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EP 6

「偽装GPSとウンコ争奪戦」

「……よし。痛い出費だったが、これで奴らを完全に騙せるはずだ」

レオンハート獣人軍のベースキャンプ。

ハガルは、ニャングルに『金貨100枚(約100万円)』という高額なオプション料金を支払い、不敵な笑みを浮かべていた。

この代理戦争には、『旗のGPS位置を1日1回通知する』というルールがある。

だが、資本主義の申し子ニャングルは、そこに「課金によるGPS偽装」という悪魔のシステムを組み込んでいたのだ。

「フフフ……。ルナミスの連中め。今頃、偽のGPS座標ポイントに向かって、無駄な行軍をしていることだろう」

ハガルが偽装先に指定したのは、戦場の外。

『中立VIPルーム』として設定されている、加藤のマイホームだった。

「あそこなら、下手に攻撃すればあの『現人神(加藤)』の怒りを買う。奴らは絶対に手が出せんはずだ!」

完璧な頭脳戦。

獣人たちは、自分たちの賢さに酔いしれていた。

 ◇ ◇ ◇

一方、その頃。ルナミス帝国軍。

「……部隊長。目標の座標はここですが……本当に突入する気ですか?」

「ああ。GPSの反応は、間違いなくこの『白い木造建築』の奥から出ている」

ルナミスの部隊長が、数十名の兵士を引き連れ、加藤のマイホームの庭先に忍び込んでいた。

「オーウ……ユーゴ。これ、絶対にヤバいパターンのやつデス」

「部隊長! 撤退フォールバックしろ! その家は絶対に荒らすな! 俺の戦術マニュアルが『死』を警告している!」

後方から、鮫島とニコラスが血相を変えて制止しようとする。

しかし、功を焦った部隊長は聞く耳を持たなかった。

「黙れ客将! 中立地帯とはいえ、敵の旗が隠されているなら奪うのが戦争だ! 突入ブリーチ!!」

「「「オォォォッ!!」」」

ルナミスの兵士たちが、泥だらけのブーツのまま、加藤の家の掃き出し窓からリビングへと雪崩れ込んだ。

「よし! 座標はさらに奥だ! この『TOILET』と書かれた狭い個室の中に、獣人軍の旗が隠されているぞ!」

「ドアに鍵がかかってます! 破壊します!」

ガンッ!!

ドガァァァァンッ!!

数人の兵士が肩からタックルをぶちかまし、マイホームのトイレのドアを、蝶番ごと見事に蹴破った。

そこに、敵の旗(50kg)はあるはずだった。

「……あ?」

便座に座り。

トイレットペーパーをカラカラと巻き取っていた最中の、無防備な加藤真守(25歳・独身)と、完全に目が合うまでは。

「「「…………」」」

「…………」

数秒の、恐ろしいほどの静寂。

ルナミス軍の兵士たちは、悟った。

便座に座っているこのジャージの男から、メガ・マグローザを両断した時よりも、さらにドス黒く、禍々しいオーラが噴き出し始めていることに。

「おい」

加藤は、片手でズボンをしっかりと引き上げながら。

もう片方の手で、トイレットペーパーのホルダーの上に無造作に置かれていた三節棍『王帝』を、静かに握りしめた。

「ひぃっ!?」

「待てっ! これは誤解だ! 俺たちはただ旗を――!」

「……俺の、人生で一番無防備で、落ち着くプライベート空間を……!」

黄金の【聖気】。

漆黒の【魔力】。

白銀の【闘気】。

三色の極光が、狭いトイレの空間で圧縮され、限界突破の輝きを放つ。

「泥靴で! 蹴り破るんじゃねェェェェェェェェッ!!!」

ゴオォォォォォォォォォォッ!!!

放たれた至近距離からの『王龍波おうりゅうは』。

圧縮された光の龍は、トイレのドアを粉砕した兵士たちを丸のみにし、そのままリビングを斜めに横切り、庭の芝生ごとルナミス軍の小隊を天空の彼方へと吹き飛ばした。

ズギュウゥゥゥゥゥンッ!!!

「ギャアアアアアアアッ!?」

「空が……空が飛べるぞォォォッ……(星になる音)」

後方の安全圏からその光景を見ていた鮫島とニコラスは、無言のまま、そっとヘルメットを脱いで胸に当てた。

「……アーメン。言わんこっちゃないデス」

「……ああ。ボスの『排泄の邪魔』をするとは。戦争犯罪ウォー・クライムにも程がある」

一方、ハガル率いる獣人軍のベースキャンプでは。

「だ、団長ーっ! なぜかルナミス軍の第一小隊が、加藤の家から空の彼方へ吹き飛んでいきました!」

「……え?」

ハガルの顔が、みるみるうちに青ざめていく。

彼は理解してしまった。自分の思いつきの『GPS偽装』が、ルナミス軍を加藤のトイレに誘導し、あの最恐の現人神をガチギレさせてしまったという事実に。

「……や、やばい。加藤の奴……絶対に後で犯人探しをするぞ……」

ハガルはガタガタと震えながら、なけなしの金貨で『防弾チョッキ』を追加購入し始めた。

高度な情報戦は、両軍に等しく「加藤の怒り」という絶対的な死の恐怖を植え付け、戦争をさらなるカオスへと突き落としていくのだった。

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