六十一話目
しばらくして船は港に着いた。けれど、やはりメアは酔いがさめていないようで苦しそうに息をついていた。
ゴーシュとヴィクトリアの介抱のおかげでだいぶ楽にはなったようだが、まだ油断はできない。彼女は木陰の方で寝転がっていた。
「大丈夫?」
リーシャがメアに優しく問いかける。彼女はそれに小さく頷きを返すだけだった。
「困ったわね……どうしたものかしら?」
「水飲みますか?」
ゴーシュが再び水を差しだしながら告げる。メアは水稲にちょいと口をつけ、コクリと少しだけ飲んで朗らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう。だいぶ楽になったわ」
「何か持ってきましょうか?」
「大丈夫よ、ヴィクトリア。すぐよくなるわ……みんなもそんなに見ないで。恥ずかしいわ」
俺たちはメアの周囲をぐるりと囲んでいたが、それがむしろ気を遣わせてしまっていたらしい。俺たちは苦笑しつつ顔を見合わせあった。
「リーシャ。酔い止めの薬なんかはないのか?」
「確か船の中に……案内するわ」
言ってリーシャとアレックスはそそくさと船の方に向かっていく。その後ろ姿を見ながら、俺はポツリと呟いた。
「なぁ、メア。本当に大丈夫か?」
船酔いとはいえ、彼女は病人だ。万が一と言うことも考えられる――が、彼女はふっと笑みを浮かべて言い放った。
「平気。ウルは心配し過ぎよ」
「馬鹿野郎。心配に決まってるだろうが」
当たり前だ。メアは俺――いや、俺たちにとって大事な存在の一人だ。
「お前はもっと自分を大事にしろ。いいな?」
「……ウルには言われたくないわ」
「屁理屈いうな、馬鹿」
ああ、そうだ。俺は今まで自分を大事にしてこなかった。
だからこそ、言わなくてはいけないのだ。彼女を俺のようにしてはいけない。俺を反面教師としてくれなければ困る。
「薬、持ってきたわよ」
見ればリーシャとアレックスが山ほど薬を持ってきている。それに対してメアは、
「……そんなに飲めないわ」
ぽそっと、小さく言った。




