第9話 入学試験2
僕の番か。
よし、全力を尽くそう。
「ほらよ」
木剣を渡された。
「いつでもかかってこい」
僕は一気にアデルバートに近づき、右から左に剣を振った。
この攻撃は簡単に受け止められる。
だが、剣ははじかれるが、僕はみんなのようにはじかれない。
最初の攻撃は緩いフェイクだ。
僕ははじかれる剣に任されるまま、一回転する。
そして、今度は左から攻撃をする。
アデルバートは一瞬反応が遅れるが、さすが騎士。すぐに剣でガードした。
この攻撃が止められるのは予想していなかったが、すぐに次の行動に入る。
僕は剣を滑らせ、アデルバートの頭を狙った。
「おっ」
アデルバートが声を上げる。
よしっ、これは確実によけられない。いけるっ。
突然、僕の頭に強い衝撃。
「いってーーーー!!」
いたいっ……!
何が起こった…。
ここまでうまくやれたのは相手の油断のおかげだが、最後の攻撃絶対にはいったはずだ。
頭をかかえて倒れている僕に、アデルバートはそっと手を差し伸べて、悪いことが親に見つかった子供のような顔をして言った、
「いやー、すまんすまん。危なかったもんで、ちょっと剣技をつかってしまった」
剣技……?
頭に強い衝撃があったときに、アデルバートの体がオレンジ色にひかったように見えたが、あれが剣技か?
僕の知らない技がたくさんあるんだな。
今度教えてもらおう。
「フィン、お前よかったぞ。前の7人よりは確実に良かった。
見たこともない流派だったが、なんていう流派なんだ?」
「えっと……。流派ですか……。これ、我流なんですよね。
とくに誰にも習ってませんし、経験の中で身に付きました」
「我流だと……。
誰にも習ってない……?
その年で経験か。
壮絶な人生を送ってきたんだな。
よしっ、お前はおれが強く上のほうに推しといてやろう」
「あ、ありがとうございます!
よろしくおねがいします」
しゃあぁぁ!
これで受かる可能性がグーンとあがったぞ。
筆記も簡単だったし、これいけんじゃね!?
と、思っていた時期もありました。
しかし、この考えは次のアデルバートの言葉でバキバキに壊れます。
「この調子で、次の魔法テストもがんばれよ」
……
ま、まほう……。
か、完全に忘れてた。
そういえばここ「剣術”魔道”学園」だった。
つんだ……。
ばかか僕は。
魔法なんて赤ちゃんの頃に一回見たぐらいだぞ。
「大丈夫か?あと2人残ってるし、次に行きたいんだが」
「あ、は、はい。すみません」
僕はいったん考えるのをやめ。
待っている9人のもとに戻った。
「ねぇねぇ、フィンくんだよね?」
戻るとすぐに話しかけられた。
話してきた女性はショートカットの顔の整った人だった。
「さっきすごかったね。
右から攻撃したかと思ったら、すぐに左から攻撃して、だと思ったら上から攻撃して、本当にすごかったよ。
わたしも剣には自信があるんだ。
よく見ててね」
「え……。うん」
なんだこいつ、
こわ
「最後にキーラ。でてこい」
「あ、よばれた。フィンくん、仲良くしようね」
いつの間にか9人目が終わっていた。
てかあいつキーラっていうのか。
見てほしかったんだっけ。
どんな戦いをするのかしっかりとみといてやろう。
「いつでもかかってきていいぞ」
と、アデルバートが言った。
その瞬間、キーラの体が青白くひかった。
そして、次の瞬間アデルバートは地面に尻をつき、首に木剣の先をつけられていた。
なにが起こった。
これも剣技か……?
なんにも見えなかった。
キーラはアデルバートとなにかを話して、戻ってきた。
僕に近づき、
「どうだった、どうだった?」
と、尋ねてくる。
「すごかった。あれは剣技?」
「うん、そうだよ。
フィンくんも使える?」
「いや、つかえない。
あ、フィンでいいよ」
「わかった、フィン。わたしは、あ、自己紹介してなかったね。私はキーラ・フィオレンツァ。
キーラって呼んで。
えっと、剣技の話だったよね。
この歳で剣技使える人すくないからね。
フィンも使えなくて当たり前だよね」
キーラ使えてるじゃん。
「剣技って誰でも使えるものなの?」
「うん。練習すればね。
剣技は使えなくてもフィンはすごいよ。
私も戦いたくなったよー。
学園では仲良くしようね」
「…………。
ちょっと次のテスト難しいかも……」
「え、」
「よしっ、これでこのグループの剣技のテストは終わりだ。
次の魔法のテストはあっちでやる。
すぐに移動しろ」
アデルバートが紙への記入を終え、外の、的がある場所を指さしてそう言った。
「あ、移動だって。いこっか」
「うん、そうだね」
僕が歩き始めるとその後ろをキーラがついてきた。
僕の頭の中は焦りでいっぱいだった。
やばい、やばい。
もう魔法のテストだ。
終わった。
指定先で待っていたのは、三角帽子をかぶった年配の女性と男性だ。
男性のほうは長いひげが生えていて、貫禄がある。
大きな杖を持っている。
そんなことを考えていると、
「一列に並んでくださーい。順番に試験をしていきます。
あの的に向かって自分の得意な魔法を一発放つのが試験内容です。
はい、早く並んでくださーい」
と、女性のほうが号令をかけた。
すると、自信のありそうな人からどんどん並んでいった。
まえのほうには筆記試験会場で最初に話しかけてきたやつもいる。
「フィン。並ばないの?
もう、やっている人もいるよ」
的のほうを見ると、的に小さな炎の球がぶつかっていた。
水の球を放っている人もいる。
的はいくつかあって空いた的から、順番にいろいろな杖をもって、試験を受けている。
的は魔法を受けても傷つく様子をかけらも見せない。
あの的にもなんかしらの魔法がかかっているのかもしれないな。
攻撃魔法は初めて見たが、本当に驚かされる。
魔法は奥が深そうだ。
気づくと、僕とキーラ以外みんな列に加わっている。
僕も覚悟を決めて並ぶか。
「フィン。私先でいいかな?
フィンに見てもらいたいんだ」
「わかった。
あのさぁ、キーラ」
「なに?」
「魔法ってどうやって使うの?」
キーラは目を開く。
「え……?」
「魔法ってどうやって使うの?」
「え……?」
「魔法ってどうやって使うの?」
「いや、聞こえてるよ!
驚いてただけ!フィンって魔法使えないの!?」
「うん」
「少しも?」
「うん。今日初めて見たといっても過言ではない」
「え、やばいね」
「うん」
「うん、じゃないんだけど。
魔法なんて1日2日で身につくものじゃないよ」
「そこをなんとか」
「えー。
役に立つかわからないけど、自分の中を流れる力、つまり魔力を操る感じ。
完全に操らないといけないから。
想像力が大事かな」
「お、わかった。ような気がしなくもない」
キーラはため息をついて言った。
「まぁ、次がんばれ」
あきらめろってことね。
あきらめないけど。一応受けるは受ける。
剣術では高評価だったし、魔法の実技が0点でもなんとかなるかも。
なにより、僕は力をつけなきゃいけない。
「次っ!」
話し込んでいると、いつの間にかキーラの番が回ってきた。
「私いってくるね」
キーラの魔法はどんなものなんだろう。
剣術はすごかった。
魔法も強いんじゃないか?
キーラは所定の位置につき、腰にささってあった杖を取り出し、的に向けた。
「ウィンド・カッター!」
杖を振るのと同時に、的が真っ二つに切れた。
試験官が「おー」と、歓声を上げる。
もし、試験を受け終わった人が残っていたら、そちらからも歓声が上がっていただろう。
誰も傷一つつけることのできなかった的を切ったのだ。
すごい威力とスピード。
見えない刃だし、実戦ではものすごい役に立つ。
キーラがこっちを向いて、得意げな顔をした。
「次!」
キーラはほかの人のように、退出せず僕の様子を端のほうから見ていた。
ついに僕の番か。
僕は言われた場所に立つ。
流れか。
自分の中を流れる力の流れ、魔力を感じるとキーラは言っていた。
僕は目を閉じ、自分の中に意識を向ける。
……
…………
これかな。
錯覚かもしれないけど、分かったかもしれない。
そしてこれを操って放出する。
スピードはなくていい、威力が欲しい。
試験官にあっと言わせることのできる威力。
ありったけの魔力を込め、このイメージを具現化する。
黒い小さな電気をまとったような塊が僕の前にできた。
……これが魔法。
これを放つ。
黒い塊はふわふわと的のほうに飛んで行った。
黒い塊が的にあたったかと思った刹那。
ドゴーーン!!という音をたて、地面の一部ごと的が消滅した。
あ、やべー。
つえーー。
試験官のほうを見ると、ポカンと口を開けている。
「き、君。杖は……?詠唱は………?」
みんな杖使ってたっけ、僕使わなかったな。
あ、キーラは見てくれたかな。
「うえっ……」
気持ち悪い。
急に吐き気がしてきた。
僕はその場に崩れる。
「大丈夫か!?」
「フィン!!」
最後にその言葉を聞き、目の前が真っ暗になった。




