第12話 魔物を狩る
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老人は静かに静かに話し始めた。
「その杖は私がまだ若いころに、手に入れた大切な杖だ。
私には合わなかった杖だが、長い間大切に持っていた。
お前が手に持った時の、強い衝撃。気持ち悪いほどの深い笑顔。
お前には、この杖以上に合っている杖はほかにはないだろう。
私はこの杖に合うものがいたら、譲ろうと考えていた。
代金はいらん。持っていけ」
静かながらも、長い年季を感じるその迫力ある話し方に、杖に対する思いがひしひしと伝わってきた。
僕はその重みのある言葉に、答えなければいけない。自然とそう感じられた。
「……ありがとうございます」
老人は一度鼻を鳴らすと、さっきとは違った大きな声でいった。
「この杖の名は ”バルゲリスティック” 。
何十年以上も前、春の終わりに手に入れた。
大切に使ってくれ」
「わかりました」
「一つ頼みがある」
「何ですか?」
老人は今まで見せたことのなかった笑顔になった。
「片付け手伝ってくれんか?」
片付けが終わり、僕は帰路についていた。
片付けをしながら、老人から杖について話を聞いた。
この杖の特徴は2つある。それも物凄いものが。
1つ目、この杖は念じることで剣にもなる。
剣の切れ味がすごいらしく、そこら辺の魔物なら豆腐を切るように切れるらしい。
この話を聞いて驚いたのが、この世界にも豆腐が存在するということだ。
で、2つ目が、この杖は念じるだけで、消したり、出したりすることができるらしい。
異空間に接続して保管しておくやらなんやら言ってたけど、難しすぎてよくわからなかった。
今僕は杖を消している状態にしている。
本当に念じるだけで、杖がパッと消えて驚いた。
この杖は大きく目立つから、出す必要がない時には異空間にしまっておいた方がいいかもしれないな。
泥棒とかに狙われたらいやだし。
宿についたころにはすっかり日は暮れていて、真っ暗だった。
部屋に戻ってから、杖を出した。
改めてじっくり見ると、細かな装飾に再度感嘆させられる。
1番目に付くのは四葉のクローバーのような装飾で、見るものを魅了させる。
老人は、どうやって手に入れたかは語ろうとしなかったが、これを作った人は本当に素晴らしい職人だということを確信する。
僕はポケットから一つのガラスのような石を取り出した。
この石は小さいころに母さんにあげようと思っていた石で、最近は毎晩この石を見て、村であったことを思い出している。
僕は少しその石を眺めてから、またポケットにしまった。
その日は今までで一番ぐっすりと眠ることができた。
次の日、起きたのは昼近くだった。
急いで支度をし、宿からでた。
今日は生活で使う服を買うことにした。
今日を含めて寮に入るまで2日ある。
明日は魔物を狩りに行って、それで狩れずに魔法石を手に入れられなかったら、冒険者ギルドで買うことにする。
服屋に向かう途中で、焼き鳥を買った。
昨日の朝から何も食べていなかったので、いい匂いに引き寄せられ買ってしまった。
スパイスが効いていて、実に香ばしい。
外はカリッと焼かれている。
買った焼き鳥を味わいながら歩き、全部食べ終わった丁度に目的地に着いた。
目的地の服屋は、僕が最初に金貨2枚で服を買った店だ。
店に入ると、僕に気づいた店員の一人がそそくさと近づいてきた。
「ご来店ありがとうございます。
この前は当店いでもっとも高価でエレガントな服を買っていただき誠にありがとうございます。
お客様のために、この前買っていただきました服よりもさらにエレガントなご衣服をご用意させていただきました。
どうぞこちらへ」
「あ、は、はい」
そういえばこの店員、前に服買ったときに驚いてた店員だ。
覚えてたのか。
また高価な服を買わされるのかな。
「こちらが当店で最高の服でございます。
最上級の綿と毛皮を使っていて、大変エレガントな一品となっております」
そういって紹介されたのは、如何にも高そうで動きにくそうな服だった。
「あの、もう少し動きやすい服はあり……」
僕がすべて言い終わる前に、店員は話し始めた。
「はい!ご用意させていただいてます!
お客様が最初にご来店されたときに、着ていました服もラフな作りになっていましたので、ご用意させていただきました」
最初に来ていた服ってあれか。
ぼろいやつだ。
今はあの服以外の服3つで回しているが、確かにあれはひどかった。
「これがその服となります。
軽い素材でできていますが、耐寒性も高く、冬でも暖かく過ごしていただけると思います。
このようなエレガントな服をほかに4つほどご用意させていただきました。
すべてお買い求めになりますか?」
「は……はい」
「ありがとうございます!」
この人すごいよな。
僕がこの店に戻ってくることを予期していたのだろう。
話し方は変だけど、プロなんだな。
「料金は金貨15枚と銀貨7枚になります。
一括払いになさいますか?分割払いになさいますか?」
「一括で」
僕は白金貨を1枚取り出し、渡した。
「わ、わかりました。
えーっと、これがお釣りになります」
店員から金貨と銀貨を受け取り、「ありがとうございます」と言って、店員に背を向けた。
「またのご来店をお待ちしております」
僕は店から出た。
店の中で……
「店長、あの人何者なんですか?」
「わからないが、貴族か何かじゃないか?
最初はあんな恰好だったが、話し方がきれいだった。
高位の冒険者かもしれないな」
「そうですね……」
「僕たちには関係のないことだよ。
深く知る必要もない。
さぁ、さっさと仕事をしなさい」
「わかりました」
服を新しく5着買ったけど、ほかに必要なものはあるかな。
洗面用具とかかな。
確かここまで来る途中に大きな雑貨屋があったよな。
そこに寄ってみよう。
僕は宿に戻りながら、雑貨屋によった。
そこでタオルと洗面用具を買った。
宿に戻り、部屋に荷物を置いてから、食堂に向かった。
今日の夕食は、芋の蒸し焼きとスープと焼き肉だった。
僕は夕食をおいしくいただいてから、体をふき、早めにベッドに入った。
目を覚ましたのは、まだ日が完全に出ていない早朝だった。
夏もほぼ終わっているので、朝は肌寒い。
お金と森で拾った石だけをもって外に出た。
まだ朝早いというのに、露店では忙しなく開店の準備を進めていた。
壁が近づいてくると、馬車の通りも激しくなってくる。
沢山の荷物をのせた馬車や空っぽの荷台の馬車、人が乗るための馬車。
いろんな馬車がこちらも忙しなく動いている。
そういえばギルとギルのお父さんはどうしたんだろう。
あれから結構経ってるけど、連絡来ないな。大丈夫かな。
まぁ、僕の居場所もわからないだろうから、時間かかるか。
王都はでかいしな。
こっちは下手に動かないで、気長に待ってよう。
王都の壁の門についた。
門番に通行許可証を見せて、門の外に出た。
目の前には草原が広がり、人や馬車が踏んでできた道が1本まっすぐ通っていた。
僕はその道から外れ、魔物が出るという森のほうへいった。
前もこの森には一度来たことがあるが、その時は魔物とは遭遇しなかった。
今回は前回よりもっと奥に行ってみることにする。
僕は念じ、杖を出した。
そして次は「剣になれ」と念じた。
変化してできた剣は、刀身まで黒く、柄の部分に細やかな装飾のされている剣だった。
柄の先には、杖の時にもあった赤い霧のような模様の入った透明な宝玉が埋め込まれている。
大きさに反して、重さを感じさせず、その力強さは不思議となんでも切れるような予感さえさせた。
今までは魔物と初めて戦うことに対して、晴れない霧のような不安を感じていたが、この剣を握った瞬間にそのもやもやとしたものは、戦いへの自信へと変化した。
「確かにこれなら豆腐を切るかのように、スッと魔物も斬れそうだ」
森の奥へ奥へと歩を進めていると、前のほうでガサガサと音が聞こえた。
そして、高い草の間から出てきたのは、
「ゴブリン!」
ゴブリンだった。
ゲームやアニメでみたそのものだ。
緑色の皮膚に醜悪でずる賢そうな顔。
手にはこん棒のようなものを持っている。
そのゴブリンが出てきたあと、さらに3匹ゴブリンが出てきた。
各々剣やこん棒、木の枝という武器を持っている。
魔物の中では最弱ともいわれる存在だが、油断はできない。
気を引き締めてかかろう。
「ギギュグギー!」
「ギュギ!」
ゴブリンが叫びながら、僕のほうに走ってきた。
「行くぞ!!」
僕は剣を構えた。




