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●VS“悪魔竜・ガーゴイル”

【西】

ライズ&美紀&シエン


西地方は、廃墟や廃屋が並ぶ古びた街であった。廃屋の間を吹き抜ける風が、ライズの金髪を撫でる。


「しっかし、“悪魔竜”ねえ……えげつない名前」


「えげつないのは名前だけではないですよ。“悪魔竜・ガーゴイル”の所業はまさに、悪魔です。岩石のような体には兵器は通じず、さらに剛力で全てを捩じ伏せる。この街も、ガーゴイルに壊された1つなんですよ」


ライズの呟きに、シエンが答えてくれた。


「それで“悪魔竜”はどこにいるんでしょうか?」


美紀が辺りを見回してガーゴイルを探していた。


「もう着いていておかしくないですが……」


「そこらへんにいるんじゃ……」


ズドンッ!!!


「なっ!?」


「えっ!?」


喋っていたライズの上から、突然巨大な物体が降ってきた。それはライズもろとも地面を貫き、巨大な地震を引き起こす。


「ライズくん!!」


「っ……!!離れて!!」


ライズへと駆け寄ろうとする美紀をシエンがひき止めて後ろに跳ぶ。


「何で……ライズくんが!!」


「よく見なさい!!あれを……」


シエンから促されて見ると、そこには、悪魔がいた。体長30メートルはあろうほどだ。全身の体表が岩のようになっており、体格は人間と似ている。翼と尻尾が生えており、顔は竜となっており、瞳は真っ赤に輝いていた。


「こいつが、“悪魔竜”………!!」


「ガーゴイル……!!」


「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」


ガーゴイルが口を開いて咆哮を上げた。それが空気を震わせ、辺りの廃墟や廃屋を吹き飛ばしていく。


「ライズくん……!!今助ける!!<石傀儡・阿吽>!!」


美紀はエレメントで2体の鬼を造り出し、ガーゴイルへと差し向けた。2体まとめてガーゴイルに掴みかかり、動かそうとするがまったく動じない。


「ゴアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」


ガーゴイルは片腕を振るって、<石傀儡・阿吽>を粉砕した。


「嘘っ!?」


「かなりの剛力……ですね……」


「どうしよう…このままじゃライズくんが……!」


美紀がまたエレメントを発動させようとした瞬間、ガーゴイルが突然声を上げた。


「おい……」


「ゴッ!?」


「いつまで人の上に汚えもん……乗せてんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ドガアンッ!!!!!


怒号と共に、ガーゴイルの拳に潰されたはずのライズが、ガーゴイルの巨体を吹き飛ばした。身体中泥と血だらけになっているが、元気そうで何よりだ。


「ライズくん!!」


「どういう体ですか!?」


「痛えんだよ不意打ちで馬鹿でかい拳振り下ろしてくれやがってこのクソドラゴンが!!」


怪我のわりには巧みな弁舌で吹き飛ばしたガーゴイルに罵詈雑言を浴びせるライズを見て、シエンは感心していた。


「大丈夫なんですか、ライズ?」


「当たる寸前で身体強度を上げたんだ。<雷属性>の俺にしか出来ない芸当だよ。それでも、痛いけどね……イテテ」


強がりつつも痛いらしく、ライズは苦痛に顔を歪めていた。いくら身体強度を上げても、重傷には変わり無い。全身の骨にヒビが入っているであろう。しかしライズはガーゴイルの前に構えた。


「こっちは痛えんだ。さっさと終わってもらうぞ」


全身に雷を纏わせて視線を鋭くする。


「そうですね。早く終わらせましょう」


シエンも紫の炎を纏い、ライズの横に並ぶ。


「俺に合わせられる?シエンさん」


「これでもギルドマスターですから。侮らないで下さいよ」


「頼もしいよ。じゃあ、行こうか!!」


「ええ!!」


ライズが閃光の早さで駆け、ガーゴイルに突っ込んでいく。その後ろからシエンが複数の炎弾を放ち、ガーゴイルの視界を遮った。

視界を封じられてる間に懐に入ったライズが、雷を迸らせた右腕を、


「<雷電墜>!!!」


ガーゴイルの腹に撃ち込んだ。しかし、


ガンッ!!!


その手応えは、あまりに固すぎた。


「ぐっ……!?」


ライズは右腕を抑え、後ろに後退した。右腕は出血し、黒く変色していた。


「嘘だろ……ぶち抜けねえとか、どんだけ固いんだよ……!?」


「これが、ガーゴイルの最大の武器です」


「武器?」


「何者にも傷つけられない体を持つ魔竜。その体は、魔竜の中でも希な突然変異と言われてます。そして、」


「そして?」


「絶対の防御は同時に、強大な力となります」


説明が終わると同時にガーゴイルが手を地面に叩き付け、辺りに大激震を引き起こした。


「ゴオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」


「ありえねえ」


「信じられない」


「受け止めて下さいよ」


遠い目をするライズと美紀にシエンがツッコンだ。


「でも、どうやってぶち抜くかだよな~。全力で殴ったのに、俺の拳がいかれちまったよ…」


「この中で1番突破力のあるライズでも貫けない体……どうしますか……」


「とりあえず、弱点みたいなのは無いんですか?シエンさん」


美紀がシエンに質問したが、答えは曖昧なものだった。


「それが分からないんですよ。過去の文献では、ガーゴイルを封印する際に何らかの方法で体を傷付けたと記されてましたから…」


「その何らかって?」


「分かりません」


「意味無いじゃん!?」


ライズのツッコミが炸裂した。そんなやりとりをしてる間に、ガーゴイルが大地を抉りながらこちらに走ってきている。


「美紀ちゃん<石傀儡>で何か強そうなの無いの?」


「強そうなのって言われても……と、とりあえず造れるだけ造っときます!」


美紀はエレメントを集中させて、<石傀儡>の大軍勢を生み出した。



「<石傀儡・牛頭馬頭!!阿吽!!金剛力士!!鬼神阿修羅>!!」


美紀の周りに、6体の傀儡が造り出された。それら全てを、ガーゴイルへと仕向けるよう指示する。


「突撃ぃ!!」


美紀の指示と同時に<石傀儡>が走り出し、ガーゴイルを迎え撃った。走ってきているガーゴイルを<牛頭馬頭>が受け止め、止まっている間に<阿吽>が側面からホールドをかける。


「ゴオッ!!ゴルオッ!?」


「逃がさない!!」


4体の<石傀儡>に動きを封じられ、ガーゴイルも思うように動けない。その隙に、後ろに回り込んだ<金剛力士>と<鬼神阿修羅>がガーゴイルに拳を振り下ろした。


「<金剛大砕拳>!!!<阿修羅六掌>!!!」


<金剛力士>の拳と、<鬼神阿修羅>の掌底がガーゴイルを叩き伏せた。同時に周辺の地面が陥没する。巻き上げられた砂埃がライズ達の顔を叩いた。


「うひ~。これすげえ威力」


「これなら、少しはいけましたかな?」


ライズとシエンは顔を覆いながら期待の隠った声を出した。が、


ピシッ!!


突然響いた音に、ライズ達の表情が固まった。やがて音は徐々に大きくなり、やがて、


バコオンッ!!


「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


<石傀儡>を全て破壊し、大咆哮をあげながらガーゴイルが姿を現した。


「どんだけタフだよ!?」


「今のが通じないなんて……」


「まずいですね……!!」


シエンの呻き声と同時に、ガーゴイルが腕を振り回しながらライズ達へと突っ込んでくる。


「っ……!!シエンさん、美紀と一緒に退いてて!!」


ライズが全身に雷を迸らせてガーゴイルを正面から受け止めた。


ボゴンッ!!


受け止めると、ライズの足下の地面が陥没してひび割れていた。


「くそっ!!重え…っ!!」


地面を削りながらライズの体が後退していく。ガーゴイルは勢いを弱めず、ライズもろとも廃墟を破壊しながら走っていく。やがてガーゴイルは崖に突っ込んでライズを挟み込んだ。崖が砕ける音と、骨が砕ける音が聞こえた。


「か………はっ……!!」


崖に埋め込まれたライズの口から、どす黒い血が吐き出された。


「くっ……!!<バースト>!!!」


シエンが走り出し、<バースト>を解放する。全身に纏わせた紫炎が一振りのレイピア、紫鬼となった。シエンは背後を見せているガーゴイルへと跳躍し、うなじへ重力を乗せた突きを叩き込んだ。


「ゴルオッ!!」


突きはかすかにガーゴイルの皮膚を貫いた。


「よしっ!!」


シエンは更に体重を乗せてガーゴイルのうなじへ深く刺していく。その度にガーゴイルが暴れシエンを振り落とそうとするが、深く刺さった紫鬼によって中々落とせないでいた。


「シエンさん……時間稼ぎ……サンキュー」


すると、ライズの声と同時に、砕けた崖から膨大な放電が発生した。それはライズの手に集まり、金色の斧槍、雷吼となる。雷吼を肩に担ぎ、ライズが悠然と立ち上がった。


「あー痛え……こんな怪我は久々だよこの野郎……治療費は……てめえの血肉で支払ってもらうぞ」


ドスのきいた声と共にライズがガーゴイルを睨み付けた。それを挑発と受け止め、ガーゴイルが拳をライズ目掛けて振り下ろした。


「らあっ!!」


ドガンッ!!


ライズは拳に目掛けて雷吼を振り上げて受け止める。それにより雷吼の刃がガーゴイルの皮膚に食い込み、切り裂いた。そのまま拳を弾き上げ、がら空きの胴体に向けて、


「<雷電吼断>!!!」


雷で形成した刃を叩き込んで吹き飛ばした。体をくの字にへし折られたまま後ろの崖に叩きつけられた。


「さっきの仕返しだバーロー」


「本当に馬鹿げた体してますね…」


「いや、もう骨何本かいっててかなり痛い……」


「骨折してるのに!?どうして!?」


「気合いと根性!!」


背後でドンッ!!と聞こえそうな雰囲気でライズが言い放った。


「ライズくん大丈夫!?」


「おう美紀ちゃん。大丈夫だよ……さっさと決めちゃおう」


「…うん。<バースト>」


美紀も<バースト>を解放して、土色の錫杖、地裂を顕現した。


「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


吹き飛ばしたはずのガーゴイルが雄叫びをあげて復活してライズ達へと駆けてくる。


「あたしが止めます!!」


「大丈夫なの!?さっき砕かれてたけど…」


「見てて下さい!!<石傀儡・牛頭馬頭、阿吽>!!!」


美紀が地裂で大地を叩き、4体の傀儡を造り出す。そして更に、


「<傀儡結合・鬼牛頭(おにごず)鬼馬頭(おにめず)>!!」


合体させて、新たな傀儡を2体造り出した。更に巨大化し、額に鬼の角を生やした牛頭と馬頭。巨大な嘶きを上げ、ガーゴイルを受け止めた。ぶつかった瞬間生じた衝撃波が辺り一帯に撒き散らされる。ガーゴイルが腕を振り抜いて傀儡を殴るが、先程のように砕かれることは無かった。そのまま地面に組伏せて押さえ付ける。その隙にライズとシエンが一斉に駆け出す。


「合わせてよシエンさん!!」


「そちらこそ!!」


ガーゴイルの手前で跳躍し、互いの得物を上段に構える。


「<雷電吼断>!!!」


「<紫鋭皇牙>!!!」


雷の斬撃と紫炎の突きがガーゴイルの顔面に叩き込まれた。


「ゴルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」


「このまま行くよ!!シエンさん、俺を打ち上げて!!!」


「無茶ぶりですねまったく!!」


紫鬼の刃に乗ったライズをシエンが打ち上げた。打ち上げられたライズは雷吼の尖端を天に向けた。するとそこを中心に、巨大な雷雲が発生していた。雲の切れ目からは稲光が光っている。やがて、雷雲から一直線に降り注いだ落雷が、雷吼に直撃した。


ピシャアアアアンッ!!!!


激しい雷鳴を轟かせ、雷吼に落雷が吸い込まれていく。それはやがて、<雷電吼断>以上の放電を放ち、雷吼の周りでいくつもの雷刃に姿を変えた。


「終わりだあっ!!!!!」


重力を乗せた雷吼の刃がと周りの雷刃が、ガーゴイルに振り下ろされた。


「<武雷電>(ぶらいでん)!!!!!!」


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!


無数の雷刃が大爆音を轟かせ、ガーゴイルに炸裂した。雷刃はガーゴイルの強固な皮膚を容易き切り裂き、容赦無く切り刻んでいった。


「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


膨大な放電を撒き散らしながら暴れるガーゴイルは、断末魔を上げて、その場に崩れ落ちた。


「やった……」


「やりましたね」


「どおんなもんだい!!なっはっはっー!!!」


【西】“悪魔竜・ガーゴイル”。討伐完了。

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