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  作者: しんぎつ なない
学園編
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14/22

第13話 ギリギリ

 ゴブリンが4匹で一斉に突っ込んでくる。

 

 「遅い!!」


 ゴブリンの一体を横に一直線に切り裂いた。

 4匹同時に来たとしても、1匹1匹のスピードが遅い。

 転生を繰り返し、戦いの経験を積んできた僕にとって、この程度の攻撃なら簡単によけられる。

 僕は2匹目のゴブリンを最初の攻撃の勢いを殺さないように、素早く切り伏せた。

 そして3匹目の首を落とした。

 残ったゴブリンは、一瞬戸惑うように動きを止め、そのすきに胴と足を切り離した。

 

 ゴブリンに一言も声を発させずに終わった戦いであった。

 周りにはゴブリンの死体と大量の血、それだけがある。

 

 「こんなに弱いのか……」


 僕は正直、最初の魔物との戦いでもあるし、もう少し苦戦すると思っていた。

 弱かった魔物に対して、落ち込む気持ちが残る。

 

 「魔法石ってどうやって手に入れるんだろう?

 オーガスさんは倒したら手に入るとか言ってたけど。

 体の中か?」


 僕はゴブリンの体を剣で切り刻む。

 血だらけの死体に対して、忌避感はなかった。

 まぁそれも何度も死んでいると当たり前のことで、”死”も状態の一部としてとらえることができていた。

  

 死体を切り刻んでも何も見つからない。

 僕は他のゴブリンの死体も切り刻んでみた。

 特に目立ったものはない。


 ゴブリンごときじゃ魔法石は手に入らないとかかな。

 ありえない話ではないな。

 

 僕はもう一度ゴブリンの死体を見てみる。

 すると、なにかが死体の中でキラッと光った。

 僕は光ったように見えた死体に、小走りで近寄り、よく見てみた。


 「あっ」


 ゴブリンの死体の中に砂粒みたいな小さくて、光る粒がある。

 僕はそれを親指と人差し指で、そっと手に取った。

 

 魔法石ってこれか?

 でももしあるのだとしたらこれしか見つからないし、これだよな。

 あ、ゴブリンの魔力と生命力が少ないからこんなものなのか。

 それにしても小さいな、こんなのがお金になったりするのかな。

 一応回収して持っておこう。


 僕はその小さな魔法石をお金の入っている袋に入れた。

 

 「うーん……、こんな魔法石じゃ授業で使い物にならないよなー。

 もう少し奥に行ってみるか」


 僕はゴブリンが出てきたほうへと進んだ。

 急にゴブリンや他の魔物が襲ってくるのは、流石に対応しきれないので、さっき以上に警戒を強めた。

 結構歩いていると、少し開けた場所に出た。

 気に囲まれていて、少し湿っぽい。

 魔物も見つからないし、湿気のせいか少し嫌な予感もしたので、ここで戻ることにした。

 魔法石は冒険者ギルドで買うことにする。

 どんなものが売っているかは分からないが、ある程度の大きさの物は売ってるだろう。

 僕は方向転換した。


 「ぐはっ……!!」


 空気と唾液が口から飛ぶ。

 

 ……何が起きた……!?

 僕はすぐに、倒れながらも一回転をし、状況の把握に努めた。

 

 「狼!?」

 

 白い体毛、鋭い牙。そこにいたのは大きな狼だった。

 

 「ぐっ、フェンリルか!」

 

 森の奥のほうに来ていた自覚はあったが、まさかフェンリルがでるとは思ってもみなかった。

 フェンリルはだいぶ強いはずだ。

 ゴブリンのようにはいかないだろう。

 

 僕は立ち上がりながら、強く握っていた剣を構えようとした。

 その刹那フェンリルの頭が僕のお腹に直撃する。

 

 「くっ……」


 さっきよりも重い攻撃に、唇を強くかみしめる。 

 一撃目の攻撃は、帰ろうとして油断しているところに、足音をころした一撃が僕の背中にあたっていた。

 その時の攻撃は、フェンリルが足音を消していた分、幾分か攻撃力は落ちていたが、今の攻撃は真正面からの本気の突進攻撃。すごい威力だった。

 僕は倒れないように、後ろに素早くバックステップをする。


 や、やばい……。

 息がうまくできない。

 次の攻撃は、何とか避けるか、カウンターで立ち向かわなければ。

 ……ほんとにやばい。

 

 フェンリルが次は、左右に素早く移動をしながら近づいてくる。

 僕は動きを目で追いながら考える。

 初めての人型生物以外との戦い。

 どんな攻撃を仕掛けてくるのか見当もつかない。

 

 素早くステップをしながら近づいてくるフェンリル。もうすぐそこまで迫ってきていた。

 フェンリルは左に移動したところでで急にステップをやめ、突進してきた。

 避ける!!

 ……避けれなかった。

 避けようとしたが、フェンリルのスピードが僕の避ける速度を上回り、僕の太ももあたりに攻撃が当たった。

 空中で一回転させられ、頭を強く地面に打ち付けた。

 

 声も出ない苦痛に頭がぼうっとするが、すぐに切り替え、ふらふらとしながらも、手をつき立ち上がった。

 フェンリルのほうを見ると、また左右に素早く動いている。

 フェンリルはすぐそこにいる。

 僕はすべての集中力を一か所に集めた。

 フェンリルの動きを目で追いながら、時をまつ。


 来た!!


 倒れこみながら、叫ぶ。


 「二度目はくらわねーよ!!」


 ほぼ地面と平行になった状態で、突進してきたフェンリルの後ろ足を目でとらえ、一気に斬る。


 「ギャウン!!」


 フェンリルは情けない声を出しながら、後ろ足を1本なくしているので倒れこんだ。

 僕はすぐに立ち上がって、体を前に倒しながら走り、痛みに唸っているフェンリルの首を一太刀した。

 フェンリルの体がビクンと一度跳ねて動かなくなった。


 「ふぅ……」


 僕はお腹を押さえながらも、大きく息を吐く。

  

 危なかった。

 危うく殴り殺されるところだった。殴るという表現であってるのかは分からないけど。

 同じ攻撃だったから、ぎりぎり見切ることができたが、本当に危なかった。

 ……自分の力不足を強く感じるな。

 魔法を使えれば、近づく相手を察知することもできるかもしれない。

 近接戦闘のスキルと魔法のスキルを上げるべきだな。

 あ、そういや魔法石。

 どのくらいの大きさの魔法石が取れるんだろう?


 僕はフェンリルを、剣の先で3回つついてから、お腹を切り開いた。

 お腹の中を、近くに落ちていた木の枝と手で探っていると、白いキラキラとした石が入っていた。

 

 「おー、これがフェンリルの魔法石かー。

 ゴブリンとは比べ物にならないほど大きいな。

 確かに強かった。あと一歩で死ぬレベルで。

 もう転生はこりごりだしな。あいつを殺すまでも死ぬわけにはいかないし」


 魔王がバックにいるのだとしたら、魔王もだな。


 僕はその白い魔法石を袋に入れ、服についている土をはらった。

 これでやっと帰れると思うと疲れが一気に押し寄せ、睡魔に襲われるが、さすがにここで寝るわけにはいかない。

 傷だらけの体の、最後の力を振り絞り、歩き始めた。

 家に帰るまでが遠足だというし、最後まで気を抜かずにいこう。

 

 ねむ……。 


 

 

 宿には、無事につくことができた。

 途中2匹のゴブリンに絡まれたが、軽くひねることができた。

 早く宿に帰りたかったので、その2匹の魔法石は回収しなかった。

 森の大分奥に行ってたらしく、帰るのにも時間がかかった。

 宿についた時にはもう空は真っ暗だった。

 僕は夕食をとらずに、まっすぐ部屋へといき、そのままベッドでねた。

 最近食事をまともに取れていないなー、改めよう。なんて考えているうちに気づいたら深い眠りについていた。

 

 

 昨日、遅く寝たというのに、朝は早く起きることができた。

 初日から遅刻なんてしたくないので、本当によかったと思う。

 体を拭いて、着替え、食堂に向かった。

 どこに座ろうかと食堂の中を見ると、いつもの席にオーガスさんが座っていた。

 僕は朝食を持って、オーガスさんのいる席に座った。

 

 「坊主ー、えらく疲れた顔してんじゃねぇか。

 何かあったのか?」


 「あー……、はい。

 危うく昨日死にかけまして」

 

 オーガスさんは目を見開いた。

 

 「え?死にかけた?

 何があったんだ?」

 

 「魔法石が欲しいなーと思って、森に入ったんですけど、フェンリルに不意打ち食らいまして。

 ゴブリンは余裕だったのですが、ちょっときつい戦いでしたね」


 「えっ、坊主、フェンリルと戦ったのかよ。

 ……よく生きて帰ってこれたな。

 ふつうにすげーよ。てか、よくそんな森の深いところまで行こうとしたな」


 「故郷では森によく入ってたので、だいじょうぶかなって思ってしまって。

 大丈夫じゃなかったですけど」

 

 僕が少し笑いながら言うと、オーガスさんは呆れたとでもいいたげな表情でいった。


 「魔物が出る森と出ない森では全然違うだろ……。

 まぁ、無事でよかったが。

 魔法石は回収できたのか?」


 「あ、はい。できましたよ」

 

 僕は腰につけてある袋から白い魔法石を取り出した。


 「おー、上物じゃねーか。

 よく坊主一人でやれたな。

 俺でも1人でぎりぎりって感じだぞ。あ、そう考えると俺と坊主、戦闘面では同じくらいなのか? 

 ……ショックだ」

 

 オーガスさんが頭を抱える。

 

 「いや、魔物との戦いはまだまだですよ。

 死にかけましたし……。

 オーガスさんのほうが魔物との実践経験は豊富ですしね。

 あ、そういえば、ゴブリンの魔法石って何かに使えますか?」


 「ゴブリンの魔法石?

 あの砂粒みたいなやつか?」


 「はい」

 

 僕はお金の袋をあさる。


 「あれ、ない」


 ゴブリンの魔法石は見つからなかった。

 僕の探す様子をみてオーガスさんは豪快に笑いながら、

 

 「あんな小さいの保管しておくのも大変だ。

 もし使うとしても大量の魔法石を一度に使うって感じだぞ。

 まず冒険者でいちいち集めてる奴はないな。

 ゴブリンの体の中から、探すのも大変だしよ」


 と言った。


 「そうですか……。

 頑張ってゴブリンから探した意味なかったんですね。

 そういえばオーガスさん、僕今日から学園の寮で暮らすんですよ」


 「おっ、そうなのか。頑張れよ。

 貴族様にいじめられないようにな」


 「はい。

 あの、それで一つお願いしたいことがあるんですけど……」


 オーガスさんは言ってみろというように、顎をしゃくった。


 「もしかしたらギルっていう人が僕のこと探してるかもしれないんです。

 もし、冒険者ギルドとかで見つけたら、フィンは剣術魔道学園に入学したと伝えてくれませんか?」


 「あぁ、分かった。伝えよう。

 おい坊主、そろそろ行ったほうがいいんじゃねぇか。こんな朝早く起きたんだし、早く行ったほうがいい んだろう?」


 「そう……ですね。

 じゃあ、僕もう行きますね。

 オーガスさん、お仕事頑張ってください」

 

 「あぁ。

 フィンも頑張れよ」


 「は……はい!」


 僕は小走りでお皿を戻し、宿の受付のおばさんに、いきさつとお礼をいって、宿をでた。

 この宿には長い間、お世話になった。

 名残惜しい気持ちで、何度か宿を振り返りながらも、着々と学園に向かって、足を進めていった。

  


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