第2話 この状況は何だ!?
どうすれば良いんだろうか。俺の席の隣に座っている。何なら肩がぶつかっている。幸林がここに座りたいというのなら俺移動すればいい話なのか?そう思い、立ち上がろうとする。
「何処行くの?」
「いや、何でも無いです」
幸林さんに問いただされたのですぐ座り直す。何でだ?俺達、話した事だってほとんど無いだろ。事務的な事で一言、二言くらいはあるかもしれないけど。
「あ、あのさ……」
「何?」
俺が話しかけると幸林は黒髪を靡かせながら、こちらを向いて俺の続きの言葉を待つ。これ俺が何で隣に座ったのか聞いても良いもんなんだろうか。
「い、一緒の電車になったの初めてだよな?」
「ああ、私、下校時間になったら直ぐ帰るから」
何か怖いので無難な話をすることにした。なるほど、俺は普段ならのんびり帰るから同じ電車にならなかったのか。
「それに行きの電車も早いの乗ってるの」
「ああ、そうなんだ。俺は……」
「朝礼の時間ギリギリだよね。知ってる」
ぞくっと寒気がした。何でそんな事まで知ってるんだ。
「な、なんで」
「?クラスメイトなんだから当然じゃない?」
いや、クラスメイトだからってそんな事憶えてないぞ。現に隣の席の丸山だっていつ来て、いつ帰るかなんて把握していない。
「そ、そっかあ……」
俺の顔は恐らく精一杯の苦笑いをしていることだろう。誰か助けてくれ。
「お、俺達ってあんまり話したこと無かったよな?」
「それがどうかした?」
それがどうかしただと!?いや、この距離感とか色々おかしくないって話なんだけども。
「あと、そもそも幸林って男子とあんまり話してるところ見たこと無いし」
「ああ……、私に話しかけてくる男子って何か嫌らしい目で見てくるから気持ち悪くて」
「ああ、そうなんだ……」
幸林は心底嫌そうな顔でそう語る。幸林程の美人なら色んな人からそういう目で見られるのかな。まあ、俺がそういう目で見てないって事でこうして隣にいても嫌じゃないって事なのか?とはいえ俺だって健全な男子高校生だから信頼されても困るけどな。
「さっきから質問ばかりね」
「!!悪い、もう黙るよ」
「いや、黙る必要はないけど。代わりに私からも聞いても良い?」
「あ、ああ」
幸林は髪をかきあげて耳にかける。その様子を見てほんの一瞬、見とれてしまう。なるほど男子共はこれにやられるわけか。
「丸山さんと仲良いわよね?」
「えっ、まあ隣の席だし」
丸山はそもそも明るくてクラスの殆どの人と話している気がするから俺だけ仲が良いとかでは無い気がするんだよな。
「あの女狐……」
「えっ、何か言ったか?」
幸林が俺の話を聞いた後、一瞬怖い顔をして何かを呟いた。俺に聞かせる気がないのかとても小さな声だったから聞き取れなかった。
「何でもない」
「そ、そうか?」
まあ本人がそう言うならあんまり追求しない方が良いのか。ていうか俺が気になって話しかけちゃってるの迷惑かもしれないから話すの止めたほうがいいか。俺は幸林の方を見るのを止めて前を向いて目を瞑る。これで向こうも俺に話しかけてこようとは思わないだろ。
「……」
「ねえ」
俺の思惑は全く上手くいかず、幸林に話しかけられる。俺は諦めて目を開けて再び幸林に向き直る。
「私と雑談でもしましょう」
「さっきからしてないか?」
「さっきのは質疑応答っていうのよ」
何か幸林って俺が想像していたより変な女だということが分かった。それ以外何もわからないけど。
「雑談だって何を話すんだ……」
「そうね。例えば、恋バナとか?」
恋バナがしたいみたいだから乗ってやるか。俺は特にないから幸林から話してもらおうっと。
「恋バナか。幸林って好きな男子でもいるのか?」
「……教えない」
「はあ!?」
え、君から恋バナしたいって言ってきたんだよね。何でそうなるんだ。
「逆に鷹司君の好きな人を教えて欲しい」
「ええ?俺は好きな人なんていないよ。女子の知り合い自体少ないし」
俺がそう答えると幸林はずーんと下を向いてしまった。いや、さっきもだけど恋バナしたいって言ったの幸林だからな。
すると電車が止まった。駅に着いたのか俺の最寄りから三駅くらいか。幸林は外を見て立ち上がった。幸林の最寄りか。
「じゃあ、私ここだから」
「おお、じゃあな」
幸林はドアの前で立ち止まってくるっとこちらに振り返る。
「また明日も一緒に帰ろうね」
「はい!?」
俺が驚いた瞬間、幸林は外を出てしまった。ここまで怒涛の流れだったが本当になんだったんだ。
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