入学直後 その一
有難う御座います。
さくっと行きましょう。
魔神。
それは地底に住むといわれる神であり、万能神の1柱である。
天神。
こちらも万能神であり、魔神の姉であり、妻である。慈愛の母で、天に住んでいるという。
その二柱から我ら人間が生まれ、不完全な体となった。程よいバランスの中で生まれれば、普通の人として生活できるが、どちらかに偏った力を持って生まれれば、魔法法力師となることが運命づけられている。
数千年前、魔神が何を思ったか地上に攻め込んできたことがあったらしい。大量の魔と共に来した神は、人を蹂躙し、世界を無にしていった。今はもう元通りだが、間が通った後は、すべてが黒く、なくなっていたという。
その魔神を倒す為に作られた機関、魔法学校と呼ばれるもの。
そこの出身者の1人が英雄となり、魔神を倒した。
いまなお其の学校は残り続けている。
其の名もトゥール学園、とここに記す。
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ピンク色の花びらが鮮やかに舞っている。
「アリー!」
壮大な雰囲気の学園の前で立ち止まって、アリーことアリアン・ロウ・シャリーンはパンの耳を食べきってしまった。もそもそと咀嚼するうちに、だんだん目が覚めてくるようだ。
アリーは声がするほうを振り向いた。向こうから手を振りながら満面の笑みを浮かべている少女が走っくる。大きくてパッチリした青い瞳に、豊かなホワイトブロンドの長い髪。制服の裾が翻って白い足がのぞく。百人中百人が美人と認めるであろうその美貌の少女は、何を隠そうアリーの親友だ。
彼女も笑みを浮かべて大きく手を振った。
「エレイン!」
追いついて大きく息をついたエレインは、かわいらしく頬を膨らませてアリーの肩を突いた。
「んもー。エリーだって言ってるじゃん」
「えー。エリーよりエレインのほうが貴方にあっていると思うよ」
「そっ、そんなこと真顔で言わないの!」
いじける姿もまたかわいらしい。アリーはエレインの頬を突いて中の空気を吐き出させるとニヤッとした。
と、エレインがあわてて時計を見上げて叫んだ。
「いこう、始業が始まるわ!」
「まだ20分もある!」
「馬鹿言わないで。あと20分しかないのよ!」
「かといって走る必要もないでしょうがっ」
「間に合うかどうか走ってから考えようね!」
エレインはアリーの手を引っ張って走り出した。
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トゥール学園はシュレイン王国最大の学び舎である。
それは門からして分かることで、
「すごっ、この門象牙だよ! 私象牙なんてはじめてみた!」
「多少魔力もこめてあるみたいよ。内側に鐘があって、一定時間で鳴るらしいわ」
「えっと…先人はどうしてそんなものを作ったんだろうね」
「知らないわよ。むしろ私たちが遅れてももう知らないわよ」
「ま、まあ、そんなに投げやりにならないでもいいんじゃないかな。あ、ほら、あそこらへんに人がまだいっぱい……」
『何でじゃぁぁぁぁぁ!!!!』
「いっぱい吼えてるわね」
「どうしたんだろう」
たむろっているものは皆、制服を着ていることからしてどうやら生徒であるようだった。
そちらに向かって歩みだそうとしたアリーを、にっこり笑ってエレインが引き止める。
「いきましょ? 今日は入学試験があるのよ? 大事な、大事なクラスも決まるの。事前勉強は必要事項よ?」
「ひっ……」
アリーは知っている。
エレインを怒らせると必死(物理)であることを。それは彼女の幼馴染なら誰でも分かることであった。
「い、いきます」
「よろしい」
アリーが恐る恐る頷くと、ようやくエレインは生来の柔らかな笑みを浮かべた。
玄関口を目指してまた走り出した二人の後ろから、吼える生徒たちの、聞いていてものすごく悲痛になる声が追いかけてくる。
『くそう、何でじゃぁぁぁ!! 何で今日に限って一日中座学なんだよぉぉぉぉ
!!! 新入生の晴れ姿がぁぁぁぁぁぁ!!!』
『コレは呪いだ、先生たちによる呪いなんだよ!』
『呪いだと!? いや、俺の考えは違うぞ! コレは復讐だ、復讐なんだぁぁ!
!』
『馬鹿な、呪いと復讐の何が違うってんだよ!』
『大有りだよ馬鹿野郎』
『何ぃ、馬鹿だと!? 馬鹿といったほうが馬鹿なんだよ!』
『お前も今馬鹿って言ったし!』
『うぉぉぉぉぉ!!! 今日だけは、今日だけは座学はいやだぁぁぁぁ!!』
(先輩方…だよね。そうだよね、制服のネクタイが青いし)
アリーは至極全うなことを思った。
(うーん。何だかとっても阿呆らしく見えるなあ)
「アリー、馬鹿がうつるわ。早く行きましょ」
「エレイン、馬鹿は病気じゃないよ…」
二人は仲良くそろって昇降口へと入っていった。
昇降口を抜けると、正面に窓口のようなところがある。
そこで出席を取り、中に入るのだ。出入り口はここと、職員玄関しかない。
これは不審者対策であり、効率のアップも図ることができるものだ。
当然窓口の人はそれ相応の人でないとならない。何せ、有事には事の対処に当たらなければならないのであるのだから。
「アリアン・ロウ・シャリーンです」
「エレイン・ウィク・フィンガットでぃす」
「む、一年坊主か」
「坊主じゃなくて娘ですけどね~」
「ちょ、アリー!」
目つきが悪すぎて、こちらをガンつけてくるようにも見える受付士にアリーは悠々と口答えする。エレインがあわてているが知ったこっちゃないというのがアリーの本心だ。
受付士は、しばらく目を細めていたが、ふっとほほを緩めた。
「殊勝なやつだ」
「それ意味分かってていってます?」
「いんや知らん」
「そうですか。じゃ、失礼しますね」
「アリー~」
アリーはエレインを置いててけてけと一人で歩いていってしまった。その後をチョコチョコとエレインが追っていく。
受付士は、緩んだ顔のまま左手でつるりと顔面をなでた。
現れたのは元のぶっちょうずらだ。
「面白い」
ちっとも面白そうでない顔で、ボソッと彼は呟いた。
次話で、戦闘シーンの予定です。
お楽しみに!




