七十四話目
さて、早速朝食となったわけだが……
「これはありかよ?」
俺は目の前に広げられた大量の料理に圧倒されていた。
しかも、こうやって待っている間にも流れてくる。
「さぁ、たんと食べて下さい」
ゴーシュが胸を張りながら言う。どうやら今はアシスタントたちに任せているようだ。
俺はそちらに視線をやりつつ、苦笑を返す。
「いや、こんなに食えねえよ」
「でも、ほら」
ゴーシュが指さす方を見てみれば、そこではメアたちがガツガツと料理を頬張っていた。
「本当に美味しいわね……ゴーシュ。ウチの料理長にならない?」
「いやぁ、それはありがたいですけど、遠慮しておきます」
ああ、わかるぜゴーシュ。行ったら怒られそうだもんな。
「まぁ、それならしょうがないわね」
「申し訳ありません」
「いいわよ。それよりもっと料理を持ってきてちょうだい」
「わかりました」
にっこりと笑ってゴーシュは小屋の方へと戻っていった。
すると、それに入れ替わるようにして奥の方から一人の女性――おそらくラミアがやってきた。その後ろには、おそらくこの森に住まうであろう魔法生物たち。
なるほど。宴会は確かに大勢でやった方が楽しい。ゴーシュは事前に彼女たちにこのことを打ち明けていたのだろう。
まぁ、色々大変だったみたいだが……ありがたい。
「いっぱい来てくれたわね」
「ああ、そうだな……って、ああっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。というのも……そこに椅子ウサギの姿があったからだ。
そう言えばあいつのこと忘れてた……悪い、椅子ウサギ。
「ガルゥッ!」
「げっ!?」
こちらに気づいたらしき椅子ウサギはもうダッシュで俺の方めがけて駆けだし、すさまじいタックルを食らわせる。本人的には感動の再会を演出しているつもりなのだろうが、俺にとってはただの攻撃にしか思えなかった。
「グルゥ」
愛おしげに俺の頬を撫でてくる椅子ウサギ。嬉しいが、ちょっとやめてほしい。
「久しぶりね、元気だった?」
「ガウッ!」
相変わらずメアには懐いているようで、タックルを食らわすこともなく彼女にすり寄っていく。メアは慈愛に満ちた顔で奴の頭を撫でていた。
「いい子ね。やっぱりあなたは優しいわ」
「ガウゥ」
野生の勘か、椅子ウサギは彼女の命が短くないことを本能的に悟っているらしい。行動の節々から、メアもそれを感じているようだった。
というか、ガリーナの言う通りなら俺にも死相が出ているらしいのだが……やっぱり死なないんじゃないのか?
それか、単に椅子ウサギが俺のことを嫌っているかだろう。
仮に後者だとしたら、俺は泣きたくなる。
などと思っていると、また小屋の方から料理を持ってきた者たちがいた。その数およそ……十人。ゴーシュの奴、本当にハーレムを作れそうだ。
「一応言っておくが、まだあれで全員じゃないぞ」
メリーが最後に言い放った言葉が、何故か妙に耳に残った。




