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五十八話目

 さて、翌日。俺たちは例の如く広い場所に出ていた。

 流石に昨日は夜遅くまで飲み食いしていたというだけあってまだ眠そうにしているものもいた……と言っても男性陣だけだが。

 中でも酷いのがゴーシュとアレックスだ。アレックスはまぁ、わかる。昨日調子に乗って酒を酔いつぶれるまで煽っていたからだ。最終的にはメリーがおぶさって帰っていたほどである。

 しかしゴーシュは……わからない。

 昨日はお酒を控えめにしていたみたいだし、帰ってくるなりそそくさと寝床に戻っていった。睡眠不足になる要素は……。

 と、思っているところで不意に奴の首元に赤い点が見えた。同時、俺の中で回路が繋がる。おそらく、例の子たちにやられたのだな、と。

 昨日ゴーシュは最後までウエイトレスの子に迫られていた。たぶん、匂いがついていたのだろう。それに目ざとい種族がいたのか勘付かれたみたいだ。可哀想に。

 大きなあくびをしている二人を見ながら、ヴィクトリアが困ったように告げた。

「お二人とも、大丈夫ですか? 今日もまたどこかに行くかもしれませんよ?」

「大丈夫だよ。体力だけは自身があるんだ」

「自分も伊達に軍隊にいたわけではありませんから、体力はある方ですよ」

 立派なことを言っている……が、それならせめて欠伸を止めてから言ってほしいものだ。

 と、そこでリーシャが凛とした声を上げる。

「皆さん! 準備できましたよ!」

 彼女が地面に描いていたのは特大の魔方陣。俺たちは言われるままそこに飛び乗った。

 そして、変身魔法をかけようとするヴィクトリアに向かってリーシャは言う。

「ヴィクトリア。今日は姿を隠す必要はありませんよ」

「え? ですが……」

「いいから。言う通りに」

 渋々と言った様子で食い下がるヴィクトリア。けれど、リーシャは堂々とした様子で俺たちの方を見渡し、

「さ、行きますわよ!」

 思い切り手を打ちあわせた。

 直後、また転送されるときの感覚が体を襲い、それから解放されるとそこには――

「……え?」

 一面の、白い砂浜と青い海が広がっていた。

 海水の純度がかなり高く、海面が見えるほどだ。しかも、砂浜に落ちていることが多いゴミなども見当たらない。

 唖然とする俺たちに向かって、リーシャは告げる。

「皆さん、ようこそ。私たちの家族の別荘があるセントクリア島へ」

「別荘……ってことは、この島一帯が丸々お前らの領土なのか?」

「ええ、当然」

 俺の問いに平然と返すリーシャ。思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 が、一番驚いているのはメアだ。どうも海水自体を見るのが初めてらしく、時折掬って舐めてみては顔をしかめさせていた。

 ある程度俺たちが落ち着いたのを見計らって、リーシャが叫ぶ。

「さ! 今からクルージングと参りましょう。船の上で食べる朝食というのもなかなかに乙でしょう?」

 それだけ言ってそそくさと別方向に歩き出していく彼女の後を俺たちは追っていく。

 アリシアは金持ちだったことを知っていたが、年を経てもそれは変わっていない、どころかますますすごくなっていたらしい。まさか島を持っているとは、正直言って驚いた。

 また、この島というのはかなり空気がいい。あの森と同じか、それ以上だ。

 ここならメアの身体にも悪影響は少ないだろう。リーシャは案外ぶっきらぼうな口調になることも多いが、心根は優しい。ここら辺はアリシアと一緒だ。

 しばらく歩いたところで、クルーザーというには大きすぎる船が見えてきた。あれはもはや――フェリーである。ドラゴンの姿をしているメリーですら軽々と乗れそうなほど広い甲板を有していた。

「さ、参りますよ」

 また一人歩いていくリーシャ。やっぱりそこらへんも、どことなくアリシアに似ていた。


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