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  作者: しんぎつ なない
学園編
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16/22

第15話 パスタ

 「僕はフィン。君は?」


 「あ、ぼ、僕はジーン。ジーン・レオポンド」


 「よろしく、ジーン」


 「うん。あ、あの、フィンは早く準備したほうがいいんじゃないかな?

 講堂にはやくいかなきゃいけないし……」


 「あ、そうだよね」


 僕は自分の持っている袋をベッドの上に置いた。

 そして、服をベッドの横にあるタンスの中にしまいながら、ぼーっと考えた。

 

 ジーン……か。

 話し方が結構たどたどしかったな。

 会話も続かないし、この先一緒にやっていけるか心配だ。

 

 ジーンのほうを見ると、ローブを丁度着ているところだった。

 あっちをみたりこっちを見たり、落ち着かない。

 僕は自分の作業に戻った。

 服をしまい終え、ジーンのほうを見ると、まだあたふたやっている。


 「どうしたの?」


 僕は、心配になり声をかける。

 

 「い、いや、なんでもないよ」


 そうは答えるが、ベッドの下を見たり、布団をめくったりしている。


 「なにか探してるの?」僕はジーンの横まで行って、言った。


 「あ、う、うん。

 しまおうと思って、服を出すときに魔法石を落としちゃって」


 僕はドアの前に落ちている、光を反射して、キラキラと光っている石を指した。

 

 「あれじゃない?」


 「え?あ、ほんとだ」


 ジーンはすぐに取りにいった。

 

 「ありがとう。

 僕ダメだなー……」


 「い、いや、ダメってわけじゃないよ。

 てか、そろそろ講堂に行ったほうがいいよね?」

 

 「そうだ!講堂に行かなきゃ!」


 ジーンはベッドの上に広げていた物を、ぐしゃぐしゃのままタンスの中に突っ込んだ。

 

 「これで大丈夫。

 いこう」


 「あ……うん」


 僕たちは急いで部屋から出た。

 数歩歩いたところで、

 

 「白金貨忘れてない?」


 僕は確認するように聞いた。

 

 「あ、忘れてたー!」


 ジーンは閉めたドアをまた開けて、タンスの中をさらにぐしゃぐしゃにしながらも白金貨を探し、部屋から急いで出てきた。

 僕はジーンを落ち着かせるように、

 

 「じゃあ、いこっか」


 と言った。

 

 僕たちは歩き始め、階段を降りたところで、「講堂はこっちです」と、階段を降りたところで伝えられた。

 伝えられた通りの道を歩き、講堂についた。

 講堂は、学園について説明されたところとは違うところで、黒い木でできている。

 中にはもう、ほとんどの人がいて、遅れて入ってきた僕たちの足音に、みんながこっちを見てきた。

 ジーンと身を少しかがめながら、小走りで空いている席まで移動した。

 僕たちが座ると、またみんなは前を向いた。

 一人だけ僕に向かって手を振っている女性がいるが、こんなところで手を振り返すのもためらわれたので、軽く手を頭のあたりまで上げる程度で返した。

 少し待っていると、まだ来ていなかった人が全員集まったらしく、講堂のドアが音をたてながら閉まった。

 講堂のドアが閉まりきったところで、前の演台に、ローブを着たおじさんが立った。

 

 「ごほんっ。

 えー、私はこの年の生徒の主任である、ジェイコフだ。

 今から剣術魔道学園、魔法コースの授業の説明をする。

 学園内の生活についての説明は、長くなるので紙にまとめさせてもらった。

 部屋に戻ったら各部屋1枚ずつ、その紙が置いてあるので、よく確認しておくように。

 では、授業についての説明をする。

 魔法コースでは、受けたい授業を好きなだけ受けられる。

 寮の前の階段を下がったところに、ボードがある。

 そこには、5日先までの授業の時間と内容、場所が貼ってあるので、それを確認して、受けたい授業を受けなさい。受けたい授業が重なってる場合は、担当の先生に聞くように。

 特別授業が入っている日がある。その授業は全員参加となる。

 もし分からないことがあったら、職員室まできて、聞きなさい。職員室の場所は部屋に配られた紙に書いてある。校内の地図は2枚あるので、各自大切に保管しておくように。

 明日から授業が始まるので、1階のボードで確認しておくように。。

 では、解散とする。

 今日は校内を自由に見回るといい。食事はこの講堂の横の、大広間でくばられているからな。

 おっと、言い忘れてた。白金貨は、講堂の出口に立っている先生に名前を言いながらわたしなさい。

 こんどこそ、解散!」


 講堂のドアが開き、ドアに近い人から順に出て行った。

 

 分からないことだらけだけど、過ごしていくうちに慣れるかな。

 部屋に帰ったら、よく確認しておこう。

 

 「ジーン、いこう」


 「あ、う、うん」

 

 講堂の出口で、自分の名前を言いながら、先生の持っている袋に白金貨をいれた。

 

 前にキーラが歩いてるのを見つけた。

 キーラは同じ部屋の子とすでに仲良くやってるらしく、離れていても聞こえるほどの笑い声をあげている。

 寮の階段の下まで来ると、人がボードの前に沢山集まっている。

 こんなところで待っていてもしょうがないので、僕とジーンは後でまた見に来ることにした。

 部屋に戻ると、ジーンはタンスの中を片付け始めた。

 タンスの中身を一回全部出して、服をたたみなおしている。

 持っている服は豪華なものばかりで、ローブにも上品さがある。

 たまに冒険者の魔法使いを見かけるが、その装備とは大違いだ。

 人の片づけを見ているのも退屈で、僕は部屋の奥、中央にある机の上に置いてあった、紙束を手に取った。

 

 これが、この学校の説明だな。

 結構分厚いな。

 えーっと、あ、目次がある。注意事項のページが多そうだ。

 

 紙をパラパラとめくっていると、紙の間から2枚紙が落ちた。

 それを拾い、確認してみると、それはこの学園の地図だった。

 

 「ジーン、僕ちょっとこの学校見て回ってくるよ。

 あ、ジーンの地図はタンスの上置いとくね」


 ジーンは一度作業を止め、「わかった」と返した。

 

 僕は地図を一枚持ち、部屋からでた。

 地図を見て、どこを目指そうかと悩みながら、渡り廊下を渡った。

 階段についても、地図はよみきれなかった。この学園本当に広いなぁと嫌でも思わされる。

 地図を隅々まで見ることはあきらめ、寮の周りだけを見ることにした。

 近いところで何か面白そうなところないかなぁ―――なんて考えていると、


 「フィン!」

 

 と急に後ろから声をかけられた。

 

 僕は少し驚きながらも、声でその正体がわかっていたので、「驚かせないでよ、キーラ」と、淡々と言いながら後ろを振り返った。


 「えへへ、ごめんねー。

 それはそうと、フィンどっか行くの?」

 キーラは首をかしげながら言う。

 

 「うん、どこかに行こうとしてる。

 どこに行くかは決まってないけどね。学園の中見とこうと思って」


 「おー、私もだよー。

 じゃあ、私が案内してあげよう」


 キーラが自信満々に言うので、僕は疑問に思って、


 「わかるの?」


 と思ったことをそのまま口に出した。


 「うん、部屋で地図読んだから。

 私こういうの得意なんだー」


 「地図を見ただけかー」


 「大丈夫だって、ついてきて」


 キーラは僕の不安をよそに、どんどん階段を下りていく。

 

 「フィン、はやく!」


 「わかったわかった」


 階段を下りると、ボードの前にはほとんど人はいなかった。

 僕とキーラは、ボードとそこに張られる紙に吸い付けられるように、近づいて行った。

 ボードには、簡単に、日時と場所、授業のテーマ、先生の名前が記されている。

 明日やっている授業を見てみた。

 僕が見ていく中で、受けてみたいと思った授業は、”攻撃魔法基礎”の授業と、”防御魔法基礎”の授業だ。

 戦闘関連に関する授業は積極的に受けていきたい。

 

 「キーラは、明日何受けようと思ってるの?」

 

 「えーっとね、”攻撃魔法応用”の授業と、”魔道具の歴史”の授業が気になってるなー。

 フィンは?」


 「僕は攻撃魔法と防御魔法の基礎かな。

 魔法のことは全然分からないし、基礎からしっかりやっていこうかなと思って」


 「そっか、フィン小さいころから練習とかしてないもんね。

 あ、ならさ、これ受けたらー?

 ”魔力と生命力の関係”っていう授業。魔力アップの方法がわかるかもよ」


 「えっと……3日後の授業か。

 確かに、受けてみることにするよ」


 「うん、魔力は魔法使いにとって命だし。

 あ、そうだ。案内するとか言ってたんだ。これはまた後で身にこようよ。

 明日受ける授業は決まってるんだしさ」

 

 「そうだね。

 じゃあ、案内してもらおうか」


 「まかせて!」

 

 キーラは講堂のほうへ歩き始めた。

 講堂を通りすぎ、少し歩いて止まる。


 「ここが大広間でーす」


 キーラの言った通り、そこには長机と椅子が並べられている大きな空間があった。

 やはりそこも建物と同じで、黒を基調につくられている。

 机の脚にさえ、ある種の幾何学的な模様が綺麗に彫られている。


 「地図しか見てないので、説明はできません。

 食事ができるってことくらい。

 あ、ほら。食べてる人いる!

 私たちも食べようよ、フィン!」


 「あ、うん。

 でも、頼み方はわかるの?」


 「え、うーん……。聞くしかないねー」


 「やっぱり」


 僕とキーラは、食べている人のところまで行った。

 話を聞くと、メニューは決まっているらしく、2度手をたたくとどこからともなく浮遊してくるのだとか。

 過去にとんでくる元を探そうとした人がいたそうだが、結局分からなかったらしい。

 謎の多い学園だ。

 

 僕たちは同時に2回手をたたく。

 周りをきょろきょろとみていると、いつの間にか近くをお皿がとんでいる。

 僕は驚きながらも、お皿が下りてくるのを、静かに見ながらまった。

 お皿が、机の上にコトリと着地する。

 食事から湯気が上がった。

 

 「パスタ……」


 今配られる食事はパスタらしい。

 パスタの香りを一気に吸うと、胡椒の香りが鼻いっぱいに広がる。

 僕はこれまた浮遊してきたフォークを手に取り、味を噛みしめるように、ゆっくり食べ始める。

 サッパリとした旨味たっぷりのチーズがパスタに絡めてあり、食べている者に大きな満足感と優越感を抱かせる。

 

 「すごい……。贅沢だ」


 「贅沢?」横でパスタをさっさと食べているキーラが疑問を口に出す。「確かにおいしいけど、パスタだよ?」

 

 僕はわかりやすくため息をつく。

 

 「はぁ、これだから金持ちは。

 このチーズ、大分高価なものだよ。しかもこの量のパスタ。

 庶民しか分からないもんかねー、この感覚は。

 たらふくこんなパスタを食べることが、庶民にとっては憧れでもあるんだよ」


 「へー、ってフィンも変わらないじゃん!

 この学園に入れたってことは、ある程度お金持ってるんでしょ。

 絶対普通の家庭じゃなかったって。

 言い方的に貴族ではないようだから、どこかの大商会の息子とか?」


 「いやいや、僕は農民だったよ。

 ちゃんと農具の使い方もわかるし、土の質とかも分かるよ」


 「うそだー。

 じゃあ、お金は?

 お金はどこから手に入れたの?剣の腕もいいしさ」


 「お金は……まぁ、色々とあってね。

 剣は……、剣も色々とあってね」


 「盗んだとかじゃないだろうし。

 別に教えてくれてもいいじゃーん」


 「うーん、じゃあ、盗んだ。

 剣は練習した」

 

 「くー、開き直りやがったー。

 まぁ、いいや、言えない理由があるなら。でも、いつか教えてね」


 「うん。いつか、ね。

 ほらほら、せっかくのパスタ冷めちゃうから食べよう」


 僕は場の空気を変えるため、大きな声をわざと出して、フォークを動かした。

 キーラは少しの間、こっちを見ていたが、また食事を始めた。


 おいしい食事を終え、大広間から出た。

 窓から明るい光が差し込んでくる。

 僕は一度大きく息を吸うようにしてから、キーラに話しかける。


 「キーラ、もう少し案内してもらいたかったけど、一回部屋にもどって、一緒の部屋の人に食べ物の頼み方を伝えてくるよ。

 あの人、人に聞けそうな性格してないから、心配になってきちゃった。

 また今度案内してよ」


 「えー、分かったよ。

 もう少し話したかったんだけどなー。

 じゃ、またね。私は学園中回って、知識をつけてくるよ」


 「うん、ありがとう。

 じゃ、また」


 僕は軽く手をふって、キーラに背を向けた。

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