第5話 幸林の強さ
激動の昼休みを終えて教室へと戻ってきた。席に座った瞬間、俺の眼の前に丸山が立っている。
「ふふ、お二人でランデブーですか?」
「……、そんなんじゃない」
そうか、俺達が二人で教室を出たのはクラスの奴らに見られているのか。周囲を見渡すと俺の事を見ている生徒が何人かいる。まあ無視無視。
「え〜、私も連れてってくれれば良かったのに〜」
「あ〜、もう授業始まるぞ」
「ちぇっ」
丸山は渋々席に戻る。まあ俺の隣だからまだニヤニヤしているんだが。そして幸林の方を見るとこちらを凝視している。いや、怖いわ。俺は二人共無視して先生が来るまで机にうつ伏せた。
そして時は経ち、放課後。
「鷹司君、帰りましょう」
幸林が俺の席まで来て一緒に帰ろうと誘ってくる。いや、クラスでそんな目立つ行動しないでくれ。おかげで隣の丸山が「ひゃ〜」と言って口を抑えてる。うざっ。
「とうとう、そういう関係に」
とうとうも何も俺達が話し始めたのは昨日からだ。いや、幸林的には違うみたいなんだけど。
「あ〜、分かった。後から行くから先行っててくれ」
校内を俺達二人で歩いていると目立ちそうだ。まだ電車で偶々鉢合わせましたみたいな感じにするほうが良いだろ。
「そう。早く来てね」
幸林はそのまま教室を出ていく。
「ね〜!!二人って本当に付き合ってるの?」
案の定、丸山が突っかかってくる。仕方無いとはいえ面倒だな。
「いや、友達になっただけだ。お前が思ってるような事は何もない」
「え〜、それだけ〜?一緒にご飯食べて、一緒に帰るのに?」
まあそう言われると付き合ってるように見えても仕方無いのかもしれん。だが本当に付き合っている訳では無い。
「はあ、幸林が俺の事を好きになると思うか?俺だぞ?」
「う〜ん。確かに。イケメンでもないしスポーツがすごい訳でもないもんね」
こいつ、俺の意見に賛同しているのは良いけど失礼なこと行ってない?俺怒っていいか?
「……そうだろう?だから俺達は付き合ってなどいないんだ」
「……、本当かなあ」
「てかそろそろ部活行かなくて良いのか?」
「あっ、やばい」
丸山は荷物を持って走って教室を出ていった。まあ取り敢えず追求が終わって良かった。そして俺も教室を出ると幸林が扉の直ぐ側で立っていた。
「えっ、何でここで待ってるんだ?」
「?一緒に帰るんでしょ?」
そういえば、俺駅で待ってくれと頼んで無かったか。これは俺が悪いな。
「悪い、幸林は目立つから駅に先行ってて欲しかったんだ」
「意味が分からない。一緒に帰るのに関係あるの?」
そりゃ幸林は気にしないかもしれないけどさ。俺なんかが幸林みたいな美人と一緒に歩くと目立つんだよと言いたいがそんな口答え許されるのか。
「早く行きましょ」
幸林は俺の手を取って歩く。まるで俺と幸林が手を繋いでいるような形になっている。
「ゆ、幸林、手繋いでるみたいになってるって!!」
「?」
幸林は「それが何か?」と言わんばかりに首を傾げている。ええい、お前は人の心が分からないアンドロイドか!!
「だ、だから普通、男女で手を繋がないだろって」
「そうなの?私気にしないけど」
俺は唖然とする。幸林は他の人にどう見られているのかなどというのをまるで気にしないのだ。彼女からすればどうでも良いことなのだろう。
「俺が気にするから。な?」
「そう……」
幸林は渋々、手を離す。全く心臓に悪いな。幸林の悲しそうな顔をしているのを見ると何か悪いことをしたと感じてしまう。
「はあ、分かった。手は繋がないが一緒に帰るか」
「うんっ」
幸林はぱあっと笑顔になった。幸林ってそんな顔で笑うのか。クラスではいつも仏頂面で一人でいることが多かった様に思えたから驚いた。
「行きましょ」
「あ、ああ」
俺は呆気にとられていたので一瞬反応が遅れてしまった。慌てて幸林の後ろに着いていく。本当に幸林が俺の何処を気に入ったというのだろうか、そんな事を考えながら。
そうして下駄箱で靴に履き替えて外へ出る。幸林は目立つから隣にいる俺もチラチラ見られている気がする。あんな美人の隣にいる男のレベルはどんなものかと確認されているのだろう。気が重い。
「鷹司君」
「あ、ああ、どうした?」
下を向いて歩いていたからか、幸林が話しかけていたのが気付かなかった。俺の正面に立って心配そうに俺の顔を覗いたていた。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫。行こうか」
俺も彼女みたいに強ければ良いのにとそう思った。
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