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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第3章 王立フェブリア学院 ~ 2年生編 ~
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第41話 学院長と対談

――王立フェブリア学院


 生徒達が登校している中で、1人学院長室に向かう者がいた。足取りは軽くとても緊張している様にも見えない。


 普通なら学院のトップでもある人の部屋に、軽々しくは向かえない上に、とても緊張するものである。


 しかしながらこの者は、何とも思わずいつも通りの雰囲気で、気軽に向かい訪問するのだった。


(コンコン)


「どうぞ」


 ガチャリとドアを開け、中へと入るのはケビンであった。


「お久しぶりです、学院長。今日は伝えたい事があったので来ました」


 予想もしない訪問者に少し動揺するのだが、そこは年長者の功か、表には出さず努めて冷静に言葉を返した。


「お久しぶりですね、ケビン君。伝えたい事とは何でしょうか?」


「ここ最近あった事件の黒幕が分かりましたので、お伝えしようと思いまして」


 さすがに今度は動揺を隠せなかった。生徒の行方や犯人探しを、学院も独自に動いて探っていたからだ。


「私が思うに、ケビン君は慈善で動くような子じゃないと、思っていたのだけど……」


「その通りですよ。火の粉がかからない限りは、動くことはなかったんですけどね」


「その言い方だと、巻き込まれたのかしら?」


「ええ、どっぷりと。自宅への帰り道の際、つけられていたのは知っていましたが、実力行使に出られて襲われたんですよ。返り討ちにしましたけど。まぁ、外出禁止令の最中に敷地外へ出る子供なんて、自分くらいしかいなかったから、仕方ないと言えばそれまでなんですけど」


 学院長の記憶で、ここ最近あった事件で思い当たるのは、路地裏での大量殺人だった。


「もしかして、あえて誘いに乗りませんでしたか? ここ最近あった出来事で、大きなものと言えば路地裏での出来事です」


「それは違いますよ。かなり鬱陶しかったので、こっちから誘ってみたんですよ。馬鹿なくらいに釣れましたけどね。普通に考えて、行方不明事件が起きてるのに、態々路地裏に向かう子供なんていないでしょうに。考え足らずな者たちでしたね」


 学院長は驚愕した。年端も行かない子供が大人相手に戦って、全て殺しているのだ。普通なら忌避感を持ち、殺すことまでは出来ないからだ。


「その件は聞かなかった事にしますね。事情聴取なんてつまらないものは受けたくないでしょう? それで、次は黒幕を教えてくれるのですか?」


「それもありますが、少し違いますね。襲われた事が母にバレてしまいまして、関わった者は全員殺すと意気込んでいたものですから、少し待ってもらうように言ったんですよ。対応次第で全員殺す事になりますけど。ちなみに母は王城に行ってますよ」


「なっ!」


 更なる事実を知り、今日一番の動揺を見せてしまった。一番怒らせてはいけない相手が動き出したのだ。


 これはもう、行き着く所まで行き着いた事になる。知りませんでしたでは済まされない所まで来ていた。現に本人は王城へ行っているのだ。


「最終的には全員死んでもらう事にはなるんですけど、そこには母が殺すか法で処刑されるかの違いしかありませんが、出来れば処刑で済ませたいかなと思いまして。ちなみに誘拐の実行犯は殺す事になっています。母もそこだけは譲れないみたいですね。そいつがいなければ自分が襲われる事もなかったですから」


「処刑で済ませたいという事は、ここに来た本当の理由は何かしら? ただ、犯人を教えてくれるだけではないのでしょう?」


「そうですね。その黒幕の内の1人がここの教師だったんですよ」


「そ、それは本当なのですか!?」


 学院長からしたら、予想の斜め上の情報が齎された。栄えある学院の教師に裏切り者がいるとは、微塵も考えていなかったのだ。


「やはり知らなかったようですね。教師の見回りが行われている中で、難なく誘拐されたのだから、その時点で予想はしていたんですけど……学院長はおっちょこちょいですね」


「そんな……我が学院の教師が関わっていたなんて……」


 自分がおっちょこちょいと言われた事よりも、身内が関わっていた事の方がショックであったらしい。


「という事で、落ち込んでいるところ申し訳ないのですが、その教師を逃げないように拘束して、国に引き渡して欲しいのです。そのお願いの為に訪問したわけですから。もし取り逃がしたりしたら、こちらで処理しますので、ご了承ください」


「……ちなみにその教師は誰なのですか?」


「タナックス先生ですよ」


(そんな!! 同僚や生徒からも人受けの良い人気の先生なのに。何かの間違いでは!?)


「吃驚されているようですね。パッと見、悪い人には見えませんでしたからね」


「彼の担当する学年は違うのに、知っているのですか?」


「登校がてらチョロっと顔を拝みに行きましたから。逃げられてもすぐに探しだせるようにね」


「そうですか……さすがに表立って動いては、学院に混乱を招きますので、秘密裏に拘束する形にしますよ?」


「手段はそちらに任せますよ。後で国から使者が来ると思うので、そこで引き渡せば良いと思いますし」


「子供たちの誘拐事件とはいえ、国が動くほどですか……」


「黒幕の1人が貴族だからですね、仕方ないですよ。だから、母が王城へ行ったんですよ」


(!!)


「次から次へとよくもまぁ、驚かせてくれるものです。ところで、攫われた生徒達はどうなったか知りませんか? あの子たちが心配なのですが……中にはちょっとした面識のある子もいますし」


「へぇ、知り合いの子でも攫われたのですか?」


「入学試験の時に知り合いましてね。意欲のある子供だったから覚えていたんですよ」


 その時を思い出したのか、学院長の顔が先程よりも少し柔らかくなった。


「これはあくまで予想でしかないのですが、まだ売り飛ばされたりはしていないと思いますよ。この王都の何処かにはいるでしょうね」


「ケビン君が言うのでしたら、安心ですね」


「それは何故です?」


「“まだ売り飛ばされてはいない”という事は、ある程度事情を知っていそうですし。“王都の何処かにはいる”って事は、もう予想はついているのでしょう?」


「いつもそのくらい賢明であれば、内部の裏切り者にも気付けたかも知れませんね。」


「ふふっ、一本取ったつもりが取られてしまいましたね」


「ぶっちゃけて言うと、誘拐の実行犯が賞金首なんですよ。そんな奴が街中にいるってことは、人目につかない場所に隠れ住むしかありません。本人からしたら、衛兵に対して灯台もと暗しで()()()なんでしょうけど、もうバレている以上、こっちからしたら居場所を特定しやすくて、()()()なんですけどね。そこに生徒たちもいると思いますよ」


「出来れば生徒たちを助けに行きたいのですが、ケビン君からしたら足手纏いになりそうですから、行かない方が無難ですね。だから、生徒たちの事を任せてもよろしいですか? 私の顔に免じて助け出して欲しいのです」


「わかりました。1つ貸しにしときますよ」


「高くつきそうですね」


「その時の気分によりますね。では、教師の方はお願いしますね」


「わかりました。すぐに取り掛からせるわね」


「では、失礼しました」


 学院長室からケビンが出て行くと、すぐに手元にある通信機である教師を呼び出すのだった。


「ジュディ先生、至急学院長室まで来て下さい。最優先事項です」


ここから上、前ページ後半丸々同じです。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 それから伯爵と教師は直ぐに拘束され牢獄へ入り、残りは賞金首の男とローブの男のみとなった。


 事情聴取は騎士たちが行い、残りの犯人を逃さない為にも情報統制が敷かれ、外部に漏れないよう細心の注意が払われた。


 そんな中、俺は賞金首の男を懲らしめるために、アジトへと向かった。


 アジトの場所は、スラム街を探索していたら難なく見つかり、見た目は普通の倉庫であった。


「ケビン君の探知能力は凄いですわね。あっという間にアジトが見つかりましたわ」


「さすが私のケビンね。お姉ちゃんの自慢の弟よ!」


「……」


 皆さんお気づきだろうか? ここに居るはずのない人が、何故か参加しているのだ。母さんと2人で隠密行動のはずが、妙にテンションの高い人とそのストッパー役の人が紛れているのだ。


 何故こうなった!!



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



――時は遡り


 学院長との話が終わり、ブラブラしながら教室に戻る途中、正門の方から、ガヤガヤと騒ぐ声が聞こえた。


 ふと気になり野次馬根性で向かったら、正門周辺には人集りが出来ていて、ある一点を遠巻きに窺いながら見ていたのだった。


 近くの生徒にとりあえず聞いてみると、何やら有名人的な人がいるらしい……


「なぁ、有名な人って誰が来ているんだ?」


「元Aランク冒険者だとよ。俺も詳しくは知らないが、伝説的な人らしい。武系の連中が騒いでるだけだよ。文系の俺としては、余り興味はないかな」


「ふーん。そうなのか」


 今日は何かのイベントでもあるのだろうか? 元Aランク冒険者を招くなんて、学院も粋な計らいをするもんだ。


 そんな中、野次馬連中の別の所から声が上がった。


「おい、あれ《氷帝》じゃないか? 何で一緒にいるんだ? 模擬戦でもするのか?」


(キュピーン)


『何だこのプレッシャーは!』


『パターン青、姉です!』


『ここは、逃げの一手で。隠蔽フィールド 全開!!』


『逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ』


「ケビーン! いるのはわかってるわよー!」


  ____

『┃第壱話 ┃

 ┃長   ┃

 ┃女、襲来┃』

   ̄ ̄ ̄ ̄


『サナ、意外と器用だな。感心したぞ』


『実は、私のステータスはネタに極振りしてますからね。ドンと来いです!』


『システムにステータスなんてあるのかよ? とりあえずこの場を離れる。目視されていない今ならまだ間に合うはずだ』


 サナとのやり取りをしながら、距離を取りつつも振り返りざまに走り出そうとした瞬間、人とぶつかってしまった。何とも幸先の悪いスタートだった。


「あ、すみませ……ん?」


 目の前には見慣れたあの人の姿があった。


「ケビン、お姉ちゃんが呼んでるわよ? 隠れるなんて相変わらず苦手なのね」


「母さん、何故ここに……?」


「王城での一仕事を終えたから、迎えに来たのよ」


 もしや、正門で騒がれてた元Aランク冒険者って、母さんの事だったのか? 正門までかなり距離があるのに、一瞬でここまで来るとは……本気出した?


「隠蔽スキル全開で使っているのに、ここにいる事がよくわかったね」


「それは愛しの我が子を見つけるくらい、母さんにとっては朝飯前よ」


 もしかして、姉さんの第六感的な探知能力も、母さん譲りだったりするのか? 姉さんはまだ俺を見つけきれていないから、母さん程の探知能力はないけれど、いずれは母さん並になるって事か? 勘弁して欲しい……


 いきなり現れた元Aランク冒険者に、周りの人間は円を描くように離れていく。


(おい……今、“母さん”って言ってたぞ。あいつ、もしかして息子なのか?)


(それに“お姉ちゃんが呼んでる”って言ってたから、《氷帝》の弟でもあるって事だろ?)


(とんでもない家族じゃないか!)


 ヤバい……周りが騒ぎ出した。母さんと話している時点で、周りに認識され隠蔽は解けたし、俺の平穏な学院生活が終わってしまう……


「ケビーン! 何処にいるのよー! 母様もいなくなってしまうし……絶対一緒にいるでしょー!」


 あぁ、終わった……あんだけ騒がれれば隠すのが無理になってしまう。


「シーラったらあんなに騒いで、淑女である自覚がなさすぎるわね」


「ターニャさんがいれば、落ち着くとは思うんだけど。近くにいないのかな?」


「誰なのかしら? その子は」


「姉さんの親友みたいだよ。いつも一緒にいるから」


「ああ、同じ様な年頃の子ならいたわよ。お願いされたから握手したわね」


 握手したのか……ターニャさんって、意外とミーハーなのかな? それよりも、いるなら姉の暴走を止めて欲しい……


「ところでケビン、今からならず者を捜しに行くわよ」


「今から?」


「そうよ。善は急げって言うでしょ?」


 何故日本のことわざが、普通に知られているんだ? 不思議でならない……


「それに、早くしないとお姉ちゃんに見つかるわよ? 静かになったからターニャちゃんが頑張ったのね」


 姉さんに見つかったら、絶対についてくると言い出しそうだ。何としてでも見つかる前に、ここから離れなければ!


「それは困るかな。荒事に姉さんを巻き込むわけにもいかないし」


「苦手なのに優しいのね。だからシーラもあれだけ懐くんでしょうね」


「早く弟離れして欲しいんだけどね……」


「それは絶対にしないわ!」


 いきなりの乱入者に目を向けると、姉さんが仁王立ちしていた。後ろには申し訳なさそうにターニャさんもいる。


「ほら、早くしなかったから見つかったわ。ふふっ」


 さっきのはフラグだったのか……へし折っておけばよかった……


「ケビン、ずっと呼んでたんだから、返事ぐらいしてよ。お姉ちゃん悲しくなる」


 そんな捨てられた子犬のような目で見ないでくれ。見つかりたくないから、返事をしなかったんだ。


「やあ、姉さん。淑女なんだから、人前であんなに大声を出したらダメだよ?」


「ケビンが言うなら、次からは気をつけるわ」


 それでも気をつける程度なのか。止めるとは言わないんだな。


(おいおい、豪華メンバーが1箇所に揃い踏みだぞ!)


(伝説の元Aランク冒険者にその娘である氷帝、氷帝の右腕と呼ばれている人まで……何だこの空間は!)


(更には氷帝の弟までいるんだぞ! 弟がいるなんて知らなかったぞ!)


(そりゃそうだ。Fクラスで入学してきたからな。代表戦で圧倒的な実力差を見せつけ、相手を倒したのは一部じゃ有名な話だ)


(何でそんな奴がFクラスにいるんだよ! 普通はSだろ!)


(ダラダラと学院生活を送るのに、しがらみの少ないFを希望したそうだ。本当は次席と圧倒的な差でかけ離れた、首席入学だったみたいだぞ。前代未聞の成績で、学院長からSクラス入学の推薦をされたみたいだが、本人が断ったらしい)


(学院長からの!? それよりも、その逸話的な内容も内容だが、何でそんなに詳しいんだ?)


(新聞部だからだ)


(新聞部パネェ)


 外野がかなり騒がしくなってきた。一部プライバシー侵害的な詳細な情報が出てきたが、新聞部なら仕方ない。こんなでかい学院なんだし情報網が半端ないんだろう。


 これ以上、晒されるわけにもいかないし、退散した方がいいな。とりあえずは早退になるし、馬車へ向かうとしよう。


「母さん、周りが騒がしくなってきたから、馬車へ向かおう」


「そうねぇ、そうしましょうか」


 2人で歩き出すと、モーゼの様に人混みが割れた。何か凄い演出みたいになっているな。視線はバンバン感じるし、物凄く歩きづらい……


「母さん、ちょっと我慢できそうにないから、先に馬車に向かってもいい?」


「いいわよ。私は昔から慣れてるけど、ケビンは注目されるのは嫌いですしね。馬車で待ってなさい」


「では、お先に」


(おい、弟が消えたぞ! 何処に行ったんだ!)


(これが代表戦で騒がれた実力って事か)


(新聞部の名にかけて、見つけてみせる!)


「ねえ、母様。ケビンとこれから何処かに行くの?」


 後ろからシレッとついてきていたシーラが、疑問を口にする。


「ちょっとしたストレス発散よ」


「私もついて行っていい? 寧ろついて行く!」


「そうねぇ、ケビン次第にはなるかもしれないわよ?」


「ケビンならいいって言うわ!」


「貴女は昔から、ケビンの事になると強引ね」


「だって可愛い弟だもの!」


「仕方ないわね。ケビンに迷惑かけちゃダメよ?」


「大丈夫よ、心配ないわ!」


「ターニャちゃんはどうする? 一緒に来る?」


「私が一緒に行ってもよろしいのでしょうか?」


「ケビンが気に入っているみたいだから大丈夫よ」


「なっ! 聞き捨てならないわ! ターニャ、貴女やっぱりケビンに何かしたのね? お姉ちゃんの座は渡さないわよ!」


「別にいりませんわよ、その座は。貴女がずっと君臨していればいいですわ。」


「そう? それなら安心ね。」


「ふふっ、ターニャちゃんの方が一枚上手ね」


「?」


 Sクラスの才媛であるシーラも、ケビンが絡むとなるとどこか抜けた、唯の人となるようだった。俗に言う残念系である……


 そんなやり取りをしながらも馬車へと辿りついて、サラたちがその中に入ると、ケビンが既に寛いでいた。


「あれっ? 何でいるの?」


 不思議に思ったケビンが聞いてみるのだが、予想の斜め上を行く残念な回答が戻ってきた。


「ケビン、会いに来たわよ!」


「えっ……」


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