三十四話目
「さぁ、早くここから出ましょう!」
すぐさま俺の方に駆け寄ってくるゴーシュ。だが、鎖はビクともしない。
「お前もよくわかってんだろ? この鎖は並大抵の力じゃ外れねえよ」
「……そうだ。カギ。カギはどこですか?」
カギか……どこにあるんだろ? 魔法さえ使えればなぁ……魔法が使えない魔法使いなんて本当役立たずだ。
「もし、自分がいた時と同じ場所にあるなら……いや、ちょっと待ってください」
牢屋を内から開け、すぐに階段を上っていくゴーシュ。俺はまた一人取り残されることになった。
ていうか……助けるならちゃんと順序を守ってくれ。じゃないと、取り残された俺が間抜けみたいじゃないか。
そうこうしている間に、徐々に爆発音も大きくなってきた。しかも、さっき天井が壊されたせいで脆くなっていたのか、瓦礫がボロボロと俺の頭の上に落ちてくる。正直、むちゃくちゃ惨めだ。
「よっと!」
また上からゴーシュが降ってきた。が、今回は何とか着地に成功。その手には、カギの束が握られている。
「持ってきました!」
「早くないか?」
まだ体感で十分も経っていない。あまりにも手際が良すぎる犯行だ。が、ゴーシュはちょっと困ったように頬を掻き、
「実は……みんなに手伝ってもらいまして」
「みんな?」
「ええ、まぁ……平たく言うとエルフさんやラミアさんたちです」
なるほど、お前を食べた奴らか。そう言ってくれよ、最初から。
「ちょっと待っててくださいね……っと」
あっという間に俺の鎖を外し、すぐに肩を貸してくれた。
「メリーさんたちも来てます。後は……姫様を助け出すだけです」
「そうだ……メア! あいつは!?」
「王宮の最上階にいます……が、守りが厳しいらしくて手こずっているそうです」
「そうか……なら」
「お願いします」
なるほどな。そういう理由があったわけね。でも、置き去りは勘弁してほしかった。
「それじゃあ行きましょう」
流石にまだ魔法は使えない。魔力回路が元の流れに戻るのには、まだ時間がかかりそうだ。
そうこうしているうちに階段を上り終えると、俺の目に凄惨な光景が映りこんできた。火が回っているし、兵士たちの死骸や魔法生物たちの死骸もそこら中に転がっている。ハッキリ言って、見るに堪えない。
「さっさと行くぞ。助けたら、被害が少ないうちに逃げる。いいな?」
「ええ。そうしましょう」
と、そこでゴーシュは勢いよく口笛を吹いた。すると、上空から何かの気配。それは……メリーだった。
『待たせた。すぐに参ろうか』
「助かる。それと、他の奴らはもう帰らせろ。俺のために命を捨てるのを見たくない」
『かたじけない。では、行くぞ!』
メリーの背中に跨った俺たちは一目散に王宮に向かっていく。なお、その際他の奴らに帰還を命じるのも忘れない。あっという間に王宮まで到着した俺たちを迎えてくれたのは、何百という兵士たちだった。
『ここは引き受けよう。先に行け』
「ありがとう」
そう呟いた直後だった。メリーが業火を吐き、道を作ってくれたのは。俺たちは構わずそこを通り、内部へ侵入。するとそこにも大勢の兵士たちが控えていた。
「ゴーシュ! 伏せろ!」
「はい!」
「《怒りの獅子よ・暗き谷底に・慟哭を響かせよ》!」
詠唱が完了すると同時、俺の口から爆音が発せられる。それは兵士たちの鼓膜を破るだけではなく、余波によってその体を吹き飛ばす。一応威力は抑えておいたが、制圧に成功した。
「よし! 行くぞ!」
そのまま階段を上り、最上階へと向かっていく。と、そこで、
「止まりなさい」
「てめぇ……」
俺を散々痛めつけてくれた女が立ちふさがった。だが、もう一人の女がいない。もしかしたら隠れているのか……?
まぁ、いいや。こいつをぶちのめせばいいんだから。
「さぁて……ゴーシュ! お前はメリーの元に戻れ!」
「でも……」
「いいから行け! ここにいたら足手まといだ。悪いな」
「……はい。では、ご武運を!」
ゴーシュは無念そうに走り去っていった。だが、これでいい。
これからおこなわれるのは戦闘なんかじゃない。
一方的な虐殺だ。




