七十三話目
明朝、俺とゴーシュは二人で市場に出かけていた。
あまり近くの場所だとまた追っ手が来るかもしれないので、かなり遠い場所――チュロムの街に来ている。ここはそこまで大きな町ではないが、それなりに多くの者が集まっていることで有名だ。
当然、それに見合うだけの物品も多く揃えられている。
「で? 何を買うんだ?」
一応金に関してはある。昨日リーシャに相談したら速攻でくれた。こういう羽振りがいいところもアリシアにそっくりだったりする。
俺の答えにゴーシュはニッと微笑み
「とりあえずたくさん食材を買おうと思いまして」
ゴーシュには別段俺たちのような魔法技能があるわけではない。けれど、料理に関してはピカイチだ。きっとそれを作るつもりなのだろう。
俺はそれに頷きを返し、多くは語らずその後をついていった。
するとゴーシュはまず近くの露店に立ち寄った。そこでは大量の見たこともない野菜が並べられている。
「すいません。ここにあるもの全部下さい」
「ぜ、全部かい?」
戸惑った様子の店主にゴーシュは力強く頷き返す。
「もちろん。全部、下さい」
「お、おう……」
すいません、店主さん。ゴーシュの奴、金がいっぱいあるからってちょっとやり過ぎじゃないか?
しかもそれはずっと続いた。もうほとんどの店の品物を買い占めたところで、ゴーシュは力強く胸を張る。
「よし、もう大丈夫です!」
「そうか。よかったな」
たくさんもらっていた金もほとんどなくなった。俺はすぐさまゴーシュの方を向き、魔方陣を展開させ、元の場所へと戻っていった。
やがて森へ帰ってきたところで、こちらに気づいたらしいメリーたちが寄ってきた。
「何を買ったのだ?」
「街にあった食材ほぼ全部。やり過ぎだっての」
「すいません、でも、その分腕を振るいますよ」
もう時刻は午前七時。ちょうど朝食にはよい時間だ。ゴーシュはそそくさと小屋の方へと向かっていく。
「あ、何か手伝いましょうか?」
ヴィクトリアが言うが、ゴーシュはそれに苦笑を返す。
「いや、大丈夫です。だって……」
その言葉に応じるように、森の奥で何かが蠢く。
「彼女たちがいますから」
どうやら、ゴーシュのことを気に入っている魔法生物たちがサポートしてくれるらしい。
それでもリーシャとヴィクトリアは何かを言おうとしていたが、
「まぁ、安心しろ。彼女たちがいるなら大丈夫だ」
と、メリーに言われ押し黙った。
その様子を見つつ、ゴーシュは小屋の方へとかけていく。その後ろ姿は、以前見た時よりも大きくたくましく俺の目に映った。




