表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第3章 王立フェブリア学院 ~ 2年生編 ~
44/215

第42話 潜入作戦

 馬車の中にみんな乗り込んだところで、取り敢えずのところ別宅へと向かってもらう。


「で、何で姉さんがいるのかな?」


「ついて行くって決めたからよ」


「どこに?」


「ケビンの所に」


「じゃ、目的を果たしたなら学院に戻りなよ」


「うっ、ケビンが辛辣……いつもの可愛いケビンはどこ?」


 姉さんには悪いが、今からやろうとしていることに、加担させる訳にはいかないのだ。しかも、ターニャさんまでいるのだし。


「母さん、何で姉さんを止めなかったのさ」


「ケビンの邪魔をしないっていう条件を付けたのよ」


「はぁ……それで、ターニャさんは何故来たの?」


「サラ様に誘われたからですわね」


「母さん?」


「ケビンもシーラがいるのだったら、ターニャちゃんがいた方が良いでしょ? だからよ」


「確かにそうだけど、これからやる事には同行させられないよ」


 これから荒事になるのに、無関係なターニャさんを巻き込む訳にはいかない。何かあったら大変だし。


「ケビンは今から何するの?」


「それを教えるわけにはいかないよ。姉さんには関係の無いことだし」


「か、母様! ケビンが反抗期になったわ! 早くお医者様に見せなければ、手遅れになってしまう!」


「ふふっ、別に反抗期ではないのよ。貴女を危ない目に遭わせたくないだけよ。優しい子だから」


「!!」


 それからの行動は早かった。すぐさま俺を抱きかかえて、膝上に乗せるのだった。行動が母さんと一緒だな。やはり親子か……母さんは人前でそれをする事はないが、姉さんは違うらしい……


「姉さん、離して欲しいのだけれど」


「駄目よ! ケビンがとてもいい子なのを再認識したんだから、離せないわ!」


 何とも言えない暴論が出た。仕方ない、助けを求めるためにターニャさんに視線を向ける。


「シーラ、ケビン君が困ってるわ。離してあげないと嫌われるわよ?」


「それは困るわね。でも、本能が逆らって離そうにも離せないし。何かいい方法はないかしら?」


 そう言いながらも堪能しているのだろう。終始ニコニコとしている。


「仕方ないわね。ケビン君、シーラのどこか良いところを1つ教えてくれる?」


「?……優しい姉さん」


(ビクッ)


 次の瞬間には姉さんの膝上から開放された。ターニャさんが引っ張り出してくれたのだ。だが、何故か次はターニャさんの膝上に移動しているのだ……


「あらあら、ケビンはモテるのね。母さん、嫉妬しちゃうわ」


 いやいや、楽しそうにこちらを見ていないで、助けて欲しいのですけど。


「これは……!! 癖になりそうですわ。ケビン君は抱き心地が最高ですわね」


「何故に膝上から解放されたと思いきや、また膝上なのでしょう?」


「シーラがあんなに機嫌よくしてたから、少し気になってどんな気分になるのか試してみたのですわ」


「はぁ、そういう事ですか」


「ケビン君が嫌なら離しますわよ」


「いえ、別に構いませんよ。落ち着く匂いもしますし、抱かれ心地が良いですから」


「良かったわね、ターニャちゃん。ケビンに気に入られたから、これからは公認で抱っこできるわよ」


「ズルいわ! 私は少ししか抱っこしていないのに」


「姉さんはガツガツし過ぎなんだよ。野獣に狙われているようで怖いよ」


「や……野獣……」


「シーラはもう少し落ち着くべきですわ。欲望に忠実で、母性が足りないのですわ。」


「そうねぇ、それは昔から言える事ね。弟ができて嬉しいのはわかるのだけれど、優しく包み込んであげないと、いつまで経っても逃げられるだけよ?」


 ここぞとばかりに、姉さんの悪い点が周りから指摘され始める。姉さんは姉さんで、今までの行為が逆効果だと知らされ、1人絶望していた。そこまで、凹むことか?


 そうこうしているうちに、別宅へと到着したようだった。相変わらずのタイミングに、カロトバウン家使用人のレベルの高さが窺える。


 馬車から降りてリビングへ向かうと、それぞれソファに座った。相変わらず姉さんは落ち込んだままだ。


「で、母さんは2人を連れて行くつもりなの?」


「能力的には問題ないと思うわよ? 2人ともそれなりには強いから」


「でも相手は、どういった能力を持っているのかわからないよ」


 母さんと2人で話を進めていると、ターニャさんから質問された。


「あの……成り行きでついてきてしまったのですけれど、一体これから何をなさるおつもりなんですの?」


「悪い人を懲らしめるのよ。それに一緒に連れて行こうと思っただけよ。そもそも、シーラがついてくると言い出した事ではあるのだけれど」


「でも、今のシーラの状態じゃ足手纏いになりそうですわ。凹ませた私が言うのもなんですけど」


「それについては私もそうよ。あまり見ない姿だから、ちょっと面白くなって弄りすぎちゃったし」


 母さん、面白がっていたのかよ。相変わらず弄って揶揄うの好きだな。


「まぁ、そこはケビンに任せればいいわ。シーラの元気の源はケビンですから」


「そこで俺に振ってくるの? 母さん楽しんでいるでしょ?」


「だって、久しぶりにシーラに会ったんですもの。楽しいわ」


「仕方ないな……」


 ソファから立ちあがり、姉さんの前まで移動すると、膝上に揃えられていた両手を持ち上げてそこに座る。


 両手はそのまま俺を包む感じでセッティング。何時もならここまでだが、今回は凹んでいるので俺の手は姉さんの手に被せておく。


【膝上抱っこ・改】準備完了。


「姉さん、俺はどんな姉さんであっても好きですよ。少しは野獣らしさを減らしてくれれば、逃げることはしないし、元気だしてください。折角の可愛い顔が台無しですよ? 今の顔も日頃見れないから、お得感はありますけど、いつもの元気いっぱいの顔の方が俺は好きです」


「……本当?」


「姉さんは弟の言う事が、信じられないのですか?」


「だって、私が追いかけ回していたのを、本当は嫌がっていたんでしょ?」


 追いかけ回していた自覚はあったのか……


「確かに追いかけ回されるのは嫌ですね」


「ほら、やっぱり」


「発想の転換ですよ。追いかけ回さなきゃ、逃げる事はないんですよ。賢い姉さんならわかるでしょ?」


「わかった。追いかけ回すのは止めにする。でも、会いに行くのは止めない。弟成分が足らなくなる……」


 何だその成分は? そもそも入学するまでは、俺はいなかったんだから関係ないだろ。


「では、用法用量を守って、正しく会いに来てください」


「そうする」


「では、このままここに座ってますので、存分に弟成分とやらを吸収していてくださいね」


「本当!? 今までこんな事なかったのに……」


「取り扱いを間違えなければ、俺は逃げないんですよ。今までは姉さんが全面的に悪い」


「うぅ……」


 姉さんは放っておけばいつも通りになるだろう。さっさと話を進めないと。


 俺と姉さんのやり取りが終わったのを見計らって、ターニャさんが問いかけてきた。


「悪者というのは誰ですの?」


「生徒たちが行方不明になった原因……誘拐犯ですよ」


「それとケビンを襲った愚かな人よ」


 その瞬間に姉さんが覚醒した。殺気を振りまいてただならぬ雰囲気を醸し出していた。


「ケビンを襲ったですって……!」


「姉さん、殺気を抑えなよ。ターニャさんが可哀想だろ」


「ごめん」


「よくもまぁ、平然としていられるものですわね。シーラの殺気に耐えられるなんて」


「母さんのに比べたら可愛いもんですよ」


「サラ様の殺気はそれ程のものなのですか? 怖いもの見たさで体験したい気もありますが」


「体験出来ないと思いますよ。体験したと感じる前に、気を失うと思いますので。体験するなら威圧の方がまだマシでしょうね」


「酷いわ、ケビン。母さんそこまで怖い人じゃないわよ? 手加減ぐらいするわよ?」


「手加減する時点で凄さがわかるってもんだよ。威圧は結構遊びに使ってるでしょ? 揶揄うのが好きだから」


「だって相手がプルプル震えていて可愛いでしょ? スライムみたいで」


「ともかくターニャさんは体験するなら、この件が終わってからにして下さいね。今は優先すべき事項がありますので」


「わかりましたわ」


 話が脱線してばっかりだな。改めて纏まりのないメンバーだ。


「今から、懲らしめに行くのは賞金首の男です。王都内に潜んでいますので、人気のない所を中心に捜していきます」


「王都と言いましてもかなりの広さがありますわよ。人気のない所もそれなりにはありますわ」


「そこはある程度、絞ってあるので問題ないです」


「それならそこに住む人たちに、話を伺っていけばいいのですわね?」


「いえ、探知スキルを使うので、話を伺う必要はないです」


「それで見つかりますの? スキルの探知範囲は結構狭いはずですけど」


 確かに探知系スキルの効果範囲は、レベルに依存するが……この年でレベルMAXはありえないからな。それを見越しての発言だろう。


 しかしながら、俺のは上位に進化させて、更にレベルも上げてあるので、効果範囲もそれなりにある。


「そこは問題ありませんよ。兎も角、出発しましょう。敵が逃げ出したら元も子もありませんから」


 姉さんの膝上から立ち上がり、出発の意思表示を見せると、各々も立ち上がった。


「あっ……」


 姉さんが残念そうな声を出したのは、聞かなかったことにしよう。ご褒美を上げるのはまたの機会に。


 予定にない2人がついてくることになったので、作戦変更を余儀なくされた。それをこっそり伝えるために、母さんの方へと歩き出す。


「母さん、二人がついてくるから殺しはなしで、甚振るだけにしよう」


「仕方ないわね。ケビンに任せるわ」


 こうして、俺たちは敵が潜んでいるアジトへと向かうのであった。予定外の2人を引き連れて。


 4人の所帯となってしまったが、当初の予定通りアジトを見つけるために捜索を始めた。


 他3人は俺に任せっきりなので、先頭を歩き誘導している感じだ。ただついて来るだけで暇なのか、後ろの方で雑談を始めている。


 今から敵のアジトへと向かっているのにお気楽なものだ。そんな事を考えながらも、目星をつけていたスラム街へとやって来た。


「やっぱりスラム街にいるんですの? 道すがらその方向に向かっているのは何となく感じましたけど」


「以前襲われた時に、敵の増援が割かし早く合流したから、そうではないかと踏んでみただけです」


「ケビンは賢いわね。襲われながらもそんな事を考えていたのね」


「自慢の弟だもの!」


「何だかシーラが壊れていっているようですわ。いつものクールさはどこへ行ったのかしら?」


「いつもはクールなんですか? 俺はこの状態しか見たことないのですが」


「いつもとは全然違いますわよ。学院の者たちが見たら卒倒しますわね。学院では《氷帝》の名に恥じぬ振る舞いですから」


 そうなのか? 俺からしてみれば、そっちの方が異常な気もするが。そういう姿も見てみたいな。真面目な姉さんを見れるかもしれない。


「ところでこっちの方角であっていますの? 迷いなく進んでいるように見えますが……」


「あぁ、それなら心配ないですよ。既に敵は捕捉していますから。もう少ししたら着きますよ」


「既に探知済みですの!? でも、もう少しで着くのなら、それ程広い範囲の探知能力ではないのかしら?」


「範囲は広いわよ。私はまだ探知出来ていないもの」


 折角、勝手に誤解して実力を隠せると思ったのに、母さんが横からすかさず答えたせいで、誤魔化しが効かなくなった……


「えっ!? サラ様はまだ探知出来ていないんですの?」


「そうよ。近くで探知できているのは、スラムの住人くらいね。恐らく攫われた子供たちがいるはずだから、近くまで行けばわかるのだけど……」


「ケビン君の探知能力は、一体どれ程の広さをカバー出来ていますの?」


「……」


 ここは黙秘権を行使しよう。困った時の黙り作戦だ。黙っていれば時間が解決してくれるはず。そう願いたい。


「教えてくれませんの?」


「……」


「ターニャ、ケビンが困っているわ。あまり詮索してはダメよ」


 おぉ、神はここにいた! いつもはダメダメな姉さんでも、偶にはデキる人になるではないか!


「それはわかるのですけれど、気になるのですわ」


「それでもよ。私だって知らないんだから、ターニャだけ知るのはズルいわ」


「ここで話してもらったら、シーラも知れるのではなくて? コソコソ話しているわけではないのですし」


「……それでもよ」


 姉さん今凄く迷ってなかった? 迷ったよね!?


「サラ様は知っているのですか?」


「私も知らないわよ。ケビンのステータスは、昔のしか見てないから。今はどこまで成長しているのかわからないわ」


「サラ様は気にならないのですか?」


「私はケビンが元気に育ってくれたら、それでいいわ。ステータスの中身なんてオマケみたいなものよ」


 さすが母さんだ! もっと言ってやって欲しいくらいだ。


「何でそんなに気になるの? ターニャって我関せず主義じゃなかった?」


「年下の子に、強さで負けているかもしれないなんて、生まれて初めてですもの。気になりますわ」


「ふふっ、本当にそれだけかしら?」


 何やら不穏な流れになってきている。女子トークってやつだろうか? 兎も角、話を終わらせないと、飛び火が凄いことになりそうだ。


「見えてきましたよ。あそこですね」


 都合よく目的地が見えてきたので、ここぞとばかりに話を逸らさせてもらう。見た目は普通の倉庫だな。


「ケビン君の探知能力は凄いですわね。あっという間にアジトが見つかりましたわ」


「さすが私のケビンね。お姉ちゃんの自慢の弟よ!」


「……」


 とりあえずは、先程の女子トークを止めさせることに成功したようだ。1人テンション高すぎな人もいるが。


「では、こっそり中に入りましょうか?」


「その必要はないわ! 堂々と行きましょう!」


 そう言って勢いよく扉を開け放つ。少しは加減てものをして欲しいのだが、言っても無駄だろうな。テンション高いし。


「誰だテメーは?」


 中には酒瓶片手に座っている、如何にもな男がいた。倉庫の端の方には、檻に入れられた生徒たちがこちらを見て、困惑の表情を浮かべている。


「貴方みたいな下賎の輩に、名乗る必要などないわ」


「学院のガキ風情が、調子こいてんじゃねぇぞ!」


 早くも口撃を始めているシーラの後ろから、続いて中に入り様子を窺う面々。奇しくも学院の制服を着ているので、相手からしたらカモネギ状態に見えたのだろう。


「ガキ3人に保護者か……攫う手間が省けたな、保護者の方はいい体つきしている事だし、後でじっくり楽しませてもらうとするか」


 下卑た笑いを浮かべながら男が言うと、あからさまに女性陣は嫌な顔をした。サラだけは歯牙にもかけないのか無反応だったが。


「そんな事は俺がさせないよ。大事な母さんだしね」


「何だテメーは? 保護者の子供か? だったら母親が犯されるのを檻の中で見物でもしてるんだな」


「賞金首なだけあって最低な野郎だな。殺したくなってくるよ」


「ハッ! ガキが息巻いてんじゃねーよ。実力の差もわからないくせに、ヒーローごっこは他所でやんな。と言っても、今からお前らは檻の中へ直行だがな」


 こちらをただの子供と見ているのか、余裕の表情で酒を煽っていた。


「ねぇケビン、こんな奴が親玉なの? 張り合いがないのだけれど」


「こいつで間違いないよ。誘拐犯の黒幕だよ」


「何か拍子抜けですわね。ただの酔っ払いにしか見えませんわ」


「何だと? ふざけるのも大概にしとけよ。多少痛めつけても、生きていればいいんだからな、後悔するぞ」


「それと同じ事を、お前の手下共が言っていたぞ。もうこの世にはいないけどな」


「俺の手下だぁ?」


 男は何かを思い出そうとしているのか、黙考しだした。不意に目を見開きこちらを凝視する。


「おい、もしかして手下共を殺ったのはお前らか?」


「正確にはお前()ではなく、俺だ」


「そんなわけがあるか! 仮にも冒険者の集まりだぞ! お前1人でどうこう出来る相手じゃないんだよ!」


「どうこうしたから、今俺がここにいるんだろ? 手下が言ってなかったか? 子供に手こずっているって」


「!!」


 男は思い出した。確かにあの時、手下の一人が攫う予定だった子供に手こずって、応援を頼みに戻ってきていたことを。


「テメーだけは何があっても殺す! あれでも俺の仲間たちだった奴らだ。殺した上で生首を供養に供えやるぜ」


 そう言い放つと男は立ち上がり、酒瓶を捨てて代わりに抜き身の剣を右手に持つ。


「死ね、クソガキ!」


 一般人からしたら、かなりのスピードで間合いを詰めてくる。そこら辺は、さすが賞金首と言ったところか。ただし、今回は相手が悪かった。


「さっきから聞いていれば、私の可愛いケビンを殺すですって! 許さないわ!」


 一歩前へ踏み出て男と相対するのは、怒り心頭のシーラであった。


「死ぬのはあなたよ! ゲスがっ! 《氷河時代の顕現(アイスエイジ)》」


 辺り一面が寒気と同時に白い靄で包み込まれた。見回してみると所々凍っており、冷気を醸し出していた。


 賞金首はというと、氷の彫像とも言うべきか綺麗に氷漬けにされており、生きているかも定かではない。


「姉さん、ちょっとやり過ぎじゃない? あれ、生きてるの?」


「多分、生きているんじゃない? わからないわ」


「しかも、詠唱を省略出来たんだね。それ出来る人って限られてるんだよ? 中々に稀有な存在だね」


「このくらい普通よ! いつもは周りに合わせて詠唱してるだけよ」


「ちょっとそれは初耳でしてよ! 貴女、自分がどれだけ凄いことをやったのか理解してまして? 各国から引っ張りだこでしてよ! 将来は宮廷魔術師で安泰ですわね」


「そんなものには興味無いわ。私が興味あるのはケビンだけよ!」


「出ましたわ、超絶ブラコン……」


「ふふっ、相変わらずシーラはケビンが好きなのね」


「好きの度合いを超えていると思いますわ」


 姉さんの弟愛が重い……


『良かったですね、マスター。将来は結婚するかも知れませんよ?』


『変なフラグ建てるな! あと、姉弟で結婚は出来ない』


『えっ……? 知らないんですか? 義理姉だから出来ますよ』


『……』


 待て待て待て、今こいつ何て言った? 義理姉……? ここにきていきなり、とんでもない情報をぶっ込んできやがった!


『どういう事だ! 姉さんは血の繋がった姉じゃないのかよ!』


『ちなみに姉だけじゃなく兄もですよ。実は、サラ様は後妻なんですよ。だから、あれだけマスターに愛情を注いでいるのです。やっと出来た子供ですからね。それと、前妻はシーラさんを産んで数年後に、病気で亡くなっていますね。元々、身体の弱い人だったみたいで』


 身体の弱い人に子供を3人も産ませるなよ。父さんは何やってるんだよ。


『今、“父さん何やってんだ”とか思いました?』


『何故わかる?』


『流れを読んだだけですよ。ちなみに、兄姉共に前妻の子ではありますが、男爵様の子ではありませんよ』


『わけがわからないんだが』


『よくある話で、男爵様の信頼する親友が亡くなって、家族が路頭に迷う所を周りの反対を押し切って妻にしたらしいです。親友から奥さんの身体が弱い事を聞いていたので、子供を3人も育てるのは無理だろうと、考えたらしいですね』


『父さん凄いな』


『さらに男爵様の凄い所は、妻にしても一切手を出さなかったらしいです。奥様は妻になったのだからと、男爵様の血筋を残すために語りかけたのですが、死んだ友に顔向けが出来なくなると断ったそうです。漢ですよね』


『カッコよすぎるだろ。改めて尊敬するよ』


『それでマスターと兄姉達は、血の繋がりがないんですよ』


『それを知らなかったのは、もしかして俺だけか?』


『アイン様とカイン様はそれなりに成長していたので知っていますよ。シーラ様はまだ知らないでしょうね。アイン様たちが教えていたら知っているかも知れませんが』


 あまりの情報に消化不良を起こしそうだ。なんて事だ……


「ケビン、どうしたの?」


「いえ、こいつの始末をどうしようかと、考えていただけです。」


「そうねぇ、騎士たちに引き渡そうかしら?」


「それが無難ね」


「ですわね」


「放っておいても逃げる心配はないし、騎士が来るまでこのままでいいか」


 こうして姉さんの活躍(?)により、黒幕は退治できたし、後はローブの男を見つけるだけだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ