七十七話目
さて、宴会も終幕を迎え、すっかり夜も更けたころ、俺は一人空を見上げていた。
おそらく、メアはあと数日で死ぬだろう。ならば、せめて死ぬその寸前まで楽しい思いをさせてあげたい。
けれど、俺に何ができるだろうか?
俺はこの数百年ずっと牢獄に閉じ込められてきた。
馴染みの地に行こうとも、すっかり変わってしまっている場合だってある。
とすれば……少なくとも俺にはアレックスやリーシャたちのような真似はできない。この世界のことをほとんど知らないも同然だし、仮に馴染みの地に言っても満足に案内できるかわからないからだ。
俺は今一度大きく息を吐き出す。それは夜の闇に溶けていき、虚しく消えていく。
もしここにアリシアやレックスたちがいれば、どれだけよかっただろうか?
きっと知恵を貸してくれたに違いない。
そうだ。あいつらはいつでも俺の力になってくれた。
それを、彼女たちをなくして数百年経ってからようやく気付くとは、俺は相当の大馬鹿だ。
もう一度息を吐き出す。すると、今度はなぜか涙まで一緒に出てきた。
「ったく……」
メアに見られたら笑われてしまう。俺は急いで服の袖でごしごしと拭った。
「……まぁ、出来る限りのことはしよう」
そうだ。俺は誓ったのだから。
もう二度とこんな後悔の念を抱かないよう、彼女に尽くそうと。
思えば、アレックスたちは本当にレックスたちの生まれ変わりなのかもしれない。
俺のことは知らないが、雰囲気がとても似ている。
きっとあいつらはこうなることを見越していたのかもしれない。
「……悪いな、みんな」
俺は謝罪を口にしながら目を閉じる。
瞼の裏に浮かんでくるのは懐かしい光景。
それが流れるのにつれて、目頭が熱くなっていった。




