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四十四話目

 さて、あらかた餌もなくなり昼飯時になると俺たちは撤収作業を開始しその場を後にした。

 結局、一番釣れたのはメアとリーシャ。ゴーシュ、ヴィクトリアと続いて、俺とアレキサンダーが同率でドベ――釣果なしだった。

 いや、正確にいうなら俺は魔法で数匹を吊り上げ、アレキサンダーは素手で魚を捕らえていたのだが、それはカウントしてもらえなかった。なので、結局はリリースすることになってしまい、今に至る。

 女性人たちはさっさと食事を終えるとマリカの小屋に向かっていった。何でも、これからの予定を立てるらしい。俺たち男組は後片付けを任されることになった。

「にしても、ウル。あんた意外と釣り下手だな」

「お前に言われたくねえよ。地球釣ってたじゃねえか」

「そういうあんただって自分を釣ってただろ!?」

 と、俺たちがしょうもない口論をしている中、ゴーシュとメリーは二人してため息をついていた。何故か洗い物をする姿が妙に板につきすぎていて、少しばかり戦慄した。

 ……あの二人、もしかしたら嫁さんたちに尻に敷かれているのかもな。メリーなんかあんなにでかい図体しているのに……。

 そう思うと少し泣きたくなってきた。

「ところで、ウルさん。ちょっといいですか?」

 服で手を拭いながらゴーシュが告げる。

「メア様の様子で何か気になることとか……ありませんかね?」

「いや……別にないけど、どうしてだ?」

「いえ、ないならいいんですけど……」

「おいおい、二人して何の話してんだよ!」

 アレキサンダーが口をはさむ。メリーもどことなく興味深そうな話をしていた。

 正直、話すかどうかは迷っていたが、もうここまで来た仲だ。俺は洗いざらい二人にはいた。すると――アレキサンダーとメリーは驚愕に目を見開く。

「マジかよ……でも、全然元気そうじゃねえか……」

「しかも、一か月の命だと……何と惨い」

 メアと過ごしてあいつがどれだけ良い奴だかわかったのだろう。二人とも、本心からそう述べているようだった。

「にしても、ゴーシュ。何で今そんなこと言ったんだよ?」

 俺の問いに、ゴーシュは口ごもった。けれども、俺たちの視線に耐えかねてか、やがてぼそぼそと話し出す。

「実は……昨日エリーナさんが言ったんです。『彼女の気の流れがおかしい』って」

 エルフ族は人の体に流れる気を見る能力に長けている。その彼女が言うからには間違いないのだろう。だが、今までメアはそんな素振りを見せたことがない。

 しかし、俺には一つ心当たりがあった。だからこそ、ゴーシュに問う。

「なぁ、ゴーシュ……俺たちが城を出てもう何日経つ?」

「え……」

 そこで、ゴーシュの顔がさぁっと青ざめた。もう、次の答えはわかっている。

「もう……二週間以上が経過してます……」

 俺の懸念とは、再び牢獄に囚われている期間であった。あのせいで、すっかり時間感覚を失ってしまっていたのだ。

 だから、メアの残りの命の正しい感情ができなかった。

 けれど、ゴーシュは言った。言ってしまった。

 彼女との別れがそう遠くないということを――。


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