●帰還●
“トライデント”ギルドホーム。ディアナは1人で煉達の帰りを待っていた。思えば、ディアナは煉達に申し訳無いことをしたと思っていた。いくらこちらの世界の危機とは言え、何の関係も無い彼等を無理矢理連れてきたのだから、心も痛むだろう。しかし彼等は受け入れてくれた。自らの命を省みず、少しいただけの世界のために戦ってくれている。ディアナは、彼等で良かった。そう心から思った。
「どうか、無事でいて」
ディアナが祈るように声を出した。すると、
「たっだいまー!!!」
「ライズ、大声出したら傷に響きますよ」
「そうだよ、安静にしなきゃ」
“悪魔竜・ガーゴイル”の討伐を終えたライズ、シエン、美紀の3人が帰ってきたのだ。
「皆……!!」
「ただいまディアナさん。ガーゴイルなら、きっちり倒してきたぜ!!」
「あら、ずいぶんボロボロになったわねライズ?」
ライズがディアナに親指を立てていると、後ろから“狂魔竜・リンドヴルム”を討伐したリオ、ウェド、ケイドの3人が現れた。
「リオちゃん。そっちもボロボロじゃん」
「僕も頑張ったよ~」
「中々、手強かったがな…」
ウェドとケイドも口を開いた。
「ただいま戻ったでござる!!」
「ただいまー!」
今度は“暴魔竜・ティアマト”を討伐した十蔵がレイナをおんぶして現れた。
「おお十蔵。派手にやられたな?」
「かすり傷でござるよ」
「強がる十蔵くんもカッコいい!!」
おんぶされているレイナが十蔵に抱き着くと、十蔵が変な悲鳴を上げて崩れ落ちた。
「全然かすり傷じゃないじゃん!?」
「きゃあ十蔵くんしっかりしてえ!!」
「お前ら……全員無事みたいだな?」
そんな声と共に、“災魔竜・ファーブニル”を討伐した煉が、姿を現した。
「「「煉!!」」」
「煉……!!」
「ようディアナ。“四竜”は全部倒したぜ?」
「あ、ありがとう……煉……!!」
ディアナは涙を流しながら、煉達に感謝した。
「それで約束だが…」
「ええ、あなた達を元の世界に帰すわ」
「おう。頼む」
「いつ帰るかしら?」
「今で」
「「「待て待て待て!!!」」」
煉の言葉にリオ達が一斉にツッコンだ。
「早すぎでしょ!?もうちょい療養してもいいじゃない!!」
「俺全身の骨ヒビだらけなんだけど!?」
「拙者ももう少し療養したいでござる!!」
「可愛い子まだ沢山見つけたい!!」
「ウェドくんの意見に賛同しないけど、療養したいかな」
「だってよお、考えてみろよお前ら」
煉が口を開いた。
「修学旅行からもう2週間経ってんだぞ?」
「だから何よ?」
「もうすぐテストだろうが!!」
「「「真面目か!!」」」
「普通だ!!だいたいリオ!!1番ヤバイお前が何療養だのぬかしてんだ!!この前の赤点オンパレードの課題誰が手伝ったと思ってんだ!!」
「うっ……!!」
「今回のテストを落とせば確実に留年するってベニー先生から言われてるよなぁ?そんな奴に療養をやるわけ無いだろうが!!」
「何よ鬼ぃ!!」
「鬼で結構だ!!帰ったら速攻でテスト勉強だから覚悟しやがれ!!」
「いやああああっ!!」
しかし、ディアナも準備が必要なため2日療養を頂けたリオ達であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2日後。しっかり療養した煉達は全快した状態で“トライデント”のギルドホーム前にいた。これからディアナのディメンションエレメントで【アスタニア界】に帰るのだ。
「あ~、それにしても波乱万丈な異世界珍道中だったな」
「珍道中ならあんな怪我しないけどね」
「まあ怪我なんて治ったし、いいじゃないの?」
「2日で骨のヒビが治るとは信じがたいでござるが…」
「十蔵だって左腕の骨くっついてるじゃん?」
「要するに皆回復速度が異常なのよ」
「だな。ディアナ、準備は出来たか?」
煉はディアナに聞いた。
「ええ。いつでも大丈夫よ」
「よし、じゃあ頼む」
煉が頼むと、ディアナが空間に穴を開けた。
「じゃあ行くか」
煉が行こうとすると、シエンが口を開いた。
「煉、絶対また会いましょう」
「おう、また会おうぜ」
「次は、負けませんよ」
「次も負かしてやらぁ」
お互いに笑い、2人は握手を交わした。
「ライズ、次はより固い鎧を開発しておこう」
「無駄だよ。どんな鎧でも、俺がぶち抜くからね」
ライズとケイドも握手を交わした。
「十蔵くぅん!!!行っちゃやぁだぁ!!」
「レ、レイナ殿!!離れて下され!!」
レイナは泣きながら十蔵に抱き着いていた。
「いぃやぁだぁ!!あたしも行くぅ!!」
「別に死に別れるわけでは無いでござる!!また会えるでござる!!」
「いやよぉ!!十蔵くん浮気しちゃうかもしれないもん!!」
浮気と言うワードに十蔵が口ごもるが、しっかりした表情でレイナに行った。
「浮気しないでござる!!拙者は……拙者はレイナ殿一筋でござる!!」
「へえっ!!」
十蔵の告白に、レイナが顔を真っ赤にして声を上げた。
「白昼堂々告白か、」
「青春ね」
「十蔵も大胆だね」
「羨ましいぞこんちきしょお!!」
「ウェドくんシャラップ!!」
そんなこんなで各々別れを告げ、煉達は空間の穴の前に立つ。
「じゃあな皆!!いつかまた会おうぜ!!」
「また会いましょう!!」
煉達は穴に入り、【アスタニア界】へと帰っていった。
「ありがとう、煉」
ディアナは静かにそう言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「って、別れたは良いが……」
空間の穴を通ると、そこは見慣れた景色が広がっていた。ただし、地上からでは無く、
「何でこんな高所に飛ばしたんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
推定3000メートルの高さから煉達が落下していた。
穴を通った瞬間浮遊感に襲われ、気付けば生身のスカイダイビングだ。叫びたくなるのも無理は無い。
「てかどうすんのよこの状況!?」
「リオちゃん風で俺等飛ばせないの!?」
「無茶言わないでよ!!」
「このままでは死ぬでござる!!!」
「まだまだ遊び足りないのに!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げながら落下していく煉達。もう時間が無い。煉は炎に形を与えて、6枚の翼を装備して<紅蓮鳳凰>を発動した。
「お前ら掴まれ!!」
リオを右手に、ライズを左手に掴む。十蔵は右足に掴ませ、ウェドを左足に掴ませる。美紀は背中に掴まらせた。しかし5人も乗るとなると、スピードは落ちてるとは言え落下していく。ふらふら飛行しながら、雲を抜けた。そこには、エレメント学園の象徴、純白の時計塔が見えた。
「帰ってきたな…」
「そうね…」
「懐かしいね…」
「久しく見るでござる」
「ただいま愛しの子猫ちゃん…」
「ウェドくん……」
「つーか重い……!!リオ、お前また太ったな!!」
「またって何よ!?あたしは太ってないわよ!!」
「毎回毎回カップ麺ばっかり食ってるくせによく言うぜ!!」
「カップ麺じゃなくてあんたの飯よ!!」
「俺の飯にけちつけんのかこらあぁぁぁぁぁぁ!!」
「煉!!リオちゃん!!前、前!!」
煉とリオがヒートアップしていると、ライズの慌てた声が聞こえた。言われたままに前を見ると、時計塔が目前に迫っていた。
「しまった!!」
「よけなさいよ!!」
「無理だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドッカーーーン!!!!!!
よける間も無く、煉達は時計塔のてっぺんに直撃した。巨大な穴を開けてしまったせいで、部屋の中が瓦礫だらけだ。
「痛てて……ここは?」
瓦礫を押し退けて立ち上がった煉は、部屋を見回した。豪華絢爛な造り、間違いなく理事長室だ。
「何の騒ぎよ!!隕石でも降ってきたの!?」
声と共に、扉が勢い良く開かれた。そこには、エレメント学園理事長のシンディが立っていた。
「よう、ばあさん……」
「…………煉?」
「た……ただいま」
ぎこちなく言うと、シンディは突然走り出し、
「お帰りいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ドグシャ!!!
「へぶっ!?」
涙を流しながら煉の顔面にドロッブキックを叩き込んだ。煉は変な悲鳴を上げて瓦礫の山に突っ込んだ。
しかしすぐに瓦礫を吹き飛ばしてシンディに猛抗議したが
「いきなり何しやがんだ馬鹿野郎!!無事帰ってきた弟子に対していきなりドロップキックとか馬鹿の極みか!!」
「ごめんごめん。つい嬉しくてね。それにしても、無事で何よりよ…」
シンディはうっすらと涙を浮かべ、笑った。それを見た煉も同じく笑う。
「まあ色々大変だったよ。ワイバーンとやりあったり、空賊と一戦交えたり、強い炎使いとガチバトルしたり、馬鹿みたいに強い魔竜を討伐したりよお…」
「この2週間で何があったのよあんた等……ま、とりあえず理事長室の修理をしない……」
「失礼しまあぁぁぁす!!!さっきの爆発は何ですか!?」
シンディの言葉を遮って、1人の女子が入室してきた。“ウィンディエッジ”の頭領、Ⅱ-Ⅲクラス所属の風見鶏静音だ。その後ろから“ウィンディエッジ”の面々がぞろぞろ着いてきている。
「お、静音じゃねえか。久しぶりだな」
「あ、赤堂!!久しぶりじゃねえかあぁぁぁ!!」
「うおっ!?」
涙を流しながら静音が突き出した拳を、煉が掌で受け止めた。
「何で普通に迎えられない!?何で必ず手を出す!?」
「愛情表現だ!!」
「やかましいっ!!」
「煉の兄貴いぃぃぃぃぃぃっ!!!無事で何よりです!!」
「虎鉄!?てめえまで何しやがる!!」
「「「煉の兄貴いぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」」」
「うるせえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
絶え間無く押し寄せる“ウィンディエッジ”に煉のシャウトが炸裂した。するとまた誰かが理事長室に入ってくる。
「煉ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
「何でいんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?っ」
何故かいるはずの無い煉の幼馴染みである、天宮美月が両手を広げて煉に飛んできた。
「あたしがさっき連絡したからよ」
シンディが然り気無く暴露した。
「にしても早えよ!!どんな裏技使った美月!!」
「愛の力だよ!!」
「んなもんあるかあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「つか赤堂!!誰だそのチンチクリンは!!」
いつの間にか左腕に抱き着いている静音が美月に敵意を込めた視線を向けていた。
「誰がチンチクリンよ!!あたしは煉ちゃんのお嫁さん!!あなたこそ誰よ!!」
美月も煉の右腕に抱き着いて静音を睨み返してた。
「誰がお嫁さんだ!!了承した覚えは無えぞ!!」
「そうなのか。だったら離れな!!あたしは赤堂に話があんだから!!」
「嫌だ!!そういうあなたは煉ちゃんの何よ!?彼女なの!?」
「彼女……!!いや、まだそんな関係じゃ……!」
「まだって何だ!!これからなることも無えぞ!?」
いつの間にか泥沼三角形になっている煉と静音と美月。そんな光景を見ながらリオ達は呆然としていた。
「煉って…案外モテるのね……」
「俺の情報だと、彼氏にしたい男子ランキングⅠ年からⅢ年までぶっちぎりの1位だよ。容姿も良いし、エレメントは強いし、家事も万能。優良物件だね」
「流石煉殿でござる」
「僕も家事スキル上げようかな…」
「とりあえず、あれを止めないと」
「つーかマジでいい加減にしろやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
それから煉達の泥沼が収まったのは10分経ったあたりだった。




