十六話目
拉致されたゴーシュの方に敬礼しつつ周囲を見渡すと、そこには小型生物たちと戯れているメアがいた。どうやらここでも懐かれているらしく困ったように、しかし嬉しそうに手近にいるケットシーを撫でている。
また、椅子ウサギも同族である合成獣の方にいる。あいつにとっては初めての同族だから、よほど嬉しいのだろう。見るからに嬉しそうだった。
しかし……俺に寄ってくる生物はいない。が、それも当然だ。
禁術を使って不老不死になった俺は、いわば生命の輪廻から外れた異端的存在だ。そんな俺に関わろうとするものなど、普通はいない。ただ、メアやゴーシュが特殊だっただけだ。
「どうかしたか?」
「別に」
いぶかしむメリーの方を見向きもせず、俺はややぶっきらぼうな口調で告げた。
メリーはそれに対してやや不思議そうにしていたがややあって頷き、
「わかったぞ。腹が減ってイライラしているのだな? すぐに食事の準備をさせるから待っていてくれ」
「いらねえよ。腹は減ってない」
「では、何なのだ?」
ますます首を傾げるメリー。このまま詮索されても面倒なので、俺は急いでその場から駆けだした。
「待て! どこへ行く!」
彼の言葉に後ろ髪を引かれる覆いを抱きながらも、右も左もわからない森の中を疾走していく。が、何故だかわからないが、こうしている間も何かに導かれている感じがした。木の根に躓き、枝が肌を裂こうとも止まらない。
気づけば、今まで目の前を覆っていた木々が消え、開けた場所に出た。半径数百メートルほどの縁の中央には……十字架をかたどったオブジェ。
おそらくあれは……
「よう……マリカ。久しぶり」
不思議とその正体がわかってしまい、俺は放心したようにその名を呼んだ。




