表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/86

八十五話目

 俺はメアの手を握りながら、ふと周囲を見渡した。

 まぁ、当然のごとくみんな泣いている。けれど、まずは言おう。

「みんな。本当にありがとう。お前らがいなけりゃ、絶対にできなかった」

「いや、ウル。俺たちは力を貸しただけ。結局はお前の力だよ」

 アレックスが頬に涙の跡を残しながらもそんなことを言ってくる。

「ええ、そうですよ。ウルさんが発案しなければ、私たちは何もできなかったんですから」

「謙遜することないわ。堂々と胸を張りなさい」

 それに、リーシャとヴィクトリアも続いた。

「ああ、そうだ。ウル。お前が、彼女の命を救うきっかけを作ったのだ」

 いつの間にか人型になっていたメリーが告げる。

 すると、ゴーシュも涙をぼろぼろとこぼしながら、

「ウルさん。ここにいるみんな。あなたが引き寄せたんです。本当に、感謝します」

 そう言った。

 何だか、胸が熱くなってしまう。ちょっと視界も霞んできた。

 そんな折、アルトリアが口を挟む。

「ところで、どうじゃ? まだ死にたいか?」

 答えがわかっているだろうに、意地悪な奴だ。

「いいや、死にたくない。メアと共に生きたいんだ」

「それならば、よし。じゃが、もし死にたくなったらいつでもここに来い。あっという間に殺してやるわい」

 口の端をあげながら物騒なことを言うアルトリアに苦笑を返しながら、俺はメアの方に視線をやった。

「メア。今からどうしたい?」

「そうね。とりあえず……」

 彼女はにっこりとほほ笑み、

「少しだけ眠りたいわ」

 とだけ、言った。


 ――あの後結局俺たちも魔力の大量使用によって疲労がたまっており、全員アルトリアの部屋で寝かせてもらうことになった。まぁ、雑魚寝のようなものだったが、それでも十分疲れは取れた。

 そして翌日……俺とメアは二人でみんなに別れを告げていた。

「本当にありがとうな、みんな。よかったら、また会おうぜ」

 俺の言葉に全員が頷いてくれる。と、そこでゴーシュが一歩前に出た。

「自分はいつでもあの森にいます。たぶん、彼女たちと一緒に」

 それに合わせてメリーも口を開く。

「私もいるからたまには来てくれ。なぁに、ドラゴンの寿命は不老不死ではないが、数百年は持つ。しばらくは会えるだろうよ……早ければ私の子供にもな」

「えっ!? お前子ども出来るのか!?」

 するとメリーは頬をポリポリと掻き、

「私もこの前ドラゴンの里から帰った時に聞かされたのだ。正直驚いたよ。だが、まぁ、彼女と私の子だ。立派に育ててみせよう」

 まぁ、マリカの息子だ。こいつならいい父親になるだろう。

「いつか俺の試合にも来てくれよ。その時にゃ、サービスするからさ」

「ええ、もちろんよ。絶対に行くわ」

 アレックスとメアが熱い抱擁を交わすのを微笑ましそうに見ながら、リーシャが小さい紙を渡してきた。

「これ、私の家の住所。来たら御馳走ぐらいはしてあげるわ」

「楽しみにしておくよ。お前の家族たちにも会いたいしな」

 リーシャはクスリと妖艶な笑みを浮かべながら、メアの方に寄った。

「メア。しっかりやりなさい。男はだらしないんだから、女がしっかりしなくちゃダメよ?」

「ええ、わかってるわ」

 そこで否定はしないらしい。やはり頼りないと思われているようだ。

「ウルさん。私はあなたたちと出会えて本当によかったです。いつかまた、会いましょう」

「ヴィクトリア。もちろんだ。絶対に会いに行くよ」

「二人がちゃんと来るのを待ってますよ? もし来なかったら呪いますからね?」

「洒落にならんことを言うな」

 ヴィクターの子孫というだけあって信憑性がありそうだ。これは行かないと酷い目にあわされそうである。

「お主ら、別れの涙は無粋じゃぞ?」

 泣き出しそうになっている面々を見ながら、肩を竦めるアルトリア。俺はすぐさま彼女の方に駆け寄り、頭を下げる。

「ありがとう。アルトリアがいなかったら、俺の願いは絶対に叶わなかった」

「ああ、よいよい。それより、いつか時間があれば妾のところにもよってくれ。いろいろ積もる話もあるじゃろうからな」

「もちろん。約束だ」

 俺は最後に彼女とがっちり握手を交わして、メアの方に寄った。

「メア。そろそろ行くぞ?」

「わかったわ。みんな、元気でね」

 最後にみんなの顔を見渡しながら、俺は言ってやる。

「ありがとう。みんな。またいつか会おうぜ」

 さぁ、これ以上いると泣きそうだ。すぐさま出発しなければ。

「《天使の翼・今ここに顕現せよ》!」

 刹那、俺の背中から白い翼が出現。俺は感覚を確かめるため羽ばたきつつ、メアの肩を抱いた。

「さぁ、行くぞ」

「ええ、行きましょう」

 瞬間、俺は力強く羽ばたき空へと舞い上がっていく。

「じゃあな! みんな! 本当にありがとう!」

「またいつか会いましょう!」

 最後にみんなに手を振り返してから、俺たちは空を飛んでいく。

 ちょうど朝日が昇ってきたころ。俺たちの体を綺麗な朝焼けが照らしていく。

「なぁ、メア。これからどうする?」

「そうね。とりあえず行きましょう」

「ああ、そうだな。生きよう」

 俺たちは不老不死。ならば時間は無限だ。

 いっぱい色んなところに行って、遊んで、楽しんで。

 たくさんのものを見て、食べて、楽しんで。

 そして――一緒に生きるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ