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八十三話目

 あれからどれくらい経っただろうか?

 小屋の中を覗こうにも強力な結界が張られていてみることすら叶わない。俺やメリーたちは全員黙って外でうろうろしているだけだった。

「なぁ、ウル」

 アレックスが不意に語りかけてきた。

「お前の使った術ってのは普通どれくらいかかるんだ?」

「普通は一、二時間程度で済むものじゃない。もっとかかるさ。けど……アルトリアのことだ。時間操作なり詠唱の簡略化なりして短時間でやることは可能だろうよ」

 そう。本来あの禁術は膨大な時間と労力を費やす。

 しかし、今回は開発者であるアルトリアが術を行うのだ。何かしらの対処はしてくれると思う。

「とりあえず、今の俺たちにできることは祈ることだけだ」

「……ああ、そうだな」

 アレックスは近くの岩場に腰掛け、両手を胸の前で組む。とはいえ、すぐに受け入れることはやはり難しいのか、貧乏ゆすりをしていた。

 そんな折、メリーが不意に口を開く。

「しかし、ウルよ。よく思いきることができたな。不老不死の術をかけるとは」

「ああ。本当ならこの手は使いたくなかった。でも、メアが俺に言ったんだ。『生きたい』って。だったらそれを叶えてやるのが当然だろう?」

「そうだな。しかし、そうなったときはちゃんと責任を取ってやれよ?」

「わかってるさ」

 不老不死は呪い――それは俺が一番よく知っている。だからこそ、俺は彼女に対して責任を取らねばならない。それこそ一生だ。

「まだ終わんねえかなぁ」

「大丈夫ですよ、アレックスさん。もうすぐです」

 ゴーシュがキッパリと断ずる。こいつは魔法技能は持っていないが、こういったときは一番頼りになる。何というか、強い芯を持っているのだ。

 思えばこの旅もこいつの助けなしには叶わなかっただろう。そう思うと、やはりゴーシュは俺たちにとってかけがえのない存在だった。

 などと思っていると……小屋のドアがゆっくりと開かれ、そこから黒いローブを纏ったアルトリアが出てきた。

「アルトリアッ! どうだったんだ!?」

 彼女はゆっくりとフードを外しながら、

「成功じゃ。もうあの娘は不老不死。何なら確認してみるか?」

 言われるがまま入ってみると、部屋の中央には魔方陣とその上に寝転ぶメアの姿が映ってきた。リーシャとヴィクトリアはその傍でわんわん泣き叫んでおり、メアは彼女たちの頬を優しく撫でていた。

「見ておれ。メア。ちょっと失礼するぞ」

 言うが早いか、アルトリアはナイフを取り出してメアの腕に薄い切れ込みを入れる。すると、数秒もしないうちに肉が蠢いて傷が消えた。

 これはよく知っている。俺が、一番見慣れている光景だ。

 ああ、間違いなく、彼女は助かった。

 そう思うと、俺の双眸から涙が滝のように溢れ出てきた。

 それを見てメアはふっと頬を緩め、

「みんな泣き過ぎよ? ほら、見て。私は生きている」

 そう――堂々と告げるのだった。


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