六十三話目
ドデカイ花火がようやく夜空に咲き、そこで宴は終了となった。
ここで俺たちが学んだことが一つ。何事にも限度があるということだ。
最初は確かに美しかった。けれどおよそ数万発の花火が放たれ、その度に轟音が響くものだから目も耳もちかちかしてしまった。
まぁ、メアは楽しんでくれたようだ。終始目を輝かせていたし、花火について知りたいのか時折リーシャに質問を投げかけていた。
が、もう彼女は夢の中。すやすやと安らかな寝息を立てながらリーシャに抱きかかえられている。そこで不意に、リーシャが口を開いた。
「……もう帰りましょうか?」
「だな。それよりまず……」
言いつつ、俺は右端の方に視線をやった。そこにはべろんべろんに酔っぱらったアレックスとゴーシュの姿。二人とも既に舟を漕いでいる。早く帰した方がよさそうだ。
俺はゆっくりと立ち上がり、アレックスに手を差し伸べる。
「おい、立てるか?」
「うぅむぅ……もう飲めん」
あ、これはダメだ。もう脳細胞がやられている。
「リーシャ。すぐ行こう。こいつら早く寝させた方がいい」
「そうね。また明日もあるし、今日はここでお開きにしましょうか」
すぐさま魔方陣が展開され、俺たちの視界が切り替わる。
森はすでに静かで魔法生物たちも寝静まっているようだった。
耳を澄ませば聞こえてくるのは木々のさざめきと、風の鳴き声。それと、ゲロゲロと言う気味の悪い音。
案外魔方陣での転移と言うのは体にかかる負担が大きい。たぶん、二人はそれに耐えきれなかったのだろう。見なくても何となく想像できた。
「はぁ……最悪」
リーシャがふっと肩を竦める。それにヴィクトリアは苦笑で答えた。
「しょうがない。お前たちは帰っていろ。私が二人の介抱をしておく」
「なら、メアはこっちで引き取るわ」
リーシャはメリーからメアを受け取り、そそくさと森の奥へ消えていく。
一方でメリーは嘔吐する二人の方へ寄っていった。
「大丈夫か?」
しかし答えは返ってこない。汚い水音だけがあたりに響いた。
「むぅ……どうしたらよいものか?」
「ほっとけ。全部吐けば楽になるさ」
言いつつ俺はゴーシュの背をさする。その時不覚にもゴーシュの吐いた物を視界に入れてしまった……夢に出てきそう。
俺がさする様子を見て、メリーもアレックスの背中をさすった。無論、その巨大な指で。
ますます勢いを増していく二人の嘔吐に、俺は軽い吐き気を覚えた。
たぶん、もらいゲロだろう。だが、何とかこらえる。ここで吐いてはみっともない。
俺とメリーは互いに吐き気をこらえながら、二人の背中をさすっていった。




