26話 危機
僕は馬に乗り、城に向かった。
城の前の広場には、騎兵隊が集結しつつある。元々コーネリア王国は騎兵隊どころか、兵士を出す余裕さえなかったのだが、この三カ月でそこは改善されている。
僕は馬を降り、馬は厩舎の兵士に任せた。すぐさま城内に入る。
玉座の間には、主だったものたちが集結していた。姫様、ミカエルさん、ドミニク、それから恐らくは城塞の警備を任されていたであろう将軍たちや、大臣の人たちとか。
「フェイ、よく来てくれました。それではちょっと説明を聞きましょうか」
姫様はそう言った。兵士が答える。
「はっ! 先ほど、東南方の城塞が破られたと報告がありまして、すぐさま知らせに参ったのであります。南方のエリク将軍も、迅速な救援を求めています」
そう言う兵士。
「東南方ですか。にわかには信じ難いですが……」
うめくミカエルさん。
「完全にファーランドとの国境地帯やないか。警備を緩くしたのが仇となったな」
そういうドミニク。
「ファーランドが和平を破ったということでしょうか?」
僕は聞いた。
「信じ難いですが、ありえなくはないですね。エリクには、迅速に救援するから心配するなと言ってください」
姫様が言った。
「わかりました! 失礼!」
兵士はそう言って走って行った。
「姫様、どうなさいますか? ファーランドの和平が破られたかは不明瞭ですが、各国との関係が悪い現状、どうにも身動きが取れませんぞ」
そう言うミカエル。
「まあそうですよね。さすがに私が直接どうにかするというわけには……」
そう言う姫様。
「それならこのフェイ君に頼めばええやんか」
いきなり僕に押し付けるドミニク。
「あ、そうですね。そうしましょうか」
姫様もそんなことを言う。
「いやいや。僕はただの店主なんですよ!? 大体、敵がどんな連中かもさっぱりわからないですし。大体、僕一人ではどうにもなりませんよ!?」
僕は混乱していった。
「さすがにフェイ様一人にどうこうできる問題ではありませんが、騎兵隊をお貸ししますから、せめて敵がどんな連中か調べてきていただけませんかね」
無茶を言う姫様。
「ええ……」
さすがに呆れる僕。
「良いではないかフェイ将軍。手柄を立てるチャンスであるぞ」
勝手に僕を将軍にするミカエルさん。
「勘弁してくださいよ~、僕は平和に過ごしたいんですから……」
僕はそう言ったのだが。
「そのためにも、この脅威はどうにかせねばなりませんわ。フェイ様、ここはひとつお願いします」
そう言う姫様。
「まあ、姫様にお願いされたら聞きますけど……」
さすがに断るのも怖い。
「まあ、ありがとうございます。では迅速にお願いしますね」
笑顔でそう言う姫様。やっぱり大物だよなこの人。
僕は騎兵隊のところに行った。既に集結している。
「このたび、騎兵隊の指揮を任されたフェイ……将軍です。どうぞよろしく」
お辞儀をする僕。
「おいおい、マジかよ。勘弁してくれよ」
僕を子供と見て、露骨に嫌がる副隊長。でかい若い男だ。他の連中も絶対馬鹿にしている。
「とにかく、敵の情報が不明です。急ぎましょう」
僕は言った。
「それは構わんがね隊長殿。騎兵隊ってのは、指揮官が先頭に立って戦うものなんだぜ。お前その勇気はあるのか?」
そう聞かれた。
「もちろんです」
そう答えるしかないだろう。
「はっ!」
僕は馬を走らせる。馬は負けていないだろう。騎兵たちも、文句は言いつつも付いてきてくれる。
騎兵隊は南へと向かう。何が待ち受けるのかは、誰もまだ知らない。




