第8話 幼馴染に聞いてみる。
「それじゃあ、私はここだから」
「ああ、また明日」
その後、電車に乗っていると幸林の降りる駅になったので手を触り合ってお別れをする。俺はため息を付きながら座席に座る。どうやら幸林と俺は以前知り合いだったらしく幸林にしてみれば俺に恩があるらしい。
「全く憶えがないんだよなあ」
窓の外を眺めながら考えるが全く浮かばない。そんな事を考えていたら自分の最寄り駅に着いていたので慌てて降りる。
自宅まで歩いている最中、見覚えのある背中が見えた。トレードマークのポニーテールに加え、あの制服は確か松永女子高校だったか。
「雛森、よっす」
「あ、蒼空だ。こんな時間に会うなんて珍しいね」
俺は幼馴染の雛森小春に声をかける。家が近く小さい頃からの知り合いである。松永女子という女子高に通っている。
「ふっ、勉強をしていたらこんな時間にな」
「え〜、テスト期間でもあるまいしそんなキャラだっけ?」
雛森は疑いの目を向ける。流石幼馴染、俺の性格などお見通しという事か。
「……、友達に頭の良い奴がいてな。勉強を教えてくれるって言うんで教わってたんだ」
「へ〜、それってもしかして彼女?」
俺は「うぐっ」とうめき声を出してしまう。何で一緒にいたのが女子だと分かった?いや、当てずっぽうを言ってるだけか。
「え、その反応。本当に彼女なの?」
「違う違う、友達だよ」
正確に言えば友達かどうかも怪しいがまあここまで一緒にいたら友達だって言ってもいいだろ。
「でもその反応、女子でしょ?」
「まあな……」
俺がそう答えると雛森は「きゃ〜」と黄色い声をあげる。全く女子ってすぐ恋バナに結びつけるよな。
「で、何処まで進んでるの?」
「話聞いてたか?友達なんだが」
「聞いてるよ。だから何処まで進んでいるか聞いてるんだけど」
いや、こいつ俺の意図ガン無視するんだけど。友達だって言ってるんだけども。
「俺にはそんな気は無いし、彼女にも無いだろ」
「え〜、好意が無いのに異性に勉強を教えるかな〜」
いや、どうやら幸林は俺に借りがあるみたいだ。彼女からしたらその借りを返してるに過ぎない。あ、そういえば交友関係が広い雛森なら幸林の事知ってるかも。
「まあ、それは良いから。幸林瑠奈って知ってるか?」
「え〜、その子の名前?ん、何か聞いたことある名前だね……」
流石、雛森。どうやら知ってる可能性が出てきた。俺が全く思い出せない以上、調べるしかないのだ。
「何か、幼稚園にそんな名前の子がいたような……」
「本当か?」
俺と幸林の駅の距離は三駅だ。同じ幼稚園に通っていたのか?いや、引っ越した可能性もあるか。
「う〜ん、私も幼稚園の頃の記憶なんてあんまり無いから自信は無いけど」
「そりゃそうだ。俺だって仲良かった奴以外全く憶えてない」
でも幼稚園なら納得がいく。俺が覚えてないのも無理無い。しかし幸林からしたら強烈な思い出だったのかもしれん。
「でもどうしてそんな事気になるの?」
「何か俺に借りがあるらしいんだが、俺が全く憶えて無くて……」
「え〜、女子との思い出忘れちゃうなんて最低〜」
「その頃、園児だぞ。無茶言うな」
むしろそんな事を憶えてる幸林の方が凄いだけだろ。いや幼稚園って確定したわけじゃないけど。
「まあ家帰ったら卒園のアルバムあるんじゃない?」
「確かに当時の顔見れば思い出すかも」
流石、雛森冴えてるな。卒園アルバムを見れば何か手掛かりがあるかもしれない。
「雛森、ありがとな。じゃっ!!」
「は、はあ?言うだけ言って帰る気?」
俺が一人で帰ろうとしたら雛森が頬を膨らませて俺を止める。何でだよ。
「女子一人で帰らせる気?送っていってよ」
「は?お前さっき一人で帰ってたじゃん」
雛森は何故か俺の事を睨む。いや、なんでやねん。思わず関西弁のツッコミになっちゃったよ。
「私のおかげで分かったんでしょ。ほら送りなさい」
「へいへい……」
何故か俺達は二人並んで歩き始める。そういえばこうやって一緒に帰るのって凄い久しぶりな気がするな。
「ふふ、こうやって一緒に帰るの小学生以来かな?」
「あ、ああ、そうかも」
どうやら雛森も同じような事を考えていたみたいだ。
「私が一緒に帰ろうって誘っても断ったの恨んでるから」
「何でそんな事憶えてるんだよ……」
中学に上がってから何か女子と一緒に帰るっていうのが恥ずかしくなったんだよな。
「ふうん、それで今日は女子と二人で勉強会?良いご身分だね?」
「何で怒ってるんだよ……」
何故か雛森は俺の尻を思い切り蹴り出していた。
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