クラス分け試験
戦闘にもならない、圧倒的な力
ここは学校のはず。でもここまで非常識だとは思っていなかった。
アリーは頬をひきつらせた。ライディン家の御曹司はアリーに問い掛けると言うより、自らに確認する意味合いが強い言葉を発した。
「なあ、ここ学園の中だよな」
「.........」
(分からないって? 実にそう思うよ。私が聞きたいくらいだもの)
どうやらジェイラルドも非常識だと思っていたらしく、苦虫を数百匹噛み潰してしまったような、苦々しい顔だ。
アリーは振り返って手を伸ばした。"ドアがある"はずのその場所はぽっかりと空虚で、壁さえない。
ゆうゆうと広がるのは、呑気な草原だった。
(どうやって戻るのかな、これ)
そう。まず確認すべきは帰り道だ。部屋にはいって何をするか? もちろん非常口の確認だ。これは常識である。が、非常口が無い。
アリーとジェイラルドは膠着状態に陥った。
(ほんとにどうしよう、これ)
と、そのとき。
パンポーン!
「うわっ、何だ」
『魔界へようこそ~ 魔王です☆ 君たちの学園に依頼されて場所を提供しました~』
ガチャンと声が切り替わった。
『主任のキリーヴだ、お前ら、今からエンカウントしたモンスターをどちらかが一匹でもしとめたら試験終了だ。ちなみに倒したほうは、俺たちが一つだけ願いをかなえてやる。制限時間は20分では、』
ポーン!
「今のって始まりだよな」
たぶん、と言う意味をこめてアリーは頷いた。前方には何も見えない。
「どうするんだよコレ…」
「………」
ジェイラルドは、途方にくれたようにも、いらいらしているようにも見える不思議な表情を浮かべていた。
「頼むからなんかいってくれよ…」
「………」
「解決策とか無いよな…」
「ないね」
「そこだけ即答かよ。勘弁してくれ…」
彼はうつむいていた顔を上げると、端正な顔に決意をにじませた。
「よし、じゃあ、二手に分かれよう。君は向こう、俺はこっち」
アリーはあまり得策でもない策に文句を言わず頷いた。
「じゃあ後で、戻ったときに」
「わかった」
ジェイラルドがかけていく。アリーはため息をついた。
「どうか死にませんように」
魔界とはそういうところである。
***
(めんどくさいな、試験とかマジで。要は一匹でも倒せばいいわけでしょ?)
確かにそのとおりであるが。
前方にアリーは耳を済ませた。
ゴウン ゴウン
どうやら大型のモンスターがいるようだ。
近寄って倒そうかと思ったが、アリーは面倒くさいと思い直した。
(こっから向こうに行くより、向こうからこっちへ来てもらえばいいか)
アリーは念のために首のネックレスを出すと、目を閉じた。
思い描くはモンスターと自分の距離が短くなった風景。
がるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる
目を開けたアリーの前にいたのは、神秘的な黒いうろこを持つ…………
「うっそ、竜だと!」
竜だった。
(ま、何であろうと関係ないよね)
当然、竜は突然変わった風景に驚いているようだ。
(竜のうろこって売ると高く売れるんだけどー)
生命の危機に瀕していると言うのにアリーは利益を考えている。末恐ろしい子であった。
アリーの目が金色に光った。
ネックレスが揺れる。とたん、竜の動きが止まった。
アリーは笑みを浮かべた。
「はいな」
があああああああああああああ、がっ、ごっ
「ほい、と」
普通竜は、竜騎士という専門の討伐師が10人ぐらいでまとまって討伐する。それでも死人が出る危険な生き物だ。
それをアリーは、
ーー爆裂
簡単に殺してしまった。残ったのは内側から肉を突き破って出ている骨と、肉そのものだ。
「アリー!...これは」
音を聴いて駆けつけたらしいジェイラルドが絶句するなか、アリーは返り血を浴びた壮絶な顔で笑った。
「試験終了、と」
次回、投稿が遅れますm(__)m




