25話 ペッパーステーキ
それから、三カ月ほどの時が流れた。
僕の店は相変わらず繁盛していた。店員さんたちも商売を覚え、もう何も指図しなくても十分やっていけそうだ。
料理もレベルアップしていた。香辛料をちょっと入れた料理とかも、出せば売れたし、評判にもなった。特に胡椒やシナモンは、それだけで貴族の客でも呼べるほどだ。
「いらっしゃいませー」
うちの店員がそう言った。見ると、顔を隠した怪しげな客が来た。
「ご注文は何になさいますか?」
怪しいと思いながらも、普通に接客する店員さん。
「香辛料を使った料理を頂戴」
そういう客。
「申し訳ございません。あれは今はやってなくて……」
そう言う店員さん。
「そんなのは認めないわ! やりなさい!」
無茶を言う客。
「ええ……」
さすがにびびる店員さん。
「ちょっとお客さん。困りますよ。何の権利があってそんなことを?」
僕は言った。
「えー、いいじゃん。はやく! はやく!」
チンチン、とフォークとナイフを叩いて鳴らす客。
さすがにキレそうになる僕だが、この客には何となく見覚えがある。僕は顔を隠すフードを引っぺがした。
「あ」
「あ」
青い髪の少女。姫様だ。
「何をやってるんですか? 堂々とくればいいのに」
僕はそう言った。
「えー、だってミカエルとかがダメって言うからさ……」
落ち込む姫様。
「まあ姫様なら多少のわがままは許されますよね。んじゃ適当に料理作るんで……」
僕は言った。
「適当じゃダメよ! 真面目にね!」
無茶を言う姫様。
店員たちもさすがに驚いていたが、まあ姫様が無茶苦茶をやるのにはこの国の国民は慣れてるらしく、すぐに平常操業に戻った。他の客もあんまり気にしてないようだ。
「はい、牛肉のペッパーステーキです」
僕は胡椒を振ったステーキを出した。
「おお! おいしそう!」
喜ぶ姫様。匂いを嗅ぎ、ナイフで切ってフォークで刺し、食べた。
満面の笑みを浮かべる姫様。おいしそうだ。
「素晴らしいわね。でも胡椒なんてどこで手に入れたの?」
そう聞く姫様。
「何かリザードマンの商人が売ってくれましたよ。もうそんなには無いですけど」
僕はそう言った。
「へえ、そうなんだ。ドミニクの友達かなあ」
姫様はそう言った。こうして食べていると、普通の女の子と変わらないな。
その時、馬の蹄鉄の音がして、ヒヒーン! という声が聞こえ、ドミニクが降りてきた。走り、中に入ってくる。
「ドミニク!? こ、これには深いわけが……」
言い訳をする姫様。
「姫様、少し……」
ドミニクは姫様に耳打ちをした。
「わかりました。フェイ、悪いけど、すぐさま武装して城に来てくれるかしら」
そういう姫様。
「何かあったんですか?」
僕は聞いた。
「ええ……。詳しくは城で話すわ」
そう言って姫様は、ドミニクの乗ってきた馬に乗り、駆けて行った。




