十二話目
炭化していた傷口から新たな肉が顔を出し始め、徐々に再生を始めていく。脳が痛みをシャットダウンしているのか、そこまで痛みはない。ただ、足先の感覚が一切なかった。
と、そこで俺は地べたに這いつくばったまま近くにいるドラゴンの方に視線を寄越す。
「お前、マリカに育てられただろ? 卵から孵ってずっと」
「……どうやら嘘ではなさそうだな。お前が母様と友人だったということは」
「当たり前だ。にしてもあいつ……まさか魔術まで教えているとはなぁ。しかも、固有魔術まで伝授しているとは恐れ入ったよ」
魔術には大きく分けて二つの種類がある。文献などに載っている、汎用性の高い基礎魔術。次が、それぞれの特性や得意分野に合わせて自ら創造した固有魔術だ。
基礎魔術はヴァリエーションに富んでおり、なおかつ扱いやすい。というのも、文献に載せられるまでに研鑽を重ねられているからだ。そのおかげで詠唱をきちんと行いさえすれば、簡単に発動できる。もちろん、それ相応の魔力は持っていかれるが利便性が高いのが基礎魔術の売りだ。
対して、固有魔術は違う。自分で編み出すという特性のため、洗練させるのには時間がかかるし、汎用性や利便性においても基礎魔術には劣る。だが、固有魔術の大きな利点が一つ。それは、自分流に魔術をカスタマイズできるということだ。
例えば、魔力の絶対量が少ない者なら少量でも高威力なものを作れるし、一能特化を目指したい者ならそれに対応した魔術を作ることが出来る。マリカもその一人だった。
彼女は防御特化型。そして先ほどこのドラゴンが使用したのはマリカの固有魔術――《ハルモスシルド・ドライ》――あいつが長年の研究の末編み出した奥義とも呼べるものだった。
「それにしても、すまない。母様の友人にこのような無礼を働くとは……」
「別に気にしてないさ。何か事情があったんだろ?」
返されるのは小さな頷き。先ほどの戦闘からずっとこいつが何かを守っているように感じていたのだ。それが何かはわからないが、きっと大切なものなのだろう。
チラリと右足を見るとすでに再生が完了し、真新しい足が生えていた。足の付け根に少しばかり残っているすすを払って俺はゆっくりと立ち上がる。すると、ドラゴンの方がハッとした様子で俺の方を見つめてきた。
「もしや……不老不死か?」
「ああ。そうだぜ。死ねないんだ」
「なるほど……やはり幻影魔術などではなかったか。いや、それにしてもすさまじい能力だ」
あまりいい物じゃないけどな……呪われた力だ。
「さて、連れの者たちはどこにいる? できれば、私たちの家まで来てくれ。非礼を詫びたい」
「家? それに……私たち?」
そこでドラゴンは意味深に頷き、その大きな口をゆっくりと開く。
「ああ。私と母様の家だ。そこには大勢の生物が住んでいる」
言われてみれば、マリカが昔そんなことを言っていたような気がする。
と、そこで差し出されるドラゴンの巨大な右手。
「乗ってくれ。今すぐ連れを迎えに行こう」
「ああ、ありがとな」
そう言って俺はこいつの腕に飛び乗った。数秒おいて、徐々に上昇していくドラゴン。やがてある一定の高度まで上がるとその巨大な両翼を羽ばたかせていった。
さて、私事で大変恐縮なのですが、明日からアメリカに一か月ほど留学してまいります。ですので、小説の更新ができません。毎日投稿はいったんお休みしますが、毎日執筆することは忘れないのでご安心を。継続は力なりといいますので、休みはしません。もちろん、勉学にもしっかりと励んでまいります。向こうでしかできないような経験もいっぱいして今後の人生に活かしていく所存です。長々と失礼しました。これからも私と私の小説をよろしくお願いいたします。




