第14話 寮
学園についた。
説明では魔法コースの建物があるほうの門から入ってこいと言っていたが、試験の時に話を聞いていない僕には、どこから入ればいいのかさっぱりわからなかった。
お金をたくさん持ってそうな人を見つけては、ついていき、3人目でやっとそれらしき門につくことができた。
それらしき門というのは、魔女が住んでいる館にありそうな、怪しい雰囲気の門だ。
いつも通っていた門とは全く違う造りに、この学園の広さを改めて感じさせられた。
門の中は、森のようになっていて、建物は小さく少しだけ見えるだけだ。
森の中をまっすぐに道が通っている。
門には受付がいなかったので、入っていいのか疑問に思いながらも、遅刻しそうなのも明らかなので、敷地内に足を踏み入れた。
道に沿って歩いていると、さっきまでは少ししか見えてなかった建物の全貌が露わになってきた。
黒い木でできた木造の建物で、試験会場と同じように、驚くほど大きい。
建物の目の前まで来ると、説明会場で見た人がたくさん集まっていた。
説明会場にいた時とは違って、ローブを着ている人が多い。というか、目に付く限りの人がローブを着ている。やってはいけないことをした時のような、居心地の悪さを感じた。
僕が、ローブを着ていない人はいないかと必死に探していると、1人の女性が来ていないのが見つかった。
その1人に勝手に仲間意識を覚えながら、なんともなしに見ていると、視線を感じたのか、その人が、肩ほどの肩を揺らしながら、こっちを振り返った。
「フィン!!」
「キーラ!」
その人はキーラだった。
キーラは僕のもとに、手を振りながら勢いよくかけてきた。
「フィン!久しぶり!
10日ぶりくらいかな?」
「うん、そんぐらいだと思う。
あ、副主席だってね。すごいよ。主席でもおかしくなかった。
キーラでも副主席って、主席の人ってどんな人なんだろう?」
「あー、それなら……」
キーラは指を少し宙でさまよわせてから、ビシッと背の高いローブ姿の男を指した。
「あの人だよ。魔法コースらしいね。
さっきあいさつに来たんだー。副主席おめでとうだって。
嫌味だよねー」
キーラは、あの男の真似をしたのか、「副主席おめでとう」を低い声で言い、笑いながら話した。
僕はキーラにつられて笑いながら、
「確かに嫌味だな」
と返した。
「ねぇ、キーラ。
今は何を待ってるの?」
「え、あぁ、えっと、多分先生待ちかな。
まだ集合時間じゃないしね。
そういえばフィン、杖は買えたの?
腰にもつけているようには見えないし、その大きな袋の中?」
そういってキーラが指さしたのは、僕の服やタオルなどが入っている袋だ。
「いいや、違うよ。
まぁ、それは後のお楽しみということで」
「えーー、仕方ないなー。
持ってきているようだから、楽しみにまっておこう!」
「うん、楽しみにまっておいて」
「あ、フィン、誰か建物から出てきたよ。
もう集合時間かな」
建物の大きいドアが開き、出てきたのは、赤いローブをまとった40代くらいの女性だった。
手に本を持っていて、眼鏡をかけている。
「ほんとだ」
「先生かな?」
「そうじゃない?」
赤いローブを着た女性が、口を小さく動かした。
何か話しているようだったが、聞こえなかったので、近寄った。
他の人達も聞こえなかったらしく、女性の周りに沢山の人が集まった。
赤ローブの女性は、ごにょごにょと小さい声で何かを言った。
顔はしっかりと前を向いている。
全く何言ってるか聞こえない……。
恥ずかしがり屋の先生なのか?
いや、みんなの顔をしっかりと見据えるように話しているし、恥ずかしいわけではなさそうだな。
じゃあ、なんでこんなに小さく話してるんだろう。
僕の周りの人も、僕と思っていることは同じらしく、みんな疑問の顔を赤ローブの女性に向けていた。
赤ローブの女性は、みんなの表情を見て、何かに気づいたのかハッとした顔になった。
赤ローブの女性は腰から杖を抜くと、ごにょごにょと何かを言いながら、杖をふった。
「すみません、聞こえますか?」
赤ローブの女性が、突然普通の声のボリュームで話し始めた。
みんな驚いた顔をしている。僕も驚いた。
「ごめんなさいね。ちょっと事情があって、今は声が大きく出せなくて。
音を大きくする魔法を使いました。
はい、じゃあ、また最初から自己紹介します。
私は、呪いの授業を主に担当しているアリッサと言います。
よろしくお願いします。
えっと、もし、呪いを魔法的観点から見てみたいという人は、私の授業を受けてみてください。
きっと有意義な時間が過ごせると思いますよ。
えっと、私は皆さんを寮に案内する仕事をもらいました。
ということで、今から移動するのではぐれないようについてきてください。
敷地内は大変広いです。迷わないように気を付けてください」
赤ローブの女性が建物の中に入っていった。
僕たちは、はぐれないようにすぐ後を追った。
「フィン」
キーラが僕の肩をたたいてくる。
「なんか……面白そうだね」
僕は笑みを浮かべながら答えた。
「確かにね。建物も立派だし、先生も独特だし」
「だよねー。あの先生いいよね。
授業受けてみようかなー」
「僕も授業を受けてみようかと思ってたよ」
僕はあの先生への興味というより、ただ単に呪いへの興味で授業を受けたいと思った。
僕がすぐ死んだのも、転生を繰り返していたのも、呪いのせいらしいし、呪いについて知りたいと思っていた。
建物の中は本当に広く、すぐに迷子になりそうだった。
一つ一ついろいろな部分で。造りが凝っていて、お城の中にいるみたいだなと何度も思った。
5分くらい後を追って歩いていると、階段を上ったところで急に赤ローブの女性が止まった。
「えー、見ればわかるように、ここには左右に渡り廊下がありますね。
この渡り廊下の先が各自の部屋となります。
右が男性の部屋、左には女性の部屋があります。
今からひとりひとり名前を呼んでいくので、呼ばれたら男性の方は右に、女性の方は左にいる生徒の指示に従ってください。
では呼びます」
赤ローブの女性が、手に持っている本を開いて、名前を呼び始めた。
周りを見ると、右には男の生徒が、左には女の生徒がたくさん立っていた。
多分この学園の先輩だろう。
人の名前が順々に呼ばれる中で、僕の名前がよばれた。
「キーラ、またね」
「あ、うん。また後で」
僕は言われた通り左に歩いていった。
すると、先輩の中から一人が前に出てきた。
丸眼鏡をかけた優しそうな人だ。
「フィンくんだよね。今から君の部屋に案内するよ。
ついてきて」
先輩が歩き始めた。
渡り廊下を歩いていると、廊下と同じく黒い、両開きのドアがあった。
「このドアの奥から男子寮だよ。
この学園は、年と性別によって寮が分かれているんだ。
そして、寮は一つの塔として、この渡り廊下でつながっているんだ」
先輩はそのドアを両手で押し開くと、また話しながら歩き始めた。
左右には、沢山ドアがある。
「えっと、この後の流れについて、歩きながら説明するね。
この後部屋に入ったら、自分の荷物を置いて講堂に行って。
その時に、白金貨1枚を忘れずに持ってくるように。
杖は持ってきても、持ってこなくてもいいよ。講堂では説明があるだけだしね。
分かったかな?」
「はい」
先輩は一度うなずき、ある部屋のドアの前で止まった。
「ここが君の部屋だよ。じゃあ、言ったことを忘れないように」
先輩は歩いてきた道を、戻っていった。
僕は先輩の後ろ姿を、何秒か見てから、ドアに向き直した。
僕は恐る恐るドアノブに手をかける。
もう同じ部屋の人はいるのかな。
同じ部屋の人がやばい人だったらどうしよう。部屋って変えられるのかな。
僕はドアをゆっくりと開けて、中をのぞいた。
中には荷物をせっせと整理している様子の人がいた。
「あのー、こんにちわ」
近づいて後ろからそっと声をかける。
「うわっ……!」
大きい声を上げ、小さい背中がびくっとなった。
「な、なんですか?」
「なんですかって……。同じ部屋だと思うんだけど」
「え、あぁ、ごめん。
同じ部屋の人か……。
よ、よろしく」
「あ、うん。よろしく」
大丈夫かなぁ、この人




