第2話 登録
街の入口に着いたのは日が傾きかけた頃だった。
門をくぐると石畳の通りの両側に商店が並び、荷を担いだ人々が行き交っている。装備を身につけた者も多い。腰に剣を提げた男や背に大きな銃を負った女。
誰もがダイスケを一瞬だけ見てすぐに目を逸らした。
(目立ってはいない、か)
探索者協会は通りの突き当たりにあった。看板と同じ紋章を掲げた背の高い石造りの建物だ。
中に入ると広間は騒がしかった。壁一面の掲示板に依頼書が貼られ、その前に人だかりができている。
ダイスケは人の流れに押されるように受付へ向かった。
「ホルダーの登録ですか?」
受付の女性は顔を上げるより早く尋ねた。
「……はい」
「では、こちらに名前を」
渡された紙にダイスケは自分の名前を書いた。その続きは書けなかった。
女性は紙をちらりと見ただけで手元の装置に差し込んだ。短い電子音が鳴る。
「照会、問題ありません。登録します」
あっけないほど早かった。
「協会はいつも人手が足りないんです。登録できる方はできるだけ登録しています」
女性は淡々と説明を続けた。
ホルダーは「記録保持者」であり、探索の成果はすべてptとして記録されること。遺跡の宝を売ったり協会の依頼を達成したりすれば加算され、違反をすれば減らされること。
「ダイスケさんは現在0pt。新人級です。500ptまではこの級になります」
「500……」
「新人の多くはそこにたどり着く前にいなくなります」
最後の一言も同じ調子で付け加えられた。
(ふるい、か)
「新人の方には支給品があります」
女性が奥から運んできたものを台の上に並べた。三本の小瓶と薄い布のような装備。それから背負い式の鞄。
「初心者用の回復薬が三本です。飲めば怪我はあっという間に治ります。ただし失った部位までは再生しません。覚えておいてください」
瓶の中で淡い色の液体が揺れた。
「こちらは軽量アーマー。C・C社の製品で重さは百グラムもありません」
手に取ると拍子抜けするほど軽かった。布と変わらない。
「下級のイレギュラーの攻撃ならダメージは受けません。『下級の』と付くことは忘れずに」
遺跡で見たあのうさぎ型が頭をよぎった。
あれが「下級」なのだろうか。
「最後にバックパックです」
ダイスケはその場で身支度を整えた。アーマーを服の上から身につけて回復薬を鞄に収める。
腰には遺跡で見つけた弾薬ホルダーがある。ハンドガンと手榴弾。それに百四十発の弾。そこへ回復薬三本が加わった。
最初に目覚めたときよりずっと「探索者」らしくなった。
「宿は協会提携のところがあります。ただし前払いです」
「金は……ありません」
「では、稼いでください」
女性はそう言って視線を掲示板のほうへ流した。
ptも金もまだ0。
ダイスケは人だかりの向こうにある掲示板へ歩き出した。




