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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
27/215

第25話 1週間後

 あれから1週間が経ち、学院の生活にも少しだけ慣れた。まだ、クラス全員の名前は知らないままだが……


「ねぇ、ケビン君。授業って座学ばっかりで飽きてくるね」


 そう、この1週間で変わったことと言えば、カトレアが普通に話しかけてくるようになったことだ。最初のうちは遠慮がちだったのが、今ではかなりの馴れ馴れしさが窺える。


 無視を決め込んで寝ていたのに、めげずに話しかけてきたのだ。


 たまに返答をしていたのが問題なのか? それとも、カトレア自体に仲のいい友達が出来ないのが問題なのか? サッパリだ。


「1週間経ったし、そろそろ実技が始まるんじゃないか? 知識もなく慣れないうちに実技をしても怪我するだけだろ」


「うーん、でも武術の実技ならやってもいいと思うんだよね。魔法は暴発もあるし危ないだろうけど」


「そういえば、そうだな」


 確かに武術はやっても支障がないはずだ。まずは、体力作りから始めるだろうし、危険は無いはずだが。


 そんな会話をしていると、いつも通りジュディさんが教室に入って来た。


「出席を取るぞ。席につけ」


 これも相変わらずのルーティンとなっているな。何故か「席につけ」と言われない限り、生徒たちは好き勝手にしている。


「今日から闘技場が使えるようになったから、実技の授業もやっていこうと思う。闘技場が劣化して補修工事をしていたため、例年より始めるのが遅れてしまった。それで今日は遅れを取り戻す分、武術と魔法の実技授業をすることにした。今まで座学ばっかりだったから、いい気晴らしになるだろう。解散後は、各自第1闘技場まで来るように。場所はわかるよな? わからない生徒はわかる生徒のあとをついていけ。以上だ、解散」


 第1闘技場か……補修工事の話の時は、こちらをチラッと見た気がしたのだが、気の所為だろうか? それにしても、カトレアと話してた途端、実技がくるとは……これもフラグというやつか?


「ケビン君、闘技場まで一緒に行こうよ」


「お前は友達がいないのか? いつも俺にばかり話しかけてくるが」


「いるよ」


「じゃあ、そいつと一緒に行けばいいだろ?」


「だから、今誘ってるよ」


「……」


 つまり、あれか? 俺はいつの間にか友達認定されていたのか? いつ友達になったんだ? どうやって友達になったのか記憶にないんだが?


「いつ、友達になった?」


「ついさっき」


「なった覚えはないぞ」


「友達じゃないと話しかけちゃダメみたいなこと言うから、友達になってしまえば話しかけてもいいでしょ? 闘技場に行くのも友達と行けって言うし。だから、私の友達第1号にしました」


「丁重にお断りさせていただきます」


「拒否します」


 何故だぁぁぁっ!


『Help me サナ!』


『You なっちゃいなよ』


 使えねぇ……


「どうしてもか?」


「どうしてもです!」


 これは、諦めるしかないのか? こいつの性格からして、拒否してもずっと話しかけてきそうだしな。無視してても話しかけてきたくらいだし。


「わかった、諦めよう。そのかわり、ウザくなったら切り捨てる」


「わかったよ。ウザくならないようにギリギリの線を攻めるね」


 いや、攻めるなよ……しかも、ギリギリを。逆にストレスで物凄くイライラしそうだ。


「普通にしてろ。ギリギリを攻めるな」


「じゃあ、闘技場に行こうよ。そろそろ皆がいなくなるよ」


「闘技場の場所は知っているのか?」


「当然、知らないよ」


 何故、当然なんだ? どこら辺が当然なんだ?


「使えないな」


「ケビン君は知ってるの?」


「当然、知らない」


「それ、私と一緒だよね。使えないな」


 くっ! こいつ、友達認定を認めたら、急にガツガツくるようになったな。しかし、ここで揉めていては、闘技場に辿り着けない。


「俺は、他のやつについて行くつもりだったんだ」


「それは私もそうだよ。やっぱり一緒だよね」


「兎に角、先に行く生徒たちを追いかけるぞ」


 そう言って周りを見ると、やり取りしていた間に生徒達がいなくなってしまっていた。急がないと闘技場を探すのに、一苦労してしまうではないか。


「実技の授業ってどんなことするのかな?」


「どちらも基礎的なことだろ。初めてやるんだし」


 スタスタと歩いていると、生徒たちが一方向に向かって、歩く姿が見えてきた。これで、闘技場までの道のりは問題なさそうだ。


 やがて闘技場につくと、そこは試験を受けていた時に使った場所だった。補修工事ってもしかしなくても、俺のせいか?


 いや、それはないな。そこまで壊した記憶がないし。普通に経年劣化だろう。


「よし、みんな揃ったな。では、最初は武術からだ。いきなり剣技を教えることはない。まずは、体力作りからだ。全員、闘技場内を走るように。疲れたら途中で歩いていいぞ。立ち止まるのは呼吸を整えてからだ」


 まずは、体力作りからか。最後尾を走りながら適当なところでやめよう。半数ぐらいが脱落すれば、やめたところで目立つことはないだろう。


「皆、準備はいいな? いきなり飛ばしたりするなよ、後が続かなくなる。これはペースを維持しながら、どれだけ走り続けるかがポイントなんだからな。では、始め」


 その号令と共に皆が走り出す。俺は、最後尾グループを維持しながら、走り続ける。


 カトレアは真ん中あたりのグループに居るみたいだ。身体を動かすのは得意なのか? 特に無理した走りではないようだ。


 しばらくして、先頭集団が最後尾グループを周回遅れにしていった。体力には自信があるようだ。


 さらにしばらくすると、グループの中から1人、また1人と脱落していった。最後尾グループの3分の2が脱落したところで、俺も歩きに変更した。


 特に疲れてもいないのだが、これで目立つことはないだろう。先頭グループは未だに走り続けている。カトレアも頑張っているようだ。


 しばらくそんな光景を見ながら、暇な時間を過ごした。


 先頭集団が全員脱落して、落ち着いたところで休憩となった。俺は闘技場から出て、木陰に行って眠ることにした。周りは静かだし、絶好の寝場所ポイントになるかもしれない。


 スヤスヤと夢心地の中、誰かに呼ばれてる気がした。


「……ビン君、……ケビン君、……ケビン君ってば!」


 うっすらと目を開けると、カトレアが呼びかけていたようだ。


「なんか用か?」


「次の授業が始まるよ。あとは、ケビン君だけが来てないんだから」


「授業なら俺抜きで構わないだろ?」


「そういう訳にはいかないの。ケビン君待ちになってるんだから。みんな待ってるよ」


 なんとも面倒くさい。俺抜きでさっさと始めてればいいものを。ジュディさんもそこら辺わかっているだろうに。


「わかった。行こう」


 闘技場に着くと、話の通り俺待ちになっていたようだ。皆してこちらを見ている。これは、無難に謝っておく方がいいな。


「遅れてしまってすみません」


「別に構わない。次の授業を何時始めるか言わなかった私にも責はある。それでは皆揃ったようなので、次の授業に移る。次は魔法の実技だ」


 魔法か。一体何から始めるんだろうか?


「魔法の基礎については、座学で教えた通りだ。魔法の得意な者、不得意な者とわかれてしまうが、不得意な者でも覚えていて損はない魔法も存在する。例えば、スキルとして存在する【身体強化】だが、これと似たようなものが魔法にもある。それは、【強化魔法】と言われるものだ。こちらは【身体強化】みたいな限定的なものとは違い、強化する所を指定できるというメリットがある」


 へぇ、これは覚えていて損はないな。


「指定できるものには、無機物・有機物を問わない。つまり、身体強化された肉体で、装備品に強化魔法をかければ、ある程度は損耗を防ぎ戦えるようになるという事だ。それと身体強化した後に、さらに重ねがけで身体に強化魔法をかけるという事もできる。このように、魔法とは使い方次第でとても便利になるという事だ」


 発想が大事ってことだな。どんな魔法も使い手次第で変わっていくってことだ。俄然、魔法の授業にやる気が出てくるな。


「まずは、基本的な魔法から練習していく。それでは、魔法を上手く扱えない人のため、手本を見せるのでその後に練習開始だ」


 そう言ってジュディさんが的の前に立つと、何やら唱え始めた。


「原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア!」


 おぉ! あれが詠唱か! 初めて聞いたな。的が見事に燃えてるぞ。だが、詠唱はやはり中二っぽいな。


「ちなみに今のは火属性の初級魔法の一部だ。これを覚えられたら、野営の時に火を起こすのに苦労しなくて済むぞ。水属性の初級魔法も一緒だな。覚えると長旅で水に困らなくなる。それでは、各自練習を始めてくれ。魔法が使えるやつは的に向けて試していいぞ。試験の時と同様壊れることはないからな。」


 それじゃあ、俺は的相手に練習でもするかな。そう思い、他から離れてる的の前まで歩いて行くと、ジュディさんが慌てたように駆けつけてきて、コソッと話しかけてきた。


「ケビン君、くれぐれも的を壊さないでよ。手加減してそこそこの魔法を当てればいいから」


「わかってますよ。それよりも、そっちの喋り方の方が俺は好きですよ。堅苦しくなくて。柔らかい喋り方の方が生徒に慕われますよ。威厳も大事でしょうが」


「そうかな? 同僚に聞いた話なんだけど、舐められると言うこと聞いてくれなくて、問題児が増えるって言われたから、あの喋り方でずっとやってるんだけど」


「そもそも、貴族連中の中にはプライド高い奴もいるだろうし、言うこと聞かない奴は聞きませんよ。Sクラスとかは顕著に現れてそうだけど」


「そうなのよ。Sクラスの担任がまたタカビーな貴族の教師でね、S以外は認めないみたいな雰囲気出してるの」


「俺はてっきりジュディさんが、Sクラスの担任になると思ってましたけどね」


「嫌よ。Sクラスは扱いづらいって、教師の中じゃ当たり前の常識なのよ。だから、タカビーな教師がずっとSを担当してて、こっちは大助かりなんだから」


「全学年そうなんですか?」


「そうね。タカビーだったり貴族至上主義だったり変な奴が多いわ。もし、Sクラスの担任から外れた場合は、Aクラスの担任になって生徒を追い詰めて、Sクラス打倒を目指すのよ。業績を上げるために」


「教師の世界も面倒くさいですね。やっぱりダラダラ過ごすのが1番ですよ」


「それは、ケビン君だから出来ることよ。他の生徒は頑張って勉強するんだから。一応、テストの成績が年間で悪いと留年もあるのよ。まだ、1人も出てないけど」


「留年制度あるんですね。もしかして、補習とかもあったりします?」


「あるわよ。学院としては国からお金が出ている以上、留年者なんて出したくないから、救済処置として補習をやっているのよ」


「その話を聞くと、どっちの救済かわからなくなりますね」


「ふふっ、確かにね。とにかく、実技の時は手加減してやってね。ケビン君がダラダラ過ごすためにも」


「了解です。壊さないように注意しますよ」


「それじゃあ、私は魔法が苦手な生徒を指導するから、あっちに行くわね」


「頑張ってください」


「ありがとう」


 そのままジュディさんは、的とは反対の位置で魔法の練習をしている、生徒たちの輪に向かっていった。


「さてと、始めますかね」


 そういえば、あの中二っぽいセリフを言わなきゃいけないんだよな。恥ずかしいが我慢するしかない。慣れれば恥ずかしくなくなるだろ。


「げ、原初の炎よ、眼前のものをも、燃やせ、ファイア」


 恥ずかしさのあまり詰まってしまった。結果は見事に不発。


『プププッ』


『おい、笑ってんじゃねぇよ。こっちは、必死に恥を忍んで唱えてんだぞ』


『噛んだ上に、不発って……ワロスwww』


 こいつ日増しに人間っぽくなってないか? 進化しすぎだろ。


「ケビン君、失敗したの?」


 カトレアか……まさか見ていたとは。


「緊張し過ぎだよ。魔法使う時はリラックスしないと暴発の元だよ」


「わかってる」


「こうやるんだよ。原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア」


(ボッ)


 詠唱が終わると、確かに的には火がついた。


(くっ! カトレアでも出来ているのに、恥ずかしがっている場合ではない!)


「原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア」


(ボウッ)


 魔法は成功したが、威力が凄かった。的は壊れてないからよかったんだが、まだまだ手加減をしなきゃいけないみたいだ。


「ケビン君、凄いね。私のファイアより威力あったよ!」


「お前も凄かったぞ。体力はあるし、魔法は使えるし、何故Fクラスにいるのか分からないくらいだ」


「実技は出来ても、筆記の方がダメダメだったんだよ」


「そういうもんか?」


「そういうもんだよ」


 この日は結局、実技の授業だけで終わった。これからは、詠唱する時は恥ずかしがらずにしよう。毎度サナに馬鹿にされるのは癪だしな。


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