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最終話:エピローグ

マリアとの決戦から1年。黄金の雨が降り注いだあの日から、王都の景色は一変していた。


「……女王陛下、こちらが隣国との国境警備に関する報告書です。それから、特区の復興予算の最終確認を」


王宮の執務室。かつてマリアが不浄な祈りを捧げていた場所は今、山のような書類と、分刻みのスケジュールに支配されていた。傍らに控えるのは、王国宰相として辣腕を振るうアン。彼女の冷静な瞳は、眼鏡の奥で休むことなく数字を追っている。


「アン、少しは手加減なさい。この1年、わたくしがどれほど過酷な政務に耐えていると思っているのです?」


「陛下、女王の英断は国の安定そのものです」


同じく傍らに控える護衛のシオンは、三人の他に誰もいない広い執務室を小まめに見渡し、任務に励んでいる。


「アン様、問題ありません。鼠一匹、この部屋には入れません。ところで良いワインが手に入ったのですが、今晩夜景を望みながら二人で楽しみませんか?」


「シオン、あなた最近雷牙みたいに軽口をたたくようになりましたね。初めて会ったときは真面目な娘だったのに……今は陛下の御前ですよ」


「失礼いたしました!」


一方、学園ではリズが学長に就任し、研究がろくにされてこなかった魔法に焦点を当てた教育で、次世代の若者たちを育成していた。エカテリーナは、牢獄から解放され隠居した父王から王位を譲り受けて以来、驚異的な速度で復興を進め、隣国の侵略さえも完璧な采配で退けていた。


ハチはエカテリーナの推薦で王国内の観光地情報を編纂する仕事に就き、数冊の本にまとめた。その役目を終えた報酬で国外の観光地を巡っている。旅費が尽きたら王都へ戻ってそれまで得た知識を王都で活かすとエカテリーナと約束して旅立っていった。


目まぐるしい毎日を送るエカテリーナに対する、ある奇妙な噂が広がっていた。

『女王エカテリーナは、ある地域の特産品の利益を独占し、それを自身の「結婚資金」として貢がせている』――と。


その夜、開け放たれた窓から、一人の大男が音もなく姿を現した。


「よう、女王陛下殿。随分と羽振りがいいじゃありませんか。特産品の利益を結婚資金に注ぎ込んでるって前に聞いたような噂が広がってますぜ?」


1年間、気ままな旅に出ていた雷牙だった。今晩、彼はその噂の真意を確かめるというわけではなく、エカテリーナの反応が見たくて忍び込んできた。


「あら、雷牙。不作法な登場ですこと」


エカテリーナは驚く風もなく、月の光の下で優雅に扇子を揺らした。


「……あら、そんな噂が流れていますの? わたくしの結婚資金? ……ふふ、面白いですわね。わたくし、初耳ですわ」


「でしょうね。面白かったから教えに来ましたよ」


「わたくしが知らないところで、わたくしの名前を使って不純な真似をしている輩がいるのかもしれませんわ。あるいは、わたくしは気づかないうちに誰かと婚約させられているのかしら?」


エカテリーナはウキウキとした様子で立ち上がり、魔法刻印の認識阻害魔法を発動させる。


「誰がそんな不純な噂を流し、わたくしの利益をどこへ流用しようとしているのか……。直接現地へ行って、成敗いたしましょう」


雷牙は呆気に取られ、その後、笑い声を上げた。

「はっ! 真偽を確かめに行きますか。ストレス溜まってますね、女王陛下」


「当然ですわ。城に引きこもって書類を眺めているだけでは、真実がわかり対処ができるだけですもの。それらが作り出し変容していく景色を見るのが楽しいのですわ。雷牙、ちょうどいいところに帰ってきましたわね。案内なさい。シオン、アン、リズへの書き置きは?」


「……『直接確かめてくる、あとはよろしく』と書いてあいつらの机の上に置いときました」


「完璧ですわ。さあ、行きましょう! 一年で大きな問題はあらかた片付きましたし、しばらくは留守にしても大丈夫でしょう」


エカテリーナは女王の冠を無造作に机に置き、軽やかな足取りで窓枠に足をかけた。


月明かりの下、女王と従者は、王城から夜の街へと飛び出した。

彼女の気まぐれな世直し放浪記は、気まぐれゆえにいつ終わるかは神のみぞ知る。

いや、存外神様も知った気になっているだけかもしれない。


(完)


あとがき


この度は貴重なお時間を本作に割いて頂きありがとうございました。

自由気ままに書いた作品ですので、私は楽しかったですが、読んで頂いたあなたに少しでも楽しんで頂けていたら最高です。

小説を書いてみると途中で構成の矛盾に気付いて手戻りしたり、辻褄を合わせるために後から間に話を挟んだり、改行やルビの自分なりのルール等、手直ししたり手遅れだったことが結構ありました。


反省点を活かしていきたく、下記の聖女復讐系の作品を書き始めました。

御用お急ぎでない時間ができましたら、何卒一読の程、よろしくお願い申し上げます。


魔力課金聖女の逆襲 〜1分使うごとに1歳老ける私が、世界システムのバグを突いて無双する〜

第1話:聖女のパケ死。~請求金額、一億ゴールドになります~>

https://ncode.syosetu.com/n9681mf/1


それではこれにて失礼いたします。

ご縁がありましたらまたどこかでお会いしましょう。

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