第一幕
@街道
――王の従者、宿の外で告げて回る。
王の従者「これは国王様じきじきの、大事なお触れである。皆の衆の知恵を期待しておるからして、よくよく考えるように」
――狩人の男、窓を閉めてテーブルに着く。
狩人の男「ヘンッ。偉そうな野郎だな」
宿の女将「本当。あれが他人にモノを頼む態度かしら?」
隠居老人「フゥム。これだけ冬が続くのは、ワシが丁稚をしておった時分以来のことじゃからのぉ。何とも困ったことじゃよ。ホッホッホ」
狩人の男「お気楽で良いな、爺さんは。俺は、かれこれ二週間も獲物を見てねぇってのによぉ。早く春が来ねぇと、秋の蓄えが尽きちまうぜ」
宿の女将「うちも、商売あがったりだよ。薪だの、石炭だの、毛布だのと、何かと冬場は物入りだからねぇ。おまけに、ここ最近、肉や粉の値段が上がってるときてる。堪ったものじゃないよ」
隠居老人「まぁ、そうカッカすることなかろう。なぁに、じきに暖かくなるさ」
狩人の男「こちとら、そんな悠長に構えてられねぇんだよ。このままじゃ、身体が鈍っちまうぜ」
――狩人の男、拳でテーブルを叩く。
宿の女将「ちょいと兄さん。家具や食器は、丁寧に扱っとくれよ。いま壊されても、すぐには代わりを用意できないんだからさ」
隠居老人「ウムウム。若人よ。お主がイライラする気持ちは、痛いほど理解できるぞよ。かつてはワシも、血の気の多い人間じゃったからのぉ。割った皿の枚数は、両手足の指の数では足らんほどじゃわい。ハッハッハ」