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二十六話目

 気を失ったメアとゴーシュを岩の上に横にさせてから、俺は目の前の少女に視線を向けた。確かに俺と同じ不老不死の能力を持っているということは疑いようがない。だが、外見は幼い少女だ。

「ふぅむ……まだ信じられぬか?」

「当たり前だ。あんたは誰だ? 何でここにいる?」

「じゃからさっき言ったじゃろうが。妾の友人の息子から連絡を受けてきた、と」

「ちなみに……そいつの名前は?」

「メリーじゃが?」

 ビンゴだ。やはりこいつはマリカと一緒に写真を撮っていた少女だ。少し、そこら辺の経緯を知りたい。

「あんたの名前は?」

「アルトリア・フリード・セルゼン。まぁ、かいつまんで言うとお主の先祖じゃ」

 いきなりすぎる話だ。何でこのタイミングで……?

「お主の友人から聞いておったのじゃ。と言っても数百年前の事じゃがのう。自分の友人が出てきたときに力を貸してやってほしいとな。まったくあの女子おなごたちにも困ったものじゃ。ただ一人の男を救うためにわざわざ秘境の地まで妾を捜しに来たのじゃから」

「……たち?」

 返されるのは、首肯。

「ああ、そうじゃ。最初にマリカという女子が来たかと思えば、次はガラの悪そうな男。その次は気の強そうな女子と食えない優男。お主、恵まれとるのう。いい友人を持っとる」

 正直、驚いた。まさかあいつらが俺に会えなくなった後もこうして尽くしてくれていたとは思わなかった。本当に……馬鹿野郎たちだ。こんな大馬鹿のために……。

「ま、そういうわけじゃ。で、妾は開発者であるし、お主を殺す方法も知っておる。どうしたい? まだ生きたいか、それとももう死にたいか?」

「……まだ生きさせてくれ。いずれ時が来たらあんたのところに来るからさ」

 すると彼女はカラカラと陽気に笑い、

「そうか! ならば、今日はこの辺で失礼しようかのう。もし気が変わったら西の地までこい。その山の頂上に妾は住んでおる」

「待ってくれ。最後に一ついいか?」

「何じゃ?」

「何であんたは生きている? 辛くないのか? 苦しくないのか?」

 開発者ということは、俺とは比べ物にならないくらいの年月を生きているに違いない。だとしたら、それだけ多くの人の死や絶望を見てきたはずだ。たかだか数百年生きてきただけの俺が死にたくなるくらいだ。それより多いとなると――気が狂ってもおかしくない。

 だが、彼女はけらけらと、心底おかしそうに笑い、目尻に浮かんだ涙を拭って告げる。

「青いのう……青い青い。確かに色んなものを見て気が滅入ることもあるが、案外楽しい物じゃ。こうやって新たな者たちと出会う楽しみもあるしのう。それに何より――妾には使命があるのでな。お主のように禁術を使ってしまったものを救済することと、この世界の果てを見るという大いなる使命がな」

 何というか、でかい人だと思った。俺が考えているよりずっと先のことをこの人は見据えているに違いない。とてもじゃないが、勝てるとは思えなかった。

「ま、お主はお主の道を行け。あ、そうそう。そこの娘――気をつけろよ? 不穏な相が見える。ではな、また会おう」

 それだけ言ってその場から一瞬で消えるアルトリア。俺はただただ、そこで呆然としていることしかできなかった。


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