七十五話目
それからは大宴会と表現するにふさわしいものが催された。
流石は希少種が集められただけはあって、ドラゴンの里に勝るとも劣らないものだった。
しかも、ゴーシュと親しい女性型の魔法生物たちが給仕をしてくれたりお酌をしてくれたりする。ハッキリ言って至れり尽くせりだ。
おかげですっかり時刻は昼。どうやら今日はこのまま夜通し宴会をするらしく、さっき小屋の方を見てみたらゴーシュが汗だくで調理をしていた。
俺たちなら魔法を使えば一発なのだが、あいつはそうはいかない。
けれど、だからこそだろう。それがゴーシュの魅力でもあった。
しばらくしたところで、メアがほぅと息を吐く。
「ちょっとお腹いっぱいになっちゃったわ。少し休ませて」
「では、こちらへどうぞ」
メアはトコトコとグールの後をついていく。その後ろ姿を見ながら、ヴィクトリアが関心の声を漏らした。
「女性型のグールですか……存在自体がレアなのに、心まで通わすなんてゴーシュさんは天賦の才がありますね」
「だよな。あいつ学校に来てりゃ絶対成功してたぜ」
アレックスがそれに同意を示す。実はそれも俺は感じていたことだった。
あいつは魔法使いの家系から出ていないから魔法学校には入れないが、それでもあの才能は希少なものだ。
一見すると女性型に好かれているようだが、実はそうではない。
椅子ウサギとも心を通わせていたし、きっと魔法生物を安心させうる何かを持っているのだろう。当然、ゴーシュが接している魔法生物たちにも危険なものたちはたくさんいる。先ほどきたグールなどもその一例だ。
なのに、俺はあいつがけがをしたところを見たことがない……いや、性的被害は受けているかもしれないが、それでもすごいことだ。
「本当惜しいわね。ウル。あなたよりよっぽどすごいんじゃない?」
「馬鹿。俺は学年主席だった男だぜ? 一応お前のご先祖様より成績は上だったんだ」
「過去の栄光にすがる男は嫌われるわよ」
しょうがないだろう。俺は人生の大半を暗い牢獄で過ごしてきたのだから。
「それにしてもウルよ。お前に死相が見えると言っていたが、何かそれらしい異変はあるか?」
メリーが神妙な口調で告げる。
「いいや、大丈夫だぜ。至って健康だ」
確かにガリーナから言われてから体調には人一倍気を遣っていたが、それらしいものは感じられなかった。
とすれば、やはり考えられるのは『死にそうなくらい大変な目に合う』というものだろう。
まぁ、その時はその時だ。なってから考えよう。どうせ俺は死ねないのだから、気にするだけ無駄だ。
そんなことを思いつつビールを煽る。
俺が死ぬかはこの際関係ない。何故なら俺は……彼女のために尽くすと決めたのだから。




