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●VS“災魔竜・ファーブニル”

【南】


「あいつ等、上手くやってるかな?」


南地方にいる煉は、ボソリと呟いた。南はすでに火の海となっており、煉でなければ焼死するほどの熱だ。これが“災魔竜”の力なのだろう。


「さっすが5大陸を火の海に変えただけはあるな。こんな規模の炎は久々だ」


鎮火とエネルギー補給を兼ねて煉は<火炎餓喰>(フレイムイーター)を発動して、手当たり次第に炎を喰らっていた。ある程度鎮火が済んだ煉は、“災魔竜”の気配を探っていた。


「え~と…………いた」


煉は、最早火山となった山の頂上に視線を向けた。そこには、全身を深紅の鱗で包んだ竜がいた。体長は30メートルほど。腕はなく代わりに巨大な翼が生えており、異様な雰囲気を放つ金色の瞳が見えた。


「あいつが“災魔竜”か。よし」


煉は、まだこちらに気付いていないファーブニルに向けて右腕を伸ばし、


「<火爆大炮>!!!」


爆炎の砲撃を発射した。砲撃は狙い通り、ファーブニルへとまっすぐ放たれ直撃した。


ボガアンッ!!!


爆発がファーブニルを包み、その衝撃波が火山を半壊させる。


「やったか……?」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!」


「なわけ無いか……」


爆発を吹き飛ばし、咆哮を上げるファーブニルが姿を現した。当然だが、ファーブニルは今ので煉の存在に気付いた。金色の瞳を細めて煉を威圧する。しかし威圧をものともせず、煉はファーブニルをまっすぐ睨み返した。


「かかってこいよ“災魔竜”とやら。どっちの炎が上か確かめようじゃねえか?」


「グルアアッ!!!」


ファーブニルは翼を広げ、赤く染まった空に舞い上がった。そこから煉に向けて、巨大な炎を吐き出した。目の前全てを覆い尽くす炎に対し煉も炎を発射して相殺し、右腕に炎を纏わせてすぐさまファーブニルまで跳躍した。


「<火銃拳・散>(かじゅうけん・さん)!!!」


炎を纏わせた右腕を振り抜き、ファーブニルの顔面を殴り付ける。すると、ショットガンのように複数の炎撃が同時に叩き込まれた。煉の強烈な一撃でファーブニルはバランスを崩し、地面へと落下していく。


ドオンッ!!!!!


けたたましい落下音を響かせてファーブニルが地面に激突した。煉も追って地面に着地する。ファーブニルは牙が数本へし折られた顔を揺らしながら怒りの形相で立ち上がり、煉を睨み付けた。


「まだまだ元気そうだな、ほら、かかってこいよ」


「グルアアッ!!!!!!」


ファーブニルが大地をしっかりと捉え、一気に駆け出した。煉はその場から動かず、しっかり構えてファーブニルの巨体を受け止めた。


「効くかよ!!」


煉は頭を思いっきり振りかぶり、ファーブニルの額に頭突きをかました。


ゴンッ!!!


鈍い衝撃音と共に、ファーブニルの頭が地面に叩き付けられた。


「痛って~っ!案外固いなこいつ……」


頭突きをした煉も額が割れて血が流れていた。ファーブニルはすぐに立ち上がり、煉から距離を取った。恐らく、あのままいたら危険と感じたのだろう。ファーブニルは遠距離から煉を仕留めることにした。


「グルアアッ!!!」


「あん?」


ファーブニルが吠えた瞬間、煉の周囲に無数の火の粉が出現した。


「おいおい、こんなちんけな炎で焼こうってか?」


煉はさして警戒せず火の粉を弄っていた。しかしファーブニルがまた吠えた瞬間、火の粉が一斉に光出して、


「なっ……!!」


ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガンッ!!!!!!!!


巨大な爆発を引き起こした。爆発は更に爆発を呼び、連鎖反応で爆発していく。辺りの地形を簡単に変え、煉は瞬く間に爆発に呑み込まれた。


「グオオオオオオオオオオオンッ!!!!!」


勝利を確信したファーブニルが吠えた。煉は爆発をまともにくらってもう塵も残っていない。そう思っていたが、


「危ねえ……死ぬとこだった……」


「グルアッ!?」


爆発を全て<火炎餓喰>(フレイムイータ)で喰い尽くした煉が現れたのだ。身体中火傷だらけだが、何とか無事に見える。


「まさか魔竜が粉塵爆発を使うなんて驚いたぜ。知能が無いてめえ等がそんな技使うとは思って無かったからな。ま、爆発は全部美味しく頂いたぜ」


あれだけの規模の爆発を全て喰い尽くした煉の両腕は、熱しられた鋼のように輝いていた。


「たらふく喰わせてくれた礼だ。こんどはこっちが熱いの喰わせてやるよ」


煉は両腕を引っ張るような体勢で駆け出し、ファーブニルとの距離を詰めていく。途中の炎は全て回避して、ファーブニルの懐に入った。


「<双火紅鎚>(そうかぐつち)!!!」


振り抜かれた炎の両腕がファーブニルの腹にめり込み、拳から放たれた爆発がファーブニルを後方に吹き飛ばす。吹き飛ばされたファーブニルは後方の建造物を破壊しながら地面に落下した。


「グオオ……グルアアッ!!!」


腹が焼け焦げたファーブニルが苦し気に呻きながら立ち上がった。先ほどの拳が効いたのかずいぶんふらついている。煉はそんなことお構い無しに、拳に炎を纏わせてファーブニルとの距離を詰めた。もう一度殴ろうと拳を振りかぶったが、


ドスッ!!


「っ………!!」


背中に激痛がはしり、殴るのを中断した。見れば、ファーブニルの尻尾が煉の体を背中から貫いていた。


「うっ……!!この野郎……!!」


口から血を吐き出した煉がファーブニルの尻尾を掴み、


「うぉらあっ!!!」


ブチィッ!!


「グオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!?」


強引に引き千切った。尻尾を千切られたファーブニルが悲鳴を上げる。煉は未だ体に刺さっている尻尾の断片を引き抜いて投げ捨てた。そのせいで胸に空いた穴から血が噴き出すが、煉は炎を穴に押し当てて止血する。


「痛ってぇ……俺は何回胸に穴空けられんだよ」


応急だが止血が終わり、煉はファーブニルに向き直る。


「よくもやってくれたな?こっからは、火加減無しだ」


煉の右手の甲に刻まれた属性紋章が赤く輝いた。その瞬間、煉の体を巨大な火柱が包み込んだ。火柱はやがて煉の右手に集束し、一振りの刀、焔真となる。


「来い。ローストドラゴンにしてやるよ!!」


焔真を構えた煉が一気に駆け出し、上段から振り下ろした。ファーブニルは焔真をバックステップで回避すると、そこから煉に噛み付こうと鋭い牙の並ぶ口を開いた。


「くらうか!!」


ガキッ!!


自分に向けられるファーブニルの牙を、焔真で受け止めた。押すことも押されることも無く、均衡を保ったまま押し合いとなる。煉は腕に力を込め、焔真を強引に押し込んでファーブニルの牙を切り裂いた。


「グルアアッ!?」


「<居合い参の型・残炎>!!!」


牙を切り裂かれて怯んだファーブニルに、焔真の斬撃が叩き込まれた。


ズババババババババッ!!!!!


ファーブニルの胸部に無数の斬撃痕が刻まれた。


「くらいやがれ!!!」


煉が焔真の峰をなぞる。

瞬間、


ドガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!


「グオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!」


斬撃痕が爆発し、ファーブニルの胸部を焼き焦がす。爆発の勢いでファーブニルの体も吹き飛んでいく。


「さあ、終わりにしようか?」


「グルアアッ!!グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!」


ファーブニルが再び吠えた。煉の周りにまた火の粉が現れる。


「同じ手は、くわねえよ!!」


煉が焔真を地面に突き刺した瞬間、ファーブニルの周囲に無数の火の粉が出現した。


「<星炎火爆>(せいえんかばく)!!!!!!」


ファーブニルの周囲の火の粉が一斉に爆発を起こし、ファーブニルの全身を包み込んだ。爆発の規模はファーブニルのそれを越えており、威力も爆発時間も段違いだった。爆発が収まる頃には、ファーブニルの体はボロボロになっていた。翼膜は破れ、鱗のほとんどが吹き飛んだ満身創痍状態だ。最早逃げることさえできないだろう。


「グルアアッ……!!グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!」


満身創痍に関わらず、ファーブニルは特大の咆哮を上げた。逃げる気はさらさら無いように見えた。それを見た煉は、ニヤリと笑った。


「なるほど、敵に背は向けない、か。その心意気は買うよ」


焔真を静かに構えた煉が口を開いた。


「お前に敬意を表して、次で終わらしてやる。来い、“災魔竜・ファーブニル”!!!」


「グルオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!」


ファーブニルが大地を踏み込み、一気に煉へと駆け出した。煉は焔真に炎を纏わせて、巨大な炎の刃を形成する。ファーブニルが間合いに入った瞬間、煉が焔真を振り抜いた。


「<真火焔斬>!!!!!!」


ザンッッッ!!!!!!!!


振り抜かれた焔真は、ファーブニルの首を正確に切り裂いた。空中を舞うファーブニルの首が地面に落ちる。


「てめえと戦えて、良かったぜ……」


<バースト>を解除し、焔真をエレメントに戻した煉が、その場に座り込んだ。


「あ~、疲れた…」


【南】“災魔竜・ファーブニル”討伐完了。

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