表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/86

七十二話目

「もう行くのかい?」

 ガリーナがポツリと告げる。

「せっかくだから泊まっていけばいいのに」

「悪いけど、今日は帰るよ。明日もあるしな」

「そうですか。では、皆様に竜王の祝福があらんことを」

 ガリーナに手を振りつつ、俺たちはメリーの背に飛び乗った。すると徐々に高度があがっていき、里が米粒ほどの大きさとなる。

「どうだった、メア。楽しかったか?」

「ええ、とても。あの後ガリーナに色んなところへ連れていってもらえたわ。美味しいものも、たくさん食べたもの」

「ああ、それはよかったな」

 くしゃくしゃと彼女の髪を撫でる。

 ああ、温かい。彼女は今生きている。

 それはどれだけ素晴らしいことだろう。

「ねえ、ウル。大丈夫?」

「ん? ああ、俺は大丈夫だよ」

 きっと彼女はガリーナから聞いたのだろう。俺にも同様の死相が出ているということを。優しい彼女のことだ。自分のことよりも俺のことを気にかけてくれているに違いない。

「ところでウルさん。明日ちょっと朝早く起きてもらってもいいですか?」

 ふと、ゴーシュが口を挟む。俺はメアに断りを入れてから彼の方に寄った。

「どうした?」

「明日、自分の番ですよね? 自分は魔法も使えないのでちょっと補助してもらいたいんです」

「なるほどな。それくらいならいくらでも手伝うぜ」

「ありがとうございます」

「で、どこに行くんだ?」

 そこでゴーシュは息継ぎを挟み、

「市場に行こうかな、と」

「市場?」

「はい。あ、でも何をするかは言いませんよ? やっぱりサプライズは大事ですから」

「わかってるって。俺はお前の送迎だけすればいいんだろ?」

「すいません、そうなります」

「謝らなくていい。ま、一緒に頑張ろうぜ」

 おそらく、メアが生きていられるのはあと数日。その間どれだけ良い思いをさせてあげられるかが、この作戦の肝だ。

 俺は深いため息をつきながら空を見上げる。

 静かでうっとりするほど綺麗な月が、俺たちを照らしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ