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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
26/215

第24話 2日目

 今日のところは遅刻なしにちゃんと学院に着いた。社長出勤は許されているが、2日目からそれをしたら目立つ事この上ない。まずは、影薄く馴染む感じで溶け込んでいこう。


(いてもいなくてもあまり気にならない、そんなポジションがベストだな。こんな時の為の、【生命隠蔽 Lv.6】。じんわり使う感じでやれば、いてもいなくても気にならない存在になれる筈だ)


 基本的に努力は嫌いだが、自分の目的の為の努力は惜しまないつもりだ。


『マスター、そんなことに力を使わないで、友達作りに力を入れましょうよ』


『サナ、聞いてくれ。これが成功すれば、俺は気兼ねなくダラダラ出来ると思うんだ。さすがに足し算とかの授業を真面目に受ける自信が無い。そうなると次に考えるのは、如何にサボるかだ。教室で寝ていようが、バックれて何処かでサボっていようが、気にならない存在にならないといけない。それが出発点だと思うんだ』


『マスターって馬鹿ですよね』


『何を言う! 如何に授業中に創意工夫しバレずに寝れるか、試してみるのは男の浪漫だろ!』


『全世界の真面目に頑張っている男の子に謝ってください。そんな事に浪漫を求めているのは、一部の人間だけです』


 そんなやり取りをしていると、教室についてしまった。


『さぁ、マスター。前か横の席の子に話し掛けて友達になるのです!』


『だが断る』


『そんなこと言ってないで、さっさと朝の挨拶を済ませて下さい! おはようって言うだけでしょ。たった4文字ですよ』


「おはよう」


「なっ!?」


「な?」


「何でもない。おはよう」


(おいおい、誰だこいつ? いきなり喋りかけてきたぞ!?)


『マスター、やったじゃないですか! 朝の挨拶成功ですよ』


『いや待て、誰だよ? こんな奴知らないぞ』


『何言ってるんですか? 昨日、自己紹介してたじゃないですか!』


「ケビン君でいいんだよね?」


「なっ!?」


「な?」


「名前は合っているぞ」


『おい、また喋りかけてきたぞ! どうなってやがる!』


『どうなってやがるのは貴方でしょ!』


『俺のどこがどうなってやがるんだ! 普通だろ!』


「考え込んでどうしたの?」


「なっ!?」


「な?」


「名前は何と言うんだ?」


「カトレア・リンドリーだよ」


『誰だよっ!?』


『だから昨日、自己紹介してたでしょ! マスター、初歩的な会話すらまともに出来てないじゃないですか! コミュ障確定です!』


『ふざけるな! 俺は、会話ぐらいしてのけるぞ!』


『じゃあ、今まで誰と会話しました?』


 そこで俺は考える……今まで会話した相手……


『まず、ソフィ、家族、使用人、ガイル司教、サナ、クリスさん、ジュディさん、学院長、あぁ、あと、Aランク冒険者ぐらいか?』


『身近な人を除くと、それって全部大人ですよね? しかも、話しかけられて返した程度の薄い関係』


『ん? そうなるな。周りに子供なんていなかったしな。自分からは用もないのに話しかけないだろ』


『つまり! 人見知りする人が、初対面の人に事務的に返答しているようなものです! よって、ギルティ!』


『何故そうなる!?』


『真のコミュニケーション能力の高い人は、用がなくても話しかけるのです。何気ない会話をしてのけるのです!』


(な、なんだと……俺は、コミュ障だったのか? 別に不便な事がないから、自分からは話しかけていなかったが、それがコミュ障の原因なのか? 前世ではどうだった? 普通に会話してなかったか? ちゃんと就職もしてたし、仕事もこなしてた。それが、転生したらコミュ障になったのか?)


『もしかしたら、ラノベで出るんじゃないですか?【転生したらコミュ障だった件】って』


(ヤバい、マジでありそうで怖い。てか、サナのドヤ顔が想像出来て、なんかムカつく)


「ねえねえ、おーい、聞こえてる?」


 そこで、呼びかけられていることに気づく。


「どうした?」


「やっと反応した。さっきから声をかけていたのに上の空だったよ。座らないの?」


(あぁ、そうだった。席につかなければ。このまま突っ立っていては目立ってしまう。とりあえず座って落ち着こう)


 自分の席に座ると、両肘をついて手を組み、口元へと持ってきて考える。果たして、何を間違ってしまったのだろうか?


『勝ったな……』


『あぁ……』


『『……』』


『って何言わせてんだ! 違うだろ! つい、反応して答えちまったじゃねぇか!』


『さぁ、マスター。隣の子と会話するのです』


 すると、隣から不意に話しかけられる。


「どこか調子が悪いの?」


「い、いや、そんな事はにゃい」


『ハハハハハッ! “にゃい”だってぇ……“にゃい”! シリアス醸し出しながら、噛んでるぅ。ハハハハハッ! マスターは猫の獣人なんですかぁ? あぁーお腹いたぁぁ……』


(くそっ! マジでこいつ腹立つわ! そもそもお前に腹なんてないだろうが! 何か攻撃できる方法はないのかよ!)


『ざーんねーんでーしたー! そんな方法あっても教えませーん』


『【転生したらサポナビがウザかった件】を今度執筆するぞ』


『いやぁ、私が主役ですか? しょうがないですねぇ、この隠しきれない主役のオーラ、バリバリですからねぇ』


(今のこいつには皮肉すら通じないのか。ウザさが天元突破してるな)


 そんなこんなで、サナのせいでイライラしていると、どうやら隣の女は会話を止める気はないらしい……


「ねえ、ケビン君はダラダラするのが好きなの?」


「そうだが。何か問題でもあるのか?」


「いや、そんな事はないけど、学校での意気込みでは初めて聞いたから」


「そんなのは人それぞれだ」


「まぁ、そうだけど……普通は言わないよ? 先生の前なんだし。目をつけられちゃうよ」


 目は既につけられているんだがな。監視目的で……そんなこと、言っても始まらないしどうでもいい事だが。


 そこで初めて彼女の顔を見た。コバルトブルーの瞳に明るい感じのブロンドヘアーだった。


「おっ、初めて目が合ったね。照れ屋さんだから目を合わせないのかと思ってた」


 俺は別に照れ屋などではないぞ。サナ曰く、コミュ障なだけだ。そう、サナ曰くだ。決して、認めた訳では無い。


「お前の瞳って綺麗な青色だな」


「――! そ、そんなことないよ。普通だよ」


「そうか?」


「そうだよ……(いきなり瞳のこと褒めてくるなんて、不意打ちすぎるよ)」


 まぁ、本人がそう言うならそうなのだろう。こちらの世界では普通なのかもしれないしな。


 キリのいいところでジュディさんが教室に入ってくる。


「出席を取るぞ。みんな席につけ」


 出席を取られるなんて前世併せて何十年ぶりだろうか? 昔は「はい、元気です!」なんて言ってたもんだが、異世界ではどうなるんだ?


 そんなことを考えていると、なんてことはない。登校して席に座っているかどうかだけ確認しているようだった。


 これなら、社長出勤しても意外と目立たないのでは?


 そもそも、いてもいなくてもバレないようにするのが目標だしな。それに、ジュディさんからしたら、いない方が助かるんじゃないか? 気を使わずに済むしな。


「今日の最初の授業は算術だ。将来役に立つから、しっかりと学ぶように」


 マジか……まだサボる方法すら確立させていないのに、いきなりの算術か……仕方ないから、バレずに寝る方法を先に試そう。


「ケビン君、算術って得意? 私はあまり得意じゃないんだけど」


 何故に話しかけてくる!? これがコミュニケーション能力を持つ者の凄さか!


 ここで得意なんて口走ったら授業中わからない所は、全部聞いてくるに違いない。俺の安息の睡眠時間を確保するためには、不得意だと答えておかなければ。


「俺もあまり得意じゃない」


「そうだよねーややこしくて嫌になるよねー」


「そうだな」


 よし、会話は打ち切りだな。ここからは俺のターン! まずは、肘をついて寝てみるか。うつ伏せだとモロバレだしな。


 しばらくして……


「ケビン君、もしかして寝てない? ちゃんとノートに取らないと分からなくなるよ?」


 何故だぁぁぁっ! 何故こうも話し掛けてくるんだ? コミュ充爆発しろ!


「そうだな」


 肘付き寝入りは失敗だ……次はどうする? いっそのこと、瞼に目でも書いて寝てみるか? いやいやいや、早まるな俺! それをしては、ただの馬鹿だ。変人扱いされて目立ってしまう。


 まず、ノートを取っている風に見せなくてはいけない。でなければ、また隣から言われてしまう。考えるんだ……何か方法があるはずだ。


 ①ペンを持ってみる。

 ②ノートに視線を向ける。

 ③瞼を閉じる。


 これだ! これなら、自然に見える。如何にもノートをちゃんと取ってますよ的な。よし、実践だ!


 また、しばらくして……


「ケビン君、やっぱり寝てるよね? 分かるよ、それ」


 あぁ、神よ……


「お前は何故、俺に話し掛ける?」


「だって真面目に授業受けないと、先生に怒られるよ」


「俺はいいんだよ。怒られないから」


「どうして?」


「ジュディさんとは、ちょっとした知り合いだから」


「知り合いなら余計に怒られるんじゃない?」


「それはない。現に、今お前は授業中に話をしているにも関わらず、怒られていない。普通なら授業中の私語は慎めと怒られるが、怒られないのは、話している相手が俺だからだ」


「先生が気づいてないだけじゃないの?」


「気づいているぞ。こちらの様子を窺うために、チラチラと視線を向けている」


 先程からチラチラと視線を向けてくるので、ウザイことこの上ない。何がそんなに気になるんだ。たかが、子供の会話だろうに。


「というわけで、俺には構わなくていい。ダラダラと過ごすのが目標だからな。お前は真面目に授業を受けてるんだな。先生に目をつけられるぞ」


 これでもう話しかけてはこないだろう。引き続き寝るための姿勢を取ろうとすると、チャイムが鳴った……


「この授業はここまでだ。復習を忘れないようにやっておくんだぞ。では、休憩だ」


「……」


 そうか、終わったのか……なんだこの敗北感は……全然、寝れてないぞ。トライアル・アンド・エラーで終わっただけじゃないか。


「ケビン君、休憩だってさ。思いっきり寝れるね」


 そうだ、こいつが絡んでこなければ寝れていたんだ。こうなったら、無視するしかない。相手をするから増長するんだ。次の授業は何がなんでも寝てやる。


 そう意気込む俺であったが、この発言がフラグだったとは知るよしもなかった……


 再びチャイムが鳴り、皆が席に着くと、ジュディさんが教室に入って来た。


「よし、皆揃ってるな。次は魔法学の授業だ。あらゆる魔法の基礎になるから、真面目に受けるように」


 終わった……寝れないじゃないか。まさかの受けたい授業が、次にくるとは……仕方ないから、寝るのは諦めよう。これさえ受けてしまえば、あとはもう大丈夫だろう。


「魔法とは、自身の中にある魔力を使って、現実に不思議な現象を起こすことを言う。魔法を当たり前に使える者は、常識として捉え、あまり不思議とは思わないかもしれないが、魔法の使えない者からしたら不思議にしか思えない」


 実際、俺にも不思議としか思えない。魔法のない世界から来たからな。


「魔力にはわかりにくいかもしれないが、魔法そのものの威力の強さと、それに対し消費するエネルギーとが存在する。どちらの言葉に対しても、《魔力》という言葉を使うため、慣れないうちはこんがらがるだろう。一般的に魔力を込めれば強い魔法になるし、その分消費するエネルギーは増えるので、この2つは比例する関係とされている」


 そうなんだよなぁ、ステータスは《MP》と《魔力》で別れてるからわかりやすいんだが、言葉にするといきなりややこしくなるんだよな。


「皆も洗礼を受けて知っていると思うが、ステータスの《MP》と《魔力》は言葉にすると、どちらも《魔力》だ。《MP》が自身の使えるエネルギー量で、《魔力》が魔法の威力に対する数値だ」


 ジュディさんの授業は意外とわかりやすいな。基礎を知らない俺でもちゃんと理解できるぞ。


「ちなみに消費したエネルギーは、マナポーションを飲む事で回復させることができる。あとは、自然回復だ。これは、寝ている時が1番効率がいいとされている。起きていても回復はしていくが微々たるものだ。しかし、戦闘中に寝るわけにはいかないので、冒険者なんかはマナポーションを常備して一気に回復させたりする――」


 それからも魔法学の授業は続き、あっという間にチャイムがなった。楽しい時間は過ぎるのが早いな。


 その後の授業は、一般教養が続いたので全力で寝た。寝るのに全力を使うのもおかしな話だが。


 こうして、2日目の学院生活は終わったのだった。


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