第10話 合格発表
目を覚ました。
僕はベッドに寝かされていた。
体がだるくてうまく動かない。
ベッドからゆっくり降りて、人を呼んでみる。
「誰かー。いませんかー?」
呼ぶとすぐに人が来た。
魔法試験会場の女性と、キーラだ。
「フィン!起きたんだ。
よかったー」
「キーラ、僕どうしたの?」
「えっ、あぁ。魔力を使いすぎたんだよ。
まさか初めてだっていうのに、あんなに強い魔法なんて使うから。
杖も使ってなかったし。
魔力は魂に刻まれるもので、経験によって多くなっていくものなんだ。
まだこの歳で、しかも魔力の特訓をしたことないんだから、魔力は少なくて当たり前なんだからさ、気を付けないと」
「あ、魔力の使い過ぎか。
魔力操るの慣れてないしなー」
「そうだよ。
最初からあんな強い魔法を使うなんて」
僕とキーラが話していると、キーラの横にいた女性が、
「フィンくん。
本当に最初に使ったんだとして、どうやってあんな魔法が使えたの?」
とたずねてきた。
「えっと……。わかんないです。
適当にやったらで出来た。っていう感じですかね」
「それが本当なら、すごい才能だわ……。
まだ、魔力の量は乏しく、色々と改良すべき点はあるけど、実に欲しい人材ね。
私から、上にフィンくんの入学を強く推薦しとくわ。
貴族ではないって聞いたけど、お金はあるんだよね?」
「はい」
「わかった。
じゃあ、さっそくいってくるわ!」
女性はそれだけ言って、部屋の外に走っていった。
「いっちゃったよ……」
「落ち着いている人だと思ったら、結構激しめの人だったね。
でも、あの魔法はすごかったよ。
強いイメージ力が必要だよ。才能だね」
「そうかなー」
そんなに直球でほめられると、恥ずかしい。
でも、これで入学できそうだ。
そして力をつけてあいつを殺す。
学園から出て、キーラとは門の前で別れた。
僕はだるい体に鞭を打ち、なんとか宿に戻ることができた。
次の日、僕は冒険者ギルドに向かった。
依頼がちゃんと出されたのを確認してくださいと言われたのを完全に忘れてた。
あれから2か月以上たっているが、どうなっているんだろうか。
ギルドのドアを開けると、酒臭い香りが漂ってきた。
こんな朝っぱらから、飲んでいる人いるんだな。
依頼の紙が貼ってあるボードのほうに行く。
お、まだ僕の依頼が貼ってある。
結構時間たってるから、もうなかったりするかもと思っていたが杞憂だったようだ。
僕は受付の女性に話を聞いてみることにした。
「あの、僕の依頼ってどうなったのでしょうか?」
「確か……、捜索と討伐でしたよね」
「はい」
「情報はいくつか入ってきましたが、どこにいるかまでは特定できていません」
「情報……ですか?」
「はい、その緑色の生物と外見が似ている生物が、魔王の幹部にいるとの情報が入ってきています」
僕は目を大きくした。
「魔王……!?そんなものがいるんですか?」
「知らないんですか?
魔王は強力な魔物を何体もつれています。
ここ数年は鳴りを潜めるていますが、数年前はとても大きな被害があったようです。
最近はこそこそ何かを探しているとか」
「何かを探している……」
村に来たあの生物も、何かを探していた。
その何かが何かはわからないが、あれが魔王の手下であることは間違いないだろう。
あ、そうだ。
「あの、依頼内容の変更は可能ですか?」
「はい、可能ですよ。
どのように変更しますか?」
「えっと……、お金はそのままで、依頼内容を捜索と討伐から、捜索だけにしてください」
「わかりました。
報酬はそのままで、依頼内容の変更ですね」
「はい」
僕は挨拶をしてから冒険者ギルドから出た。
次はどこに行こうか。
特にすることは決まっていない。
入学試験の結果発表は1週間後にされると言っていた。
それまで暇だな。
勢いで入学試験を受けてしまったが、僕はまだ剣術魔道学園のことをほとんどなにもしらない。
学園のことを調べるのと、魔法と剣の練習かな。
僕はさっそく行動を開始した。
オーガスさんや、露店のおじさんなどに話を聞いた結果、いくつか学園について分かった。
学園は全寮制らしい。
そして、魔法コースと剣術コースに分かれるということだ。
どっちを選ぶかは本人が決めることができるらしい。
僕は魔法コースを選びたいと思っている。
魔法のことは、まだまだ知らないことばかりだし、魔法に対してあこがれもある。
そしてなにより、あいつを殺すには魔法の力は不可欠だと感じた。
剣術コースでは受ける授業はすべて最初から組んであるというが、魔法コースは自分で興味のある講義を受ける制度だという。
魔法のことは何もわからないので、不安が残る。
剣術の特訓は自分でできると思った。
というより、僕の剣は我流なので教わる人がいない。
魔物などと戦って、強くなっていきたいと思っている。
合格発表の日になった。
剣術魔道学園までの道は長いので、僕は朝早くまだ冷え込んでいるころに宿を出た。
学園までは驚くほど早くついた。
この早くというのは時間的に早いというわけではなく、体感的に前来た時より、早く感じたということだ。
僕には落ちたかもしれないという気持ちは全くない。
自分でもわからない自身に満ち溢れている。
こういう根拠のない自信があるときに限って、失敗するのだが、僕には失敗する情景は浮かばない。
こんな前向きな気持ちが学園に早く着いたと錯覚させたのだと思う。
門にいる受付の女性に名前を言い、門を通った。
外に張り出されているらしく、人が何人か集まっている場所を見つけた。
僕はゆっくりとその人だかりへと近づいて行った。
人だかりには執事のような人間もちらほら見えた。
大きな紙には、名前がフルネームでづらーっと書いてある。
僕は左上から順に名前を追っていった。
左の一列を見終わる。
左から二列目も見終わる。
左から三番目の列も見終わる。
真ん中の列も見終わる。
右から三列目も見終わる。
ここで僕は初めて焦りを覚えた。
右から二列目も見終わった。
あと一列……。
覚悟を決めて、最後の一列を見る。
「あ……あった……」
フィンという名前は、一番下から二番目に書いてあった。
見る前は絶対受かるだろうと余裕をこいていたが、今は安堵でいっぱいだった。
あれ、そういえばキーラの名前を見ていない。
僕はまた左から、じっくりと見直した。
やっぱりない。
落ちたのか?そんなわけないよな。
剣術は完ぺきだったし、魔法もほかの人より数倍すごかった。
筆記か?
あの簡単な筆記で落ちたのか?
いやいや、そんなわけない。
んー……
そんなことを考えながら、僕はまた紙の貼られているボードをみた。
「……あ!」
キーラの名前を見つけた。
キーラ・フィオレンツァという文字は、多くの名前が連なられているところとは少し離れた、上のほうに書いてあった。
その文字の横には副主席という文字が置いてあった。
キーラは副主席かー。
すごかったもんなー。
でも、キーラが副主席ということは主席は誰だ?
キーラを超える人物がいるということだよな。
魔法の試験の時にはそのような人は見ていないと思う。
名前は、ディルク・イシュベル・エイヴァン。
覚えておこう。
「受かった方はこちらです」
建物の玄関に立っている鎧を着た人が声をかけていた。
あそこにいけばいいのか。
案内の通りに進んでいくと、大きな講堂についた。
バームクーヘンの一部みたいな形をした場所で、僕は真ん中よりやや後ろ目の椅子に座った。
前のほうを見ると、キーラだと思われる後ろ姿がある。
声をかけようと思ったが、いまさら動くのもなんか変な気がしたのであきらめた。
周りを見ると、執事が後ろに立っている人もいた。
しばらく待っていると講堂のドアが音をたてて閉まった。
そして、前の高級感ある演台に高そうなローブを着たおじいさんが立った。
蔓が絡まったような、背丈と同じくらいの杖を持っている。
そのおじいさんは、あれは魔法の道具だろうか、金属でできた四角い箱を持って、
「合格者の諸君、まずはおめでとう」
と、貫禄のあるしゃがれた声で言った。
あれは、拡声器だろう。
おじいさんの声が講堂いっぱいに響いていた。
「私はこの学園の創設者であり、王国の第一級代表魔導士であるメルキオールじゃ」
講堂が一瞬ざわめく。
「今日は簡単にこの学園の説明をしようと思う。
知っての通り、この学園は全寮制じゃ。そして、ここには執事を連れてきてはならん。
3日後から正式に入学となる。
その時は執事を連れてこないように。
えー、突然じゃが、今から魔法コースか剣術コースか選んでもらう」
メルキオールが手を一度たたくと、どこからか紙とペンが浮遊してきて、机に置かれた。
魔法ってすごいな、こんなこともできるのか。
「コースの説明は、試験の日にされていると思う。―――」
え、されてないぞ。
僕は途中で倒れたから、その後の説明に出れなかったしな。
その時に説明されたのだろう。
僕が目を覚ました後に来た女性は、それを僕に伝える役目もあったのかもしれない。
だけど、それを忘れたのかもな。
興奮してたし。
「――――このコース選択は学園を卒業するまでの5年間、ずっと関わってくることになる。
よく考えてきたことじゃろう。
では、あと少しで集める」
僕は聞いていないが、自分で調べ魔法コースに決めていた。
迷わず魔法コースに丸をつけ、名前を書いた。
「では集める」
メルキオールが手をたたくと、紙とペンは浮かび上がり講堂から出て行った。
彼は軽く咳ばらいをしてから、また話し始めた。
「3日後、学園に来た時から寮に入ってもらう。
聞いたと思うが、剣術コースと魔法コースでは寮と授業の建物が違うんじゃ。
3日後の日には、それぞれの選んだコースごとの門から入ってきてもらう。
間違えることのないように。
3日間で準備を済ませておきなさい。
コースごと必要なものは、今から配る紙に書いてある。
よく見ておくように。
えー、これを持って解散とする」
そう言って、メルキオールは舞台の端に消えていった。
紙がまた浮遊しながら手元に来た。
手元に紙が回ってきた直後に、講堂のドアが音をたてて開き、人がぞろぞろと出て行った。




