四十五話目
しばらく俺たちは無言だった。息もつまるほど重苦しい空気が俺たちの間に流れる。
けれど、女子陣が戻ってきてからは努めて平静にふるまおうとした。
「? 何かあったんですか?」
ヴィクトリアが不思議そうに告げる。それを聞きアレキサンダーは何かを言おうとしたが、グッと口をつぐんだ。おそらく、余計なことを言うのを防いだんだろう。あいつなりに気を遣ってくれたんだ。ありがたい。
「……まぁ、いいですけど……何かあったんですかね?」
「男なんて気まぐれなものよ」
ぶっきらぼうな口調でリーシャは言ったが、チラリとこちらに目配せしてくれた。彼女も気を遣ってくれているらしい。たぶんメアのことは知らないだろうけど。
「……なるべく、早めに言わないとな……」
彼女たちとはまだ一緒にいるだろう。ならば、知らせねばならない。メアのことについて。
けれど……中々の重圧だ。これを俺の口から言うのは荷が重い。
「さて、メア。次は何をしましょうか?」
無意識に、彼女の名を聞いた途端アレキサンダーが体を揺らした。俺はほかのみんなにばれない様に奴をはたき、
「馬鹿。メアに気付かれたらどうする」
「すまねえ……つい……」
「次は気をつけろよ」
気持ちは十分わかる。だから、俺はそこで手を引きメアたちの会話に耳をそばだてた。
「そうね、次は……何かここら辺で綺麗なものを見たいわ」
「だ、そうですよ。メリーおじ様」
おじ様、か。まぁ昔からの付き合いだったらそう呼ばれるだろうな。
メリーはやや困ったような顔になりながらも告げる。
「そうだな……近くに花畑があるが、そこでいいだろうか?」
その問いにメアはにっこりと笑って答える。
「ええ、お願いするわ。だって私、お花畑って図鑑でしか見たことがないんだもの」
外出したことがないならそうだろう。というか、彼女にとってはほとんどが初めての経験のはずだ……それができる時間は限られているが。
「じゃあ、そこに行きましょうかしらね。男たちが終わり次第だけど」
棘のある言い方をするリーシャ。それを聞いてメリーとゴーシュは食器を洗う手を加速させていった。やっぱり家で尻に敷かれているに違いない。反応がまさにそれだった。




