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八十二話目

 すさまじい勢いのまま、メリーは力強く羽ばたいていく。

 景色が次々に切り替わり、高度が上下する。

「メリー! まだ行けるか!?」

「無論だ! アレックス! 強化魔法を重ねろ!」

「わかったよ!」

 瞬間、アレックスがメリーの体に拳を打ちつけ、魔法を付与。

 するといっそうメリーの速度が増し、グイグイと先へ進んでいった。

 チラリと横を見れば、ゴーシュがメアを墜ちないように抱きしめているのが見えた。自分だって高いところが苦手なはずなのに、少しでも自分にできることをやろうとしてるらしい。正直、ありがたいことこの上なかった。

 やがて一際高度を上げたところで――

「見えた!」

 メリーが力強く吠えた。

 そこに見えたのはごつごつと角張った山。おそらく、その頂上にいるのだろう。確かに目を凝らすと魔法避けの結界のようなものが張ってあった。

「おおおおおおおおおおおおおっ!」

 メリーは一層加速し、結界ごとぶち破って中に侵入。それを受け、俺たちはすぐにその体から飛び降りた。

 すると、その騒ぎを聞きつけてか、アルトリアが奥にあった小屋の中から姿を現した。

「おやおや、お前かい。どうしたんだい? 今日は一体」

「決まってる。こいつを不老不死にしてもらいに来た」

 それを受け、アルトリアはメアの方に視線を寄せる。が、すぐに状況を理解したようでこちらに力強い視線を向けた。

「覚悟はでき取るのか? 不老不死がどれだけ辛いものか、お主なら知っておろう?」

「ああ、知ってるさ。けどな、メアは何もしなかったらこのまま死んじまうんだ。もうこれしか手はないんだ」

「ふぅむ……なるほどのう。病などはないかえ?」

「あった。が、もう治った。はずだ」

「未確定か。ならば、お嬢ちゃん。ちょっと失礼するよ」

 そう言ってアルトリアはメアの頭に手をかざし、何かを詠唱。それからしばらくして手をそっと離した。

「なるほどのう。病は完治しておるようじゃ。ならば、何の問題もあるまいて。万が一病を発症しておれば、生きながらにしてその病に苦しむことになるからのう。いや、よかったよかった」

 それだけ言ってアルトリアはくるりと踵を返して小屋の方へと向かっていった。俺たちもその後に続く。

「おっと。ウル。お主はあまり入りすぎるな? この先は強固な結界ができとるでな。不要に入ればお主の体がただでは済まんぞ?」

 なるほど。退魔の魔法か。俺の体はほとんど魔法に近いし、それならば仕方ない。

「リーシャ。ヴィクトリア。メアについていってやれ。頼んだぞ」

「もちろんよ。任せなさい」

「何かあったら私たちも手伝いますから」

 それにアルトリアは軽快な笑いを返す。

「カカッ! たかが十年ぽっち生きているだけの小娘たちがよく言うわい」

「そういうあなたはどれほど生きているのです?」

 ヴィクトリアの問いにアルトリアは首を傾げたものの、

「ざっと千年くらいかのう? 長生きしとると時の流れに鈍感でな。詳しいことは覚えておらんわな」

 たぶん、千年というのはあながち間違いではないだろう。不老不死の術が開発されたのがそれくらいだと両親から聞いていたし、とすればアルトリアは俺のとんでもないご先祖ということになる。まぁ、これは言わない方がいいだろうが。

「さて、入ろうか。まぁ、安心しておれ。必ずや成功させてみせよう」

 そう告げるアルトリアの後姿は、なぜかとても頼もしかった。


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