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第35話:決戦! うなれ王家の魔法刻印!

玉座の間の扉を開けた先、そこに広がっていたのは白一色の静寂だった。中央ではマリアが一人、背を向けて跪き、熱心に祈りを捧げている。


「何を祈っていますの、マリア」


エカテリーナの声に、マリアは振り返りもせず、うっとりとした声で応えた。

「祈っているのですよ。民の絶望、嫉妬、憎悪……その負の感情でこの国が満たされ、私を支える糧となることを」


「……どこまでも不浄な。アン、リズ、雷牙、シオン! その女を直ちに捕らえなさい!」


エカテリーナの号令とともに、最強の従者たちが一斉に地を蹴った。だがその瞬間、マリアの背中から悍ましい赤黒い肉塊が突き出し、彼女の身体を飲み込んでいく。


「アハハハ! 捕えるですって? 下等な猿の分際で!」


凄まじい衝撃波とともに、マリアは巨大な角と翼を持つ真の姿、デーモンへと変貌を遂げた。その暴力的な魔力の一撃により、アンの剣戟も、雷牙の体術も、シオンの暗器も、リズの魔法詠唱も一瞬にして吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられた。


「……っ、皆!」


「次は貴女よ、エカテリーナ! 力のない、権威だけの着せ替え人形が、私に勝てるとでも思ったの!?」


デーモンと化したマリアが、鋭い爪を振り上げ、エカテリーナの喉元へ迫る。

その瞬間――エカテリーナの懐から、太陽を飲み込んだかのような烈々たる光が溢れ出した。


『王家の魔法刻印』力の解放。


「……わたくしが、権威だけ? 笑わせないでくださる。王家がなぜ数百年、この地を統治できたと思っているのです?」


光を纏ったエカテリーナの瞳が、黄金色に燃え上がる。マリアは本能的な恐怖を感じて距離を取り、無数の魔弾を放った。しかし、エカテリーナの姿がかき消える。


「……遅いですわよ」


次の瞬間、エカテリーナはマリアの懐に潜り込んでいた。光を凝縮させた拳が、デーモンの顎を捉える。


「美しくないものは、消えなさい!」


渾身のアッパーカットが炸裂し、巨体のマリアは玉座の間の天井を紙細工のように突き破り、上空へと跳ね飛ばされた。エカテリーナは迷うことなく跳躍し、瓦礫の舞う空へと飛び出す。


「な、何なの……この力はぁぁ!」


空中で体勢を崩したマリアに、全身を魔力の光で包んだエカテリーナが、流星のごとき速度で肉薄する。


「偽りの聖女マリア、身の程を知りなさい」


光を纏った拳が、マリアの胸部を貫いた。風穴を開けられたデーモンの体は、内部から溢れ出す浄化の光に耐えきれず、絶叫とともに粉々に爆散した。


夜空に散るマリアの残滓を見下ろしながら、落下するエカテリーナは懐から黄金の解毒薬を取り出した。


「リズ、解毒薬を二人で拡散しますわよ! ……王都の皆さま、目を覚ましなさい!」


「あいあいさー」


エカテリーナは自らの強大な魔力と黄金の液体を空中で練り合わせ、全霊の力で霧散させ、リズの魔力がそれをさらに拡散させる。

王都の空から、まばゆい黄金の雨が降り注ぐ。その一粒一粒が民の肌に触れるたび、忘念草の中毒症状は洗い流され、人々の瞳には本来の輝きが戻っていった。


光の雨に打たれながら、エカテリーナは静かに、玉座の間へと舞い降りた。


「これにて一件落着ですわ」

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