四十二話目
メリーを除く全員を木の陰に下ろして、俺はふとため息をついた。
本来、開発できる固有魔術に上限はない。だが、大抵の人間は一個以上持とうとしない。それはなぜか? 決まっている。一個開発するのにも莫大な時間と労力がかかるからだ。
まず、あらかた自分でベース――身体強化系なのか、精神汚染系なのか、それとも放出系なのかといったところでも選択肢があるし、何よりそれに肉付けしていく作業がまぁめんどくさいのだ。
魔導書に書かれている魔法の大半は先人たちがブラッシュアップしたものだ。つまり、ほぼ無駄がなくだれでも使えるようになっている。対して、固有魔術はいわばオーダーメイドだ。基本は開発者の特性に合わせてあるので、それ特有の癖なども出る。
言ってしまえば、固有魔術を開発するより一冊でも魔導書を読むほうが効率はいいのだ。が、俺が何故こんなに開発したかというと、理由は一つ。
単純に、悔しかったからだ。俺の最大呪文をマリカに破られた時の悔しさったらない。
だから、何とか試行錯誤を繰り返して作ったのだ。いつかあいつと再戦した時に勝つために――まぁ、それは叶わなかったが。
それより、驚いたのはリーシャたちのことだ。おそらく先祖たちの血を濃く引いているのだろう。あの年齢にしては手ごたえがあった。ただ、それでも同年代の俺たちがいたら勝てなかっただろうが。
「はぁ……ったく、あいつら。懐かしいったらねえぜ」
受け継いでいるのは才能だけではなかった。性格や、仕草までちょいちょい似ているのである。なので、時折間違えてあいつらの名前で呼びそうになった。
深いため息をつきながら、俺は空を見上げた。月はもう落ちかけている。森の木々に遮られてはいるが、朝日も昇ってくるころだろう。はしゃぎ過ぎた。
「ま、いいか」
こんな大勢に囲まれたのは久々だった。不思議な幸福感に身を委ねながら、俺もそっと目を閉じて――あることを思い出す。
そう言えば、ゴーシュどこ行った?
食事をとる前までは一緒だったのに、いつのまにかいなくなっていた。
けれど、襲い来る睡魔には勝てず、俺はそのまま泥のように眠ってしまった。
――翌日、やけに早起きしたメアにたたき起こされ、俺は目に隈を作ることになった。森から出てきたゴーシュもなぜか目に隈を作っていたが。




