自己紹介とは果たして何を目的とするのでしょうか。新しい仲間?何それ美味しいの?
何だか手違いで途中で投稿してしまったので、改めました
始業ベルが鳴った今、教卓に立った教師にHクラス全員の視線が集まっていた。
赤毛の爽やかそうな好青年である。顔立ちも整っていて、ぶっちゃけていってしまえば、女子の人気を集める顔であった。目が細く、糸目といって良いようなものである。それもまあ彼の個性の一つであるようにアリーには見受けられた。
彼は細い目をさらに細めて底の知れない笑みを浮かべた。
「皆さん、始めまして。Hクラスの担任になりました、ジレウといいます。今回のHクラスには非常におもし…優秀そうな」
今はじめてクラス中の心の声がそろった。
『ちょ、今面白そうって言った!? 言いかけた!?』
ジレウは知ってか知らずか――本人は唯底の見えない笑いを保っているだけであったが――話を続けている。
「――人たちが結構このクラスに放り込まれているようで、」
『放り込まれて!?』
アリーの頬杖が外れ、ずるっと滑った。
(す、すごい事をしれっと言う先生だなぁ)
少しだけ、好感を持ったアリーだった。類友になれそうだ。
「――で、私としては、教えがいがあってとてもうれしく思っていますよ。…といっても私の担当は、法力と精霊術と霊媒だけですが、今日から宜しくお願いします」
お願いしまーすと、各机から声が上がった。大方男子のみの声であったがジレウは満足そうに頷いた。
「ありがとうございます」
ジレウは微笑んだ。
「皆さんも恒例の自己紹介ですが…」
******
ジレウの指示で一人ずつ席を立って黒板の前まで移動し、全員の前で自己紹介することとなった。
アリーは一番最初だったので、ぱっぱと終わらせようと席を立って黒板の元まで歩いた。
一度教室を見渡すと言う。
「こんにちは、アリアン・ロウ・シャリーンです。趣味は読書で、この学園では良い図書館が整備されていると聞いています。楽しみにしています。宜しくお願いします☆」
ちなみに超いい笑顔で言うといい。ソースはエレイン。
好感度が上がる。
そこに困惑したような顔でジレウが口を挟んできた。
「ええと…君、人見知りだって聞いていたけど」
なるほど、教師らしく(教師だが)一定数は調べてきているらしい。
アリーの視界の端でHクラスには配属されてしまったジェイラルドが激しく頷いているのが見えた。
「振りです。素はこっちなので」
「…そうか、なるほど、君も一筋縄では行かない人種なんだね」
「いいえ、その発想はどうかと思います。思ったことは秘めてこそ良いものですよ?」
「よく分かった。面白そうだね」
ジレウはそういって席へ戻るように指をさして示した。
アリーは肩をすくめて戻っていった。
その後、エレインやらジェイラルドやらが自己紹介をし、特筆しなければならぬだろう王女も何事も無く、つつがなく自己紹介を終わらせた。
そうやっているうちに、時間は過ぎてゆき、いよいよ最後の人となった。
このころにはクラスの雰囲気もだいぶ柔らかなものになっており、野次が飛ぶこともしばしばだったが、最後の女子生徒が黒板の前に立ったときは教室中がしん、と静まり返った。
「イリィム・シュレンガット・ウィルです」
その女子生徒は、まっすぐにアリーを見てわらった。
アリーの目が大きく見開かれた。
「リィ…」
そのとたん女子生徒の視線は、嘘のように、すいっと逸れていった。
彼女はどこにも気負ったものの無い晴れやかな表情であったが、どこか近寄りがたいような、そんな雰囲気を持つ少女だった。彼女は『休め』の姿勢で自分を紹介した。
「私は中等部からの上がり組みの中の一人です。AクラスからHクラスまでで順位を決める制度は高等部からなので楽しみにしていました」
「では、Hクラスは本意ではなかったかな?」
「いえ、ジレウ先生。これは私が望んだもの…というかそうなる運命だったように思われます」
まるで作文のような言い草のイリィムに、ジレウは苦笑した。
「驚きですね、しっかりした考えを持っているようです。例えば、どんなことを習いたいですか?」
イリィムは極めて簡潔に答えた。
「法力と、霊媒を中心に学びたいです」
そうですか、と糸目の教師は肩をすくめた。
「楽しんでくださいね」
――こうして、この時間は終わった。
******
アリーは本当に困っていた。
「アリアンさんはリョウン州から来たのよね? どんなところなの?」
「どうして今まで人見知りの振りをしてきたの? ってかどうしてそんなにうまく皮を被ってこられたのかしら!?」
「エレインさんとはどんな関係!?」
――休み時間になっていち早く友達を作りたい子達がいい獲物と見てアリーとエレインに群がってきたのであった。アリーはイリィムのほうにいって話を聞きたかったのだか、どうやら断念せざるを得ないようだった。
ある程度はクラスメイトのことを調べてきたのであろう、情報の上から話を聞きたがっている。…というか最後の質問の真意はは何なのか。何を期待して聞いているのだろうか。
「エ、エレイン、タスケテ~」
アリーはエレインに助けを求めた。が、エレインは鼻で笑って取り合わなかった。
「自業自得ね~♪」
「ちょ、まてい、そこ。何で私のせいになっている!?」
「うふふー言っていいのかなー☆」
残念ながら、ありーの身に覚えは無い。
エレインはこそっと囁いた。
「情報を上塗りしたのはアリーでしょう? 見ず知らずのところにしてしっぱーい(棒読み)」
アリーは震え上がった。
「ムリムリムリムリ、私絶対言質とられる!」
はあっとエレインはため息をついた。
頭を抱えてうずくまるアリーと、呆れながらも愛おしさを隠しきれない様子で嗤うエレインに、エルティナという明るい茶髪の生徒が目を輝かせて、どこか食い気味に言った。
「こここ…これはまさか!幼馴染というものですの!?」
「えっ…エルティナさんはそういうキャラなの…?」
生暖かい目で苦々しく笑うアリーの腕に何かがするりと巻きついた。
――ちょちょちょ、エレイン!?
エルティナはきゃっ、と黄色い声を上げた。
エレインはにっこりして言う。
「そおよ。6歳からずーっと一緒」
ハアハア、とエルティナは荒く息をついた。
「これは…ネタになるわね…ッ」
(こわっ)
エレインは高笑いし、アリーが逃げ腰になった。
「エレインさん、貴女、話が分かる人のようね!」
「エレインで良いわ! こちらこそ!」
がしっと手を握り合う2人。
ギャラリーは沈黙したままだった。




