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六十九話目

 俺たちはすぐさま儀式の準備に取りかかった。ヴィクトリアが魔方陣を展開させ、そこから必要な道具をありったけ集め、ガリーナを筆頭に男たちは近くにある薬草などを採取してきた。

 確かに前回は失敗に終わった。けれど、今ならどうだ?

 俺一人ではなく、高位の魔法使いたちが集結している。おまけに場所的にも最高だ。儀式を行うにはやはり神性の高いところや魔力のたまり場などが最高である。もはやこの上ない状況だ。

「さて、準備はよろしいですか?」

 メアを中心に、ゴーシュを除く五人で五芒星の形を取っている。ガリーナは今回は補助。もし何かしらの不具合があった場合、外から修正を行う係りだ。

 ゴーシュは流石に魔法使いではないので今回は引いてもらった。とはいえ、ただ見ているだけではないようで何かあればすぐメアを助けられるように控えている。本当にありがたい。

「俺は良いぜ」

「私も大丈夫です」

 アレックスとヴィクトリアが堂々と告げる。

「私もいいわよ」

「同じく、行ける」

 リーシャとメリーが緊張した面持ちで言う。

「俺もだ。行けるぜ」

 最後に俺が頷いたところで、ガリーナは開始の合図を出した。

「では……これより儀式を行います!」

 直後、五芒星の形をした魔方陣が鮮やかな光を放つ。それと同時、俺たちは呪文を紡いでいった。

『《偉大なる神よ・貴殿の摂理を捻じ曲げ我らは進もう》』

 光が一層増す。メアはどこか怯えたようにそれを見ていた。

『《恐怖を・憎悪を・死を・全てを忌避し遠ざけん》』

 メアの周囲で空気が渦を巻く。ここまでは順調だ。

『《いかなるものが立ちはだかろうと・我らの歩みは止められない》』

 この時――メアの体に異変が起きた。彼女の体がまばゆく発光しはじめたのである。

「これはまさか……いけるかもしれません!」

 ああ、そうだろう。行こうぜ、みんな。やってやろうぜ!

『《森羅万象あらゆるものを覆し・我らは覇道を突き進む・例え死が行く手を遮ろうとも》!』

 詠唱が完了した。それと同時メアの体から出る光が増していき――やがて彼女を包み込んだ。

「どうなったんだ?」

 そう問いかけた時だった。その光が急速に弱まっていったのは。

「どうなったの……?」

「ガリーナ。死相は見えるか?」

 返されるのは――首肯。それは、最悪ともいえる知らせだった。

「残念ですが、まだ死相が見えます。儀式は確かに成功しました……が、何故か死相が見えるのです。それも、ハッキリと」

「そんな……嘘だろ?」

 儀式が成功したのは俺でもわかった。けれど、何故死相が残ったままなんだ?

「理由はわかりません。ただ、結果的に言うならば……運命は変えられなかった、と」

 ガリーナが口惜しそうに呟く。いや、全員が悲痛な面持ちでそこにいた。

 けれど、メアだけはひとり笑いながら言った。

「みんなどうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?」

「どうしてって……そりゃお前」

「私は、みんなが笑っている顔が好き。なのに、そんな顔されたらせっかくの旅行もつまらなくなっちゃうわ」

 ああ、そうだろうな。けど、悪い。とてもじゃないが、笑えない。

 俺たちは彼女を救えなかった。これだけ力のある魔法使いたちが揃っていても、一人の少女すら救えなかった。

 つくづく自分が、自分の弱さが――嫌になる。


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