入学直後 その四
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「だから最初からそう言っているでしょ!」
ヒステリックに叫ぶのは遅れてきた王女だ。
アリーは冷めた目でその修羅場を観戦していた。気分は昼ドラだ。
「アリー」
「あ、エレイン。戻ってきたのか」
「なんで残念そうなのよ!? 私たち友達よね!?」
「大丈夫貴女はもう一人で生きて行ける」
アリーは儚く見せるように言って、笑った。
(あーあ。昼ドラ楽しんでたのに)
そう本気で思っている辺りアリーも鬼だ。
「ちょっと、アリー!!」
背後で喚くエレイン。
ため息をついたアリーは振り返って札を渡した。
「しょうがないんだから。これ、試験表。その番号を読み上げられたらもう一個書いてある方の番号のところにいくんだって」
さすが私の親友、とのたまうエレインに苦笑してアリーは思った。
(現金な子)
たしかに現金である。これでも指折りの実力者であるのだが。
アリーは手元に目を落とした。アリーは12の9だ。今8番なので順番まであと少しである。エレインに説明していないが、同じ番号の者とペアでの試験だ。
残念ながらアリーとエレインはペアではない。
向こうから王女の声が聞こえてくる。
まだ言い訳中か。アリーは嘆息した。ここまで来るといっそ見苦しい。
「寝言は寝ていってくれないかな」
薄笑いが浮かんでいる。
と。
「同意するよ。ほんとに王女か?」
「みゃい!?」
突然の声にアリーの声は引っくり返った。
思わずよろめくアリーを、がっしりした腕が支える。が、アリーを中途半端に煽ることとなり、結局は床に崩れ落ちた。
「わっ、ごめんよ」
申し訳なさそうな声にアリーは顔を伏せて首を振った。
「......私が悪いの」
「お友だちは?」
言われて気付いた。エレインがいない。
いつも度々唐突にいなくなるので、それだろう。今回は王女の援護にいったのだろうが。
「たぶん王女様のところ」
小さな声で告げると、相手は渋い顔になった。
「やっばりか...」
アリーは不思議そうに相手を見やる。人見知り絶賛発動中なので、やや上目使いだ。
「王女様が嫌いなの?」
「王女自体は嫌いじゃない。だがあの態度はいけ好かん」
「.........」
(どこにもいるよね、そういう人)
納得だ。アリーは黙り込んだ。
沈黙が落ちる。耐えかねたように相手は口を開いた。
「さっきはぶつかって悪かった。俺はジェイラルド・シェル・ライディンという」
「ライディン?」
アリーが聞き返すと、彼は顔をしかめていった。
「その通り」
ライディンといえば、王家に並ぶ権力を持っている家だ。顔をしかめていることからあまり家に良い思いをしていないのだろう。と、ベルが鳴った。12番の人ー。間抜けた声が響く。
「私だ」
「俺だ」
アリーが呟いて立ち上がった横で、彼も立ち上がった。
お互い、奇妙な顔で向かい合う。アリーは飛び退いて、小さな声で言った。
「ま、間違ってたらごめんなさい...12番の方...?」
「あ、ええ。12だな」
アリーは真っ青になっている。
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいません」
「お、落ち着いて」
「相手が私でごめんなさいー!!!」
「いいから落ち着いて。俺の目を見て」
12番の人ー。ともう一度声があげられ、やや焦ったように彼はアリーの腕を掴んだ。
「人見知りなんだか知らないが、俺は相手が君でよかったと思ってる。いくよ」
アリーは顔を真っ赤にして黙り込んだ。ジェイラルドはそんなアリーの事など知ったことではないように優しくてを引いて演習室へ走り出した。
(だから私はーッ)
言葉を他人に向けて発するのにこれほど苦労することを、これほど悔やんだことは今だかつて無かった。
アリーは何を謝っていたのでしょうね




