デリックが思っているように、僕の魔力はすごい少ない。だから、自信をもって電気に対するレジストを使う必要があった。だから、最初の攻撃は全力で避けて、使う魔法を確認したんだ。

 あとは、残りの魔力で、君に魔法を当てるだけ。

 魔法の効果範囲を杖の周りにとどめることで、魔力の消費を抑え、攻撃をした。

 これが、僕のしたことだよ」


 僕、絶対今得意げな顔してるな。


 「……すごいな。そこまで考えていたのか。

 剣が使えないからって、接近戦ができないわけじゃないもんな。

 ……勉強になったよ。

 これからは、会ったとき、話しかけることにするよ」


 「うん、僕は友達が少ないからね。

 仲良くくしてくれ」


 「あぁ」


 僕はデリックと握手を交わした。

 


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