入学直後 その三
暇つぶしに読んでくださいね☆
ブクマ、有難う御座います
2000字程度で投稿していく予定です。
窓の外を白い鳥が三羽飛んでいった。
真っ青な空には、たった一つの太陽がのんきに浮かんでいる。所々に浮かぶ綿雲は空ののんきさを際立たせているようにも、アリーにはそう見えた。
現実逃避である。
「どうするんだよコレ…」
「………」
アリーの隣の男子生徒は、途方にくれたようにも、いらいらしているようにも見える不思議な表情を浮かべていた。
「頼むからなんかいってくれよ…」
「………」
「解決策とか無いよな…」
「ないね」
「そこだけ即答かよ。勘弁してくれ…」
さらに落ち込んでいる男子生徒をアリーは冷静な目でじっと見つめていた。
事の発端はある手違いだった。
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「んじゃ~、演習室に移動しようか」
教師は肩をすくめていった。
王女との口論は無かったかのように振舞う教師によって、教室の中の居心地の悪さは霧散し、元の生徒たちが試験にそわそわするような、そんな空気が戻ってきた。
生徒たちは、一番先に教室を出て行った教師の後をめいめいに歩いて出て行った。
アリーはいまだに王女を盗撮しているエレインを突っついて、囁いた。
「エレイン、そろそろ移動しようよ」
「いやよー王女様と一緒に移動するー!」
「いやよーじゃなくて、ほら、王女様ほかの人たちに囲まれちゃってるし」
「知ったことじゃないわ! 私の辞書に不可能の文字は無いの!!」
そういって人垣を掻き分けて王女の下へ少しでも近づこうとするエレイン。
その姿が見えなくなって、初めてアリーは席を立った。
ドン、と背中に衝撃を受ける。
どうやらぶつかってしまったようだった。
「おっと、ごめん」
「…ごめんなさい」
しおらしく誤って、アリーはぶつかった人を見上げた。
背が高い男子生徒だ。
イケメンと称されるようなパーツパーツが整った顔をしている。その顔に浮かぶのは、優しい人なのだろう、心配そうな表情である。
「だいじょうぶ?」
聞いてくる男子生徒に、アリーは頭を下げると、その場をそさくさと立ち去った。
向かう先は演習室だ。
(うーん、イケメンだったなあ。天神様はどうして顔を不公平に御作りになるのかしら?)
決して不信仰というわけではないが、不満の一つや二つぐらい甘んじて受けてくれることを、アリーは天神に望んだ。
総勢2000人入るこの大演習室は、この学校の一番の良いところといえる。
実践から実演まで、幅広く使われ、今回は試験に使われる。
この場合、演習室の小さいほうが大量にあるので、そちらも分けて使われる。
大演習室は待合室として機能するようだ。
そんなことよりアリーは一向に姿を見せない親友が心配だった。生徒はもう整列し始めている。
(あ、壇上に人が立った…)
「よし、では今日の特別教師を紹介する。こちら、フィル先生だ。この方はシェイグ公国の公式官でもある。今回は校長の招きの応じていらしてくださった。失礼の無いように!」
それから教師はチラッと笑みを見せた。
「翻訳官もいらしているから、話すのに支障は無いはずだ。ではフィル先生、こちらへ」
壇上にいた教師が手招きを舌先から歩いてきたのはまだアリーたちと同じくらいの年の男だ。黒髪黒目の美男子である。
公式の服に着せられている感は合ったが、公式の衣装が豪華すぎるのが原因だ。
後ろについているのは、これまた若い男だ。こちらが翻訳士なのだろうか。
いずれにせよ、アリーにはどちらでもいいことであった。
『よし、皆集まったな? では試験を始めるとしようか。
これから配る紙に名前を書いてくれ。それをこの箱の中に提出。』
おそらくシェイグ語であろう言葉をフィン先生は言った。その後から翻訳官が次々と翻訳していく。
アリーは翻訳されなくてもシェイグ語は分かるので、フィンの声にじっくりと聞き入った。ふと視線を感じてフィンから翻訳官に目を移す。
彼の目はまっすぐにアリーを射抜いていた。その目には純粋な嫌気。敵意とも言える。
もちろんアリーにはそんな目で見られる必要性をまったく感じられなかったので無視だ。
が、
『おや、人数が足りていないようだが、シュウキ先生?』
フィンのその言葉にアリーは固まった。
(エレイン一人くらいばれないと思っていたのにどうして…?)
シュウキと呼ばれた、壇上にいた教師――おそらく今日の責任者だ――は、あわてて人数を確認するように各教師に指示を飛ばした。
結構厳粛だった雰囲気は一気に崩れ去った。
声を上げたのは、教室でアリーとぶつかった、男子生徒だ。
「せんせー、王女とその即席取り巻きがいませーん!」
(そういえば…)
そういえば、王女もいないのだった。基本何も考えていないアリーは彼女の存在さえ忘れ去っていたのだった。
エレインはその即席取り巻きのうちの一人なのだろう。言われてみれば、結構な人数がいないのである。
シュウキという教師は、顔面蒼白となって、フィンに謝っている。フィンはさわやかな笑顔で『大丈夫ですから』的なことを言って、翻訳官に翻訳させていた。
しばらくたっても王女も、捜しに行った先生も戻ってこなかったのでフィンは前を向いて微笑んだ。
『しょうがないので試験を始めよう。今いない人には後から説明するから』
シュウキは水晶に向かって何事か話している。連水晶だ。同じ水晶から作られた水晶に映像を飛ばす魔石。かなり珍しく、値の張るものだ。
(またまたたいそうなものを…)
連水晶の先はシュウキより偉い人なのだろう、ぺこぺこと頭を下げている。
アリーはその金の無駄遣いに呆れていたが、やはり、親友が心配なのであった。
(どこにいるのかな?)
アリーは久方ぶりに、親友のことが気にかかっていたのだった。
アリーはサラッサラの黒髪を持っています。いつも無造作にしばっている髪の中に隠れていますが、一房だけ銀の髪の毛が混じっています。
次回も宜しくお願いします!」




