第8話 入学試験1
「は~、気持ちのいい朝だ」
移動が多く、ろくに眠れていなかった僕は、久しぶりのはっきりとした目覚めに大きな満足感を得ていた。
今日は服を買ってから、学園を見に行く。
入学試験の手続きを終わらせたい。
詳しいことは何もわからないし、一回のぞいてみようと思う。
それが終わったら武器屋に行きたいと思う。
オーガスさんは剣の練習をしたほうがいいと言っていた。
剣を買って練習する。
練習というより動きを思い出す。
「そろそろ、いくか」
持ち物が少ないので気軽に出かけられる。
食堂で朝食を済ませ、宿屋を出た。
朝食は簡単なスープとパンだった。
「確かこっちって言ってたよな」
宿屋を出るときに、宿の人に聞いた道を進んでみる。
歩き始めて20分くらいで衣服屋についた。
店員にも驚かれたが金貨2枚払い、結構いい服を買った。
おつりで銀貨と銅貨をもらったので、もう驚かれることもないだろう。
次は剣術魔道学園だな。
衣服屋の店員に聞いたとおりに道を進む。
40分ほどお城のほうへ歩くと、学園が見えてきた。
学園のあるところは高級住宅街という感じで、大きな家がたくさん建っている。
それにしても、本当にこの王都は広い。
1日歩き続けても横断できないんじゃないか?
学園はものすごくでかかった。
周りを囲む壁越しに見ても、その迫力がひしひしと伝わる。
石の建材を基調につくられた建物で、頑丈なイメージだ。
門に受付があった。
「ご用件は?」
と、受付の女性から聞かれる。
「入学試験の手続きをしたいんですけど……。
どこですればいいんですか?」
老人は首に手を当て言った、
「あなたは貴族ではありませんね。
おつきの者も一人もいらっしゃらないようですし」
「はい、貴族じゃないです」
「では、ここに名前の記入と、試験料の金貨1枚をお支払いください」
そういって、紙とインクを僕の前にすべらせた。
僕はそこに”フィン”と記入し、女性に金貨1枚を渡した。
すると、
「フィン様ですね。試験は2か月後の9月8日です。お気をつけておこしください」
と、女性は淡々と覚えていることを口に出すように、そう言った。
「わかりました。ありがとうございます」
僕が受かるとは思ってないんだろうなぁ。
貴族が教育を受けて、やっと受かるようなところだしな。
それにしても、2か月しかないんだよな。
オーガスさんにきいていたけど、やっぱり少ないな。
まぁ、できることを頑張ろう。
王都に入ったとき最初に見た武器屋で剣を買った。
買い終わったころにはすっかり日が暮れていた。
あ、今日昼ごはん食べてない。
ここにきてから移動が多いな。
本当に広すぎ。
城に近づくにつれ、建物や道が裕福になっていたし、お店も高そうな店ばかりだった。
普段、壁に近いところに住んでいる人は城のほうに行かないから、移動には困らないのかもしれないが、僕みたいに行き来してると、すごい疲れる。
宿屋につき、夕食を食べすぐに寝た。
明日からは入試に向けて特訓しなきゃいけないしな。
起きるとすぐに、宿屋を出て、途中干し肉を買い、壁の外に出た。
出るとき門番の人に木でできたカードをもらった。
次に王都に入るとき、これを見せるとお金を払わずにはいれるらしい。
王都から出てから、森に向かう。
森で特訓をしようと思ったからだ。
森に入り、剣がふれそうなスペースを見つけ、荷物を置いた。
やっぱり森の中は集中できる。
故郷の森とあまり変わらぬ風景が、僕を落ち着かせ、深い恨みを思い出させてくれる。
僕は剣を強く握った。
「ひさしぶりだけど出来るかな……」
思い切り剣をふるう。
シュンッっと風をきる音がした。
「ふぅ、覚えてた覚えてた。
これならなんとかなりそうだ」
僕は何度も何度も転生してきた。
いつも若いうちに記憶を取り戻し、死んでいたが、いろんな経験をしてきた。
剣術もそうだ。
剣闘士だったときもあるし、剣の基本は学んでいる。
何度か剣をつかっていた時があり、その経験の記憶が、我流の新たな剣術を生み出した。
ぼくにはこの世界では特別な力は何もない。
だが、僕には転生によってえた知識と経験がある。
僕が入学試験を合格できる道があるとしたら、その経験を生かした方法しかない。
いける気がしてきた。
絶対にあいつを殺せる力を手に入れる。
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毎日剣を振り、2か月がたった。
「フィン様、こちらです」
案内人に連れられ、椅子と机の置いてある部屋に案内させられた。
100人くらいなら軽く入ることのできる大きな部屋だった。
部屋に入ると、そこにはもう何人か同い年くらいの人が座っていた。
みんな緊張しているんだか、怖い顔をしている。
服もきらびやかとした上等なものを着ている人が多く、自分が場違いなような気がしてくる。
僕は気持ちを強く持ち、後ろのほうの指定された椅子に座った。
「おい」
ふいに、前の席に座っていた男に声をかけられた。
「汚い格好だな。平民か?」
うわ、失礼だな。こいつ。
多分貴族だろう。
なめられないようにしよ。
てか、この服そんな汚いか?
あ、膝のところに少し土がついてる。
しくったなー。来る前に剣なんてふらなきゃよかった。
「無視か?平民が私のことを無視するのか」
「い、いや。無視しないよ。ちょっと考えちゃって」
「ふんっ、まぁいい。汚い平民のくせして、なぜここにいる?」
「ふつうに試験受けに来たんだけど」
「は?お前がか?はははははは」
いや急に笑い出すなよ。
びっくりするだろ。
「面白い冗談だ。久しぶりにこんなに笑ったぞ。
ここには迷い込んだのか?」
口角をあげながらいってくる。
「入試のためだって」
「はっ、本当にそうだとしたら馬鹿だな。
おまえが受かる可能性はみじんもない。
これっぽちも才能を感じないからな。
今すぐ帰れ。お前といっしょに試験など受けたくない」
「帰らないよ。
僕にはやらないといけないことがあるからね」
「まぁ、いい。どうせ落ちる」
こいつむかつくな。
初対面の相手にそこまで言えるか普通。
だけど、逆にやる気が出てきた。
僕らが話している間に、人が結構入ってきていた。
部屋のドアがしめられた。
もう、全員そろったんだろう。
「今から配る問題をやってもらいます。
試験時間は70分です」
えっ?もう始まるの?
どんな試験があるとか聞いてないけど。
そんなことを考えていると、手元に問題が配られた。
「では、はじめる。スタート!」
え。急だな。
早すぎる展開に驚きを隠せないぞ。
周りの何人かも少し戸惑っている様子。
焦ってる場合じゃないな。
もう、筆記試験は始まってるんだ。
やろう。
問題は簡単だった。
オーガスさんが言ってた通りに数学が中心の問題だった。
「次は剣術のテストだ。
このテストはグループに分かれて受けてもらう」
1グループ10人くらいで、グループによって試験官が違うらしい。
建物内を移動し、運動場のようなところに連れてこられた。
グループ分けもされ、試験官が僕たちのまえに立ち言った、
「よく、来たな!
今日このグループで剣術の試験を担当するアデルバートだ。
騎士団で分隊長をやっている。
試験内容は俺と一人ずつ戦ってもらう、だ。
使うのはこの木剣。ケガさせたらいけないしな。
じゃあ、さっそく始めようか。
最初はカール。
前に出ろ」
僕の左に立っていた人が前に出た。
「これを使え」
アデルバートがカールとよばれた男に木剣を渡す。
カールが剣を構えたのを確認してから、
「さぁ、いいぞ。
いつでもかかってこい」
と、言いながら、手の平を上にして上下させた。
カールは地面をけり、まっすぐアデルバートの間合いまでつめる。
素早く剣を振った。
だが、その攻撃は簡単に受け止められ、彼ははじかれ、しりもちをついた。
「終わりだ」
周りからため息がきこえる。
これは感嘆のため息なのか、あきらめのため息なのか。
さすが分隊長といえる素早さだった。
「次はハリー。こい」
この後もさっきと同じ光景が続いた。
7人が終わり、
「フィン。出てこい」
僕の名前が呼ばれた。




